儀礼の力〜礼道のかたち 

一条真也です。
バク転神道ソングライター」こと宗教哲学者の鎌田東二先生は四国は徳島県阿南市のご出身ですが、「徳島新聞」に「こころの未来」というコラムを連載されています。その鎌田先生が、本日、11月2日の「徳島新聞」朝刊に、父の佐久間進とわたしについてのコラムを書いて下さいました。


徳島新聞」2015年11月2日朝刊



記事は「儀礼の力〜礼道のかたち」のタイトルで、「他者や物を大切に」「たゆまぬ自己研鑽の人生」の見出しで、以下のように書かれています。

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 先ごろ、佐久間進著『礼道の「かたち」』(PHP研究所)が出版された。当年82歳の佐久間進氏は小倉に本社を置く大手冠婚葬祭業株式会社サンレーの会長であるが、1973年に「全日本冠婚葬祭互助協会」の初代会長となり、戦後日本の「互助会」の活動を牽引した中心人物である。
 その新著の中で、佐久間進氏は「八美道」なる「礼道のかたち」を提唱している。「一 神を畏れ 二 仏を祀り 三 人を敬う 四 人を思いやり 五 己を慎み 六 自らを磨き 七 孝養に努め 八 物を大切にする」という人生実践である。神仏を崇め、他者や物を大切にして、常に自分を磨いていく。佐久間氏は創業時から、「子供たちに夢を、若者たちに希望を、老人たちに生きがいを、そして、生活にうるおいを」をモットーに邁進してきた。
 アメリカ先住民のナバホ族の「ホジョナー」という言葉には「美・平和・調和」の三つの意味が含まれているというが、「美」と「礼」と「経済・経営」を結びつけるところに未来社会のありようが見えてくる。「ホジョナー」とも少し似ているが、「サンレー」には、(1)讃礼、(2)産霊、(3)Sun Ray(太陽光線)という三つの意味があるという。
 佐久間進氏と子息のサンレー社長佐久間庸和氏(作家・一条真也)は、二人三脚で「礼経一致」「天下布礼」「ハートフル」を社是に、日本の冠婚葬祭業を牽引してきた。その先見の明、理念、業務内容の豊かさには驚かされる。実は、佐久間進氏は國學院大學文学部出身で、私の大先輩に当たる。また、佐久間庸和氏は早稲田大学政治経済学部出身だが、宗教学や民俗学に造詣が深い。両人と初めて会ったのはちょうど25年前の1992年のことであった。それから四半世紀が過ぎた。この間、両人の生きざまとサンレーの事業の展開を間近に見てきて、その過程で感じたことが4つある。
 第1に、志の高さと強さ。私はいつもバカの一つ覚えのように学生に言う。学問でも仕事でも生き方でも一番大事なものは「志」であると。どのような「志」を、どれほどの強度で持つかが生きる力となり人生を切り拓く原動力となると。そして強度とは、それを維持する不断の努力と創意工夫であると。それがあれば必ず「志」を成就することができると。『論語』の「十五にして学に志す」や仏教の「発菩提心(発心)」ではないが、「志=発心」ほど大事なものはないのである。
 第2に、自らの事業や活動に対する誇りと自省とたゆまぬ自己研鑽。何よりも日々の精進努力がなくては「志」が実現することはない。「棚から牡丹餅」はない。加えて、他者への心配りと情報収集と自己省察。この佐久間親子は常々「日本最強の親子」だと思っているが、両人とも読書も半端ではない。執筆量も尋常ではない。佐久間進氏はこれまで10冊以上の著作を著し、佐久間庸和氏は60歳を前にすでに90冊以上の著作量を誇る。社長業の傍ら寸刻を惜しんで『唯葬論』や『儀式論』などの体系的な大著を次々と著し、2012年には京セラ会長の稲盛和夫氏とともに第2回孔子文化賞を受賞している。おそらくその執筆量・出版量はギネスブック入りするほどの圧倒的な著作量である。
 第3に、両人ともに先見の明と理念に根差した事業に対する果敢な挑戦を怠らない。そのビジョンと勇気の相乗作用。ビジョンと理念なき実践は空虚であり、すぐに形骸化する。生き生きと活動を続けられる秘訣は、遠くを見ながら近くに歩を進めるバックキャスティングの実践である。
 第4に、事業内容を他者に魅力的に広く伝えていくための言語技術があること。いつも感心するのは、両人ともキャッチフレーズの名人であることだ。重要思想をわかりやすく印象的な言葉で表現する力は、現代社会では必需品であろう。冠婚葬祭互助会の活動の理念ともなる相互扶助と有縁社会の方向は、グリーフケアやスピリチュアルケアや地域包括ケアとも密接にかかわってくる。佐久間庸和氏は「未来のセレモニーホールは、地域社会のコミュニティーセンターになることだ」と持論を語るが、「楽しい世直し」を実践する先達・同志として両人の活動にいっそう注目したい。

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礼道の「かたち」』の帯



この記事を読んで、わたしは鎌田先生に対して心からの感謝の念を抱きました。鎌田先生は、『礼道の「かたち」』の帯にに、「八二歳、傘寿を超えて窮境の『八美道』を完成! されど、たゆまぬ精進を続けるその志と覚悟の秘密。神仏への祈りと万物感謝の心。ヒント満載、著者渾身の人生指南の書である」との推薦文を寄せて下さいました。
また、拙著『唯葬論』の版元である三五館が倒産し、わたしが意気消沈していたところ、鎌田先生は「この本は埋もれさせてはいけない本です」と言われて、サンガから文庫化する手配をして下さいました。『唯葬論』の文庫版は12月末の刊行予定ですが、鎌田先生みずから推薦文および解説を書いて下さることになりました。本当に、いくら感謝しても感謝しきれない思いです。わが魂の義兄弟である鎌田先生に心より御礼を申し上げます。


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2017年11月2日 一条真也