一条真也です。
「ザ・リバティ」11月号が送られてきました。
特集記事は「人工知能時代 人間にしかできない仕事 あと10年で消える仕事」です。わたしは同誌のインタビュー取材を受けています。
総力14ページの特集記事の中には「各界のプロに聞く『その仕事、AIにできますか?』 人工知能が発達するなかで、人間の仕事はどう変わっていくのか。」という記事があります。その中で、「データに現れない経営情報」として、以下のように書かれています。
「『新しい事業は、経営者の使命感によって天から降ってくるものです。データを集めたり、マーケティングを行うだけでは生まれない』 こう語るのは、冠婚葬祭事業を展開するサンレー社長である一条真也氏だ。
『例えばわが社では、ホテルやカルチャーセンターと葬祭会館とを一体化させた施設を運営しています。最近は葬祭会館での葬儀が増えていますが、なじみのない場所からあの世に旅立つというのも寂しいのではないか、と強く思ったのです。そこで、仲間と一緒に過ごせて、亡くなったらその仲間にお葬式を出してもらえる、そんな場所をつくりたいと思い付きました』
葬儀は『人生の卒業式』であり、『死は不幸なことではない』と伝えたいという思いがあった。そうした思いを実現する上で大切なのは、やはり『人』だ。
近年、人事分野についても人工知能が導入され始めているが、一条氏は、社員と直接話すことの重要性を強調する。
『わが社が社員を採用したり昇進させる際に一番重んじるのは、人間性です。「親孝行をしている」など、データには出てこないことが実は仕事にも関係します。一人の不祥事が会社の危機を呼ぶので、嘘をつく人間や部下をいじめる人間には安心して会社を任せられない。そもそも経営者に邪な心があれば、悪い人間をいい人間だと思ってしまう。経営者が自分を高める努力をしないと、人を見る目は育ちません』」
ブログ「ハドソン川の奇跡」で紹介した映画を観て、わたしは、コンピューターによるシミュレーションや各種の数値データを盲信することがいかに危険であるかを痛感しました。最近、「人工知能があれば企業は経営できる。人間の経営者は不要である」という説を唱えている学者がいるそうですが、なんという馬鹿げた妄言でしょうか! 人工知能はデータによって作動します。データというのは、あくまでも数字の記録であり、わたしは「経営にはプラスアルファの人的要素が多大に求められる」と反論しました。
「ハドソン川の奇跡」は、まさにこの問題を描いた映画でした。わたしは、この映画を観ながら、飛行機の操縦とは企業の経営とよく似ていると思いました。各種の数値データを参考にしながらも、最後はリーダーの人間力が物を言うという点においてです。
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「マネジメント」の発明者は、経営学者のピーター・ドラッカーです。
ドラッカーが発明したマネジメントとは、いったい何でしょうか。
まず、マネジメントとは、人に関わるものです。その機能は、人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることです。これが組織の目的です。また、マネジメントとは、ニーズと機会の変化に応じて、組織とそこに働く者を成長させるべきものです。組織はすべて学習と教育の機関です。あらゆる階層において、自己啓発と訓練と啓発の仕組みを確立しなければなりません。
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このように、マネジメントとは一般に誤解されているような単なる管理手法などではなく、徹底的に人間に関わってゆく人間臭い営みなのです。にもかかわらず、わが国のビジネス・シーンには、ナレッジ・マネジメントからデータ・マネジメントまで、ありとあらゆるマネジメント手法がこれまで百花繚乱のごとく登場してきました。その多くは、ハーヴァード・ビジネス・スクールに代表されるアメリカ発のグローバルな手法です。
もちろん、そういった手法には一定の効果はあるのですが、日本の組織では、いわゆるハーヴァード・システムやシステム・アナリシス式の人間管理は、なかなか根付かないのもまた事実です。情緒的部分が多分に残っているために、露骨に「おまえを管理しているぞ」ということを技術化されれば、される方には大きな抵抗があるのです。
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日本では、まだまだ「人生意気に感ずるビジネスマン」が多いように思います。仕事と同時に「あの人の下で仕事をしてみたい」と思うビジネスマンが多く存在します。そして、そう思わせるのは、やはり経営者や上司の人徳であり、人望であり、人間的魅力です。会社にしろ、学校にしろ、病院にしろ、NPOにしろ、すべての組織とは、結局、人間の集まりにほかなりません。人を動かすことが、経営の本質なのです。つまり、「経営通」になるためには、大いなる「人間通」にならなければなりません。
そして、人類史上最大の「人間通」こそは孔子であったと思います。
*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。
2016年10月17日 一条真也拝