愛で死を乗り越えた麻央さん

一条真也です
4日、「サンデー毎日」2017年7月16日号が発売されます。
わたしは、同誌にコラム「一条真也の人生の四季」を連載しています。
第87回目のタイトルは、「愛で死を乗り越えた麻央さん」です。


サンデー毎日」2017年7月16日号



がん闘病中だった小林麻央さんが34歳の若さで亡くなられました。心よりご冥福をお祈りいたします。
麻央さんは、闘病の様子や心情、家族への思いなどをずっとブログに綴ってきました。多くの読者の共感を呼びましたが、実は、わたしの妻も毎日、麻央さんのブログを読み、その回復を願っていました。



妻から麻央さんの容体についてよく話を聞いていたので、わたしも信じられない気持ちでいっぱいです。まだ幼いお子さんを2人残して逝かれる心情を思うと、たまりません。最後は在宅医療を選択され、愛する家族に囲まれて「そのとき」を迎えられた麻央さんの生き様は多くの人々に勇気を与えました。



これほど「覚悟」を持って生き切った方はなかなかいないと思います。その生き方は、確実に日本人の死生観に影響を与えました。
また麻央さんは、ブログの持つ豊かな可能性をも示してくれました。これほど個人の病状を多くの日本人が気遣ったことがあったでしょうか。みんなが病状を気にし、回復を願ったのです。



自宅で家族に囲まれた麻央さんは最愛の海老蔵さんに「愛してる」と言って旅立たれたといいます。麻央さんが最期まで勇気をもって死に向き合うことができたのは、愛する家族の存在があったからでしょう。モラリストとされたフランスの公爵ラ・ロシュフーコーは「太陽と死は直視できない」と言いました。太陽と死は直接見ることができないのです。



でも、間接的なら見ることはできます。そう、サングラスをかければ太陽を見られます。そして、死にもサングラスのような存在があると思います。それは「愛」です。「死」という直視できないものを見るためのサングラスこそ「愛」ではないでしょうか。



人は心から愛するものがあって初めて、自らの死を乗り越え、永遠の時間の中で生きることができるのでしょう。麻央さんも、「家族への愛」というサングラスをかけることによって、自身の死を正面から見つめることができたように思えてなりません。合掌。


サンデー毎日」2017年7月16日号の表紙



2017年7月4日 一条真也