『日本人は死んだらどこへ行くのか』 

一条真也です。
4日の夕方、静岡から小倉に戻りました。
5日の夜は、サンレーグランドホテルで盆踊り大会やります!
さて、125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。
同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第112回が掲載されています。『日本人は死んだらどこへ行くのか』鎌田東二著(PHP新書)を紹介。


「サンデー新聞」2017年8月5日号



お盆が近いですが、日本人にとっての8月は死者を思い出す季節です。そして、あの世について想いを馳せる季節ですね。本書は、日頃から親しくさせていただいている宗教哲学者の新刊です。日本人の死生観の本質を見事に解明しています。



最澄本居宣長平田篤胤柳田國男折口信夫南方熊楠宮沢賢治遠藤周作といった日本思想史のキーパーソンの死生観を追い、日本人の魂の原郷を求めています。本書を読めば、「なぜ、日本人の葬儀は簡略化していくのか」「なぜ、日本人の墓は荒れていくのか」「無縁社会の行方は?」といった問いの答えも得られます。1人でも多くの日本人に読んでほしい本です。



第五章「星になる、風になる――『草木国土悉皆成仏』の思想」の「求められる広範なパワースポット」では、わたしの名前が登場します。日本人の死生観の歴史上の重要な出来事について述べます。
「2010年にNHKスペシャルで無縁社会に対する警鐘がなされ、以後、無縁社会を扱った本が何冊か話題になり、同じ年に島田裕巳さんが、『葬式は、要らない』を出版。それに対する反論として、一条真也さんが『葬式は必要!――最期の儀式に迷う日本人のために』(双葉新書、2010年)を出します。すでにあったパワースポットブームも含め、これらが三つ巴となって2010年に浮上してきました。浮上してきたそのような課題を串刺しするようにして、翌年、東日本大震災が起こりました。無縁社会に向かっていく方向性は、いまも潜在的に続いています。限界集落問題をはじめ、無縁社会化は着々と進行しています」



続けて、著者は 「ただし、中世がそうであったように、無縁社会は新しい結縁社会をつくる1つの転換点になります」とした上で、こう述べます。
「多様な死の形の1つとして、『葬式も墓も要らない』という思想もありえます。しかし、だからといって完全になくしてしまうことは、絶対にできません。多くの人は、何らかの形で葬儀もお墓も必要と思っています。それぞれの死生観を納得させる、葬儀やお墓のあり方をいろいろ考えていくことが重要です」



わたしは、日本人が無縁社会を乗り越え、有縁社会を再生する可能性を持った存在として、「冠婚葬祭互助会」を挙げたいと思います。
「万人は一人のために、一人は万人のために」という相互扶助の精神で、葬儀などの儀式サービスを提供する組織です。
冠婚葬祭は目に見えない「縁」や「絆」を可視化します。
そして、互助会は日本人の死後に対する安心を与えるでしょう。




2017年8月5日 一条真也