「般若心経」を自由訳する

一条真也です。
今日から8月ですね。日本人にとって、死者を想う季節です。
この日、「サンデー毎日」2017年8月13日号が発売されます。
表紙の人物は女優の米倉涼子さんですが、やはり美しいですね。
わたしは、同誌にコラム「一条真也の人生の四季」を連載しています。
第91回目のタイトルは、「『般若心経』を自由訳する」です。


サンデー毎日」2017年8月13日号



先週、新刊『はじめての「論語」』(三冬社)をご紹介したが、続いて、『般若心経 自由訳』(現代書林)を上梓しました。沖縄在住の写真家である安田淳夫氏の作品を中心とした素晴らしい写真とともに、わが自由訳が収められています。



ダライ・ラマ14世は「般若心経」について、ことあるごとに「日本では、この経典は亡くなった人のために葬儀の際よく朗唱される」と述べています。すべての宗派の葬儀で「般若心経」が読誦されているわけではないですが、曹洞宗真言宗などでは読誦されています。ダライ・ラマの言葉に触れたとき、わたしは「般若心経」を自分なりの解釈で自由訳してみようと思ったのです。



唐の僧・玄奘三蔵は、天竺(インド)から持ち帰った膨大な「大般若経」を翻訳し、262字に集約して「般若心経」を完成させました。そこで説かれた「空」の思想は中国仏教思想、特に禅宗教学の形成に大きな影響を及ぼしました。東アジア全域にも広まりましたが、日本に伝えられたのは8世紀、奈良時代のことです。遣唐使に同行した僧が持ち帰ったといいます。



以来、1200年以上の歳月が流れ、日本における最も有名な経典となりました。特に、遣唐使に参加した弘法大師空海は、その真の意味を理解したと思います。空海は、「空」を「海」、「色」を「波」に例えながら説いた『般若心経秘鍵』を著しました。わが自由訳のベースは、この書にあると告白します。これまで、日本人による「般若心経」の解釈の多くには重大な誤解があったように思えます。なぜなら、その核心思想である「空」を「無」と同意義にとらえ、本当の意味を理解しなかったからです。「空」とは、じつは「永遠」という意味にほかなりません。



「0」も「∞」もともに古代インドで生まれたコンセプトですが、「空」は後者を意味しました。わたしの自由訳は、死の「おそれ」や死別の「かなしみ」を溶かす内容となっています。8月2日に全国書店で発売される予定。ぜひ御一読を!


般若心経 自由訳

般若心経 自由訳


サンデー毎日」2017年8月13日号の表紙



2017年8月1日 一条真也