日本は儒教国家ではないのか 

一条真也です。
18日、「サンデー毎日」2017年7月30日号が発売されます。
ハリウッドも認めたスーパー戦隊が表紙を飾っています。
わたしは、同誌にコラム「一条真也の人生の四季」を連載しています。
第89回目のタイトルは、「日本は儒教国家ではないのか」です。


サンデー毎日」2017年7月30日号



ベストセラー『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』ケント・ギルバート著(講談社+α新書)を読みました。一読して、この本のメインテーマは「儒教」のようでいて、じつは「反中」「反韓」だと感じました。著者は「中国や韓国と上手に付き合うには、まず『自己中心主義』の大本たる儒教の本質を知り、そして日本は儒教国家でないことを認識すべし!」と繰り返し訴えています。



本書のタイトルだけを知っている人から、「儒教って、本当は危険な教えなのですね」とか「儒教のせいで、中国と韓国はあんな国になったみたいですね」などと言われました。最初は「トンデモ本かな?」とも思いましたが、そうでないことはわかりました。でも、忘れてはならないのは、モルモン教徒である著者には、儒教にも孔子にも何の思い入れもないということ。この本の正体は、「キリスト教に支配されたアメリカ人が中国人と韓国人を嫌いになった悲喜劇」と言えるかもしれません。



その要旨は、日本人が儒教の核心だと考えている「仁義礼智信」、つまり「徳」が、中国や韓国の儒教からはすっぽり抜け落ちているということです。日本では、孔子の真のメッセージが「武士道」という名前で残っているということに異論はありませんが、それなら書名は『東アジアにおける儒教の影響』などとすべきでした。まあ、そんなタイトルでは売れないから、『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』としたのでしょうが、これでは儒教そのものが誤解されます。



日本において、最も儒教の精神が根付いたことは事実でしょうが、もともと、日本では神道、仏教、儒教がバランス良く共生してきたといえます。とはいえ、現代の日本人に孔子の教えが生きているかというと、それには疑問を感じます。儒教は何よりも葬礼を重んじますが、日本では、家族葬直葬など、葬儀の簡略化が進む一方です。この点では、葬礼を重んじる中国や韓国のほうに孔子の思想は生きていると言えないでしょうか。


サンデー毎日」2017年7月30日号の表紙



2017年7月18日 一条真也