ハートフル・ブックス講演

一条真也です。
17日の14時半からブログ「ハートフル・ブックス記念講演会のお知らせ」で紹介したイベントが行われました。ブログ『死者の書』で紹介したように、124・5万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」に連載中の「ハートフル・ブックス」が8月6日号をもって、第100回目を迎えることができました。


ブックセンタークエスト小倉本店を背にして

会場のTKP

TKPの前で

黒土会長からの花が・・・



それを記念して、ブログ「ハートフル・ブックス展示販売会」で紹介したイベントが、9月1日よりブックセンタークエスト小倉本店で開催されています。そして、この日、「一条真也」記念講演会がTKP小倉シティセンターブックセンタークエスト小倉本店隣)で開催されたのです。会場に入ると、いきなり黒土始氏(第一交通産業株式会社取締役創業者名誉会長)から届いた素晴らしいお花が目に入りました。黒土会長には心より感謝いたします。


講演会場のようす(超満員でした!)

主催者挨拶をする永野部長代理

みなさん、こんにちは!

簡単な自己紹介をしました



会場は超満員でした。ありがたいことです。最初に、主催者である毎日メディアサービスの永野繁部長代理による挨拶、講師の紹介がありました。永野部長代理は、わたしと同い年だそうです。丁重な講師紹介を受けた後で登壇したわたしは、まずは簡単な自己紹介をしました。


各媒体の連載コラムを紹介

「ハートフル」とは?

ハートフル・ライフのために

日本人の心を求めて



それから、「ハートフル」をはじめとしたキーワードについて説明しました。
「日本人の心」についての考えを述べた後、わたしは昨年完結した三部作である『礼を求めて』『慈を求めて』『和を求めて』を紹介して、神道・仏教・儒教が調和した「日本人の心」について説明しました。


読書についてたっぷり話しました

本を読んで心を太らせよう!



ハートフル・ブックス」の記念すべき第1回目はサンデー新聞2008年3月15日号に掲載され、タイトルは「本を読んで心を太らせよう!」でした。わたしは、本が好きで、とにかく毎日読んでいます。会社を経営しているので、もちろんビジネス書も読みますが、その他にも歴史や哲学や科学の本、それに小説など、とにかく何でも読みます。本好きが高じて、自分でも本を書きますし、最近は大学の客員教授として学生さんたちに読書指導も行っています。


論語』について

ドラッカーの法則」とは



経営者としてのわたしは、『論語』やドラッカーの経営書などを繰り返し読み、その教えを活かしています。よく「読書が大事なことはわかっているけれど、忙しくて読むヒマがない」と言う人がいます。しかし、逆だと思います。本当は、「本を読まないから時間がない」のではないでしょうか。


「ビジネス書」を読む

本=タイムマシン説



ビジネス書には、努力の末に成功した人の知識や経験やノウハウがたくさん書かれています。その人が何年も何十年もかけて体得した奥義を、わずか一冊の本を読むだけで得ることができるのです。人間は経験のみでは、一つの方法論を体得するのに数十年もかかります。でも、他人の経験を借りて、それを一日で可能にする読書ならば、最短の時間と最小の労力で成功にたどり着けるわけです。そのうえで自分なりの工夫を加えればよいのです。つまり読書とは、時間を短縮するタイム・ワープの方法にほかなりません。本とはタイムマシンなのです。


「歴史書」を読む

会場のようす



プロイセンの鉄血宰相ビスマルクに「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という有名な言葉があります。西欧の人々は主にローマ帝国の衰亡史などを参考に人間理解をしてきました。日本人は『十八史略』や『三国志』などの中国の歴史書によって人間研究をしてきました。歴史を知れば、「驕る平家は久しからず」の言葉のように、傲慢になることを防ぎ、非常識な行為や馬鹿な真似をすることもありません。つまり、知恵がつくのです。そして、読書の最大の目的とは、心を豊かにすることにあります。良い本は心のごちそうです。体はスリムな方が健康的ですが、心には栄養をたっぷり与えましょう。わたしは「どんどん、本を読んで心を太らせましょう!」と述べました。


グリーフケアとしての読書

読書で「おそれ」も「かなしみ」も消えていく



それから、「グリーフケアとしての読書」についても話しました。
もともと読書という行為そのものにグリーフケアの機能があります。
たとえば、わが子を失う悲しみについて、教育思想家の森信三は「地上における最大最深の悲痛事と言ってよいであろう」と述べています。じつは、彼自身も愛する子供を失った経験があるのですが、その深い悲しみの底から読書によって立ち直ったそうです。本を読めば、この地上には、わが子に先立たれた親がいかに多いかを知ります。自分が1人の子供を亡くしたのであれば、世間には何人もの子供を失った人がいることも知ります。これまでは自分こそこの世における最大の悲劇の主人公だと考えていても、読書によってそれが誤りであったことを悟るのです。長い人類の歴史の中で死ななかった人間はいません。愛する人を亡くした人間も無数に存在します。その歴然とした事実を教えてくれる本というものがあります。それは宗教書かもしれませんし、童話かもしれません。いずれにせよ、その本を読めば、「おそれ」も「かなしみ」も消えてゆくでしょう。わたしは、そんな本を『死が怖くなくなる読書』(現代書林)で紹介しました。


「童話」を読む

「メルヘン」を読む



そして、グリーフケアとしての読書を考えたとき、「童話」というものが非常に重要になってきます。大人も大いに童話を読むべきです。
「童話」とは「メルヘン」を訳した日本語です。本来のメルヘンはけっして子どものための物語ではありませんでした。太古の時代にまでさかのぼる超感覚的なことがらを具体的に表現したものがメルヘンの奥底には潜んでいます。そこでは、象徴と現実、この世とあの世とが混ざり合っていて、不可能なことが可能になります。まさに、メルヘンとは死のイメージの宝庫なのです。そして、そこには霊的真実がたくさん隠されているのです。ドイツの神秘哲学者ルドルフ・シュタイナーは「メルヘン」というものを、民族の想像力が生み出した「民話」や、大人が子どものために書き下ろした「ファンタジー」と厳密に区別して考えていました。メルヘンは、「人間存在そのもの」について何か根源的なものを表わしているというのです。


ハートフル・ファンタジー

涙は世界で一番小さな海』について語る



宇宙の叡智が込められた「メルヘン」と人間の創造的産物である「ファンタジー」は似て非なるものです。そして、ファンタジーでありながらメルヘンの要素を持ったものこそ「ハートフル・ファンタジー」です。わたしは、かつて『涙は世界で一番小さな海』(三五館)という本を書きました。そこで、『人魚姫』『マッチ売りの少女』『青い鳥』『銀河鉄道の夜』『星の王子さま』の5つの物語は、じつは1つにつながっていたと述べました。
ファンタジーの世界にアンデルセンは初めて「死」を持ち込みました。メーテルリンクや賢治は「死後」を持ち込みました。そして、サン=テグジュペリは死後の「再会」を持ち込んだのです。一度、関係をもち、つながった人間同士は、たとえ死が2人を分かつことがあろうとも、必ず再会できるのだという希望が、そして祈りが、この物語には込められています。


日々心がけたいこと



そして、わたしは「永遠の知的生活」について話しました。
読書は「知的生活」の基本です。わたしは、上智大学名誉教授の渡部昇一先生と対談させていただき、『永遠の知的生活』(実業之日本社)を上梓しました。わたしは「結局、人間は何のために、読書をしたり、知的生活を送ろうとするのだろうか?」と考えることがあります。
その問いに対する答えはこうです。わたしは、教養こそは、あの世にも持っていける真の富だと確信しています。 あの丹波哲郎さんは80歳を過ぎてからパソコンを学びはじめました。霊界の事情に精通していた丹波さんは、新しい知識は霊界でも使えると知っていたのです。ドラッカーは96歳を目前にしてこの世を去るまで、『シェークスピア全集』と『ギリシャ悲劇全集』を何度も読み返したそうです。


「こころの一冊」を探す

ご清聴ありがとうございました!



死が近くても、教養を身につけるための勉強が必要なのではないでしょうか。モノをじっくり考えるためには、知識とボキャブラーが求められます。知識や言葉がないと考えは組み立てられません。死んだら、人は精神だけの存在になります。そのとき、生前に学んだ知識が生きてくるのです。そのためにも、人は死ぬまで学び続けなければなりません。 わたしがそのような考えを渡部先生に述べたところ、先生は「それは、キリスト教の考え方にも通じます」と言って下さいました。 人は死ぬまで学び続けなければならないのです。最後に「読書によって得たものは永遠です。みなさんも『こころの一冊』を探されて下さい。ご清聴ありがとうございました!」と言って話を終えると、盛大な拍手が起こって感激しました。


質疑応答で質問を受ける



講演終了後は質疑応答の時間に移りました。
この日の会場は非常に知的な雰囲気に満ちていましたが、素晴らしい質問が相次ぎました。まずは「自分は本を書うときにいつも立ち読みをします。目次などを見て内容をチェックしてから本を買うのですが、間違っていないでしょうか?」という質問がありました。わたしは「目次をチェックするのは、読書の王道です。わたしも目次を熟読してから、本文を読み始めます。それから、立ち読みほど集中力を発揮する読書はありません。超高速で内容をインプットするからです。これからも、大いに立ち読みを続けられて下さい」とお答えしました。


質疑応答で質問に答える



次に、「『古事記』の話が出ましたが、どんなところが良いのでしょうか? 『古事記』は難しく感じられるのですが、何か良い『古事記』の本があればご紹介下さい」という質問がありました。わたしは、「文化人類学者のレヴィ・ストロースも指摘していますが、『古事記』には世界中の神話のエッセンスが入り込んでいます。そして、『古事記』はグリーフケアの物語です。スサノヲをはじめとして、『古事記』に登場する神々はいつも泣いています。そして、アマテラスは天の岩戸に閉じ籠ってしまいました。天の岩戸を開いて陽光を射し込むことこそグリーフケアの本質です。本は、「ハートフル・ブックス」の第21回で紹介した『超訳 古事記』鎌田東二著(ミシマ社)がおススメですよ」とお答えました。


質疑応答で質問を受ける



それから「子どもにはどんどん本を読ませたほうがいいでしょうか? それとも、良い本を選んで、その本だけを読ませたほうがいいでしょうか?」という質問がありました。わたしは「子どもさんの好奇心は無限です。好奇心が想像力、そして創造力を育てます。好奇心の向くままに、どんどん本を読ませてあげて下さい」とお答えました。


質疑応答で質問に答える

たくさんの拍手を頂戴しました



最後に、「サヴァン症候群の人向けに、文字のない絵本というものがあります。このような字のない絵本について、どう思いますか?」という質問がありました。わたしは、「字のない絵本というのは素敵ですね。日本人以外の世界中の人々にプレゼントできるじゃありませんか。アニメーションなどもそうですが、言葉を超えた表現には普遍性があると思いますよ」とお答えしました。このように深い4つの質問にお答えして、わたしは会場を後にしました。


奥田知志さんと

NPO法人・抱樸のみなさんと

八坂和子さんと

中島先生&北九州市立大学のみなさんと



講師控室に戻ると、多くの方々が挨拶に来て下さいました。
まずは、わたしと『無縁社会から有縁社会へ』(水曜社)という共著のある奥田知志さんとNPO法人・抱樸のみなさん。ありがとうございました。
次に、わたしと『ミャンマー仏教を語る』(現代書林)という共著のある八坂和子さん(出光美術館友の会会長)。ありがとうございました。
そして、北九州市立大学の名誉教授で臨床心理士の中島俊介先生と学生のみなさん。学生さんたちは長崎原爆の真実を伝える活動をされているとのことで、わたしは「長崎原爆は本当は小倉に落ちるはずでした。みなさんは、原爆の犠牲になられた方々の想いを広く世の中の人々に伝え、核のない世界が実現する日のために頑張って下さい」と申し上げました。
本当に、心あるハートフル・ピープルたちと御縁を頂けて、幸せです。
お世話になった毎日メディアサービスさん、ブックセンタークエスト小倉本店さんには深く感謝いたします。これからも、わたしは「サンデー新聞」の「ハートフル・ブックス」で多くの良書を紹介していきたいです。


死を乗り越える映画ガイド あなたの死生観が変わる究極の50本

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おかげさまで完売しました!



そして、この日、わが最新刊『死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)が発売されました。ブックセンタークエスト小倉本店 はもちろん、講演会場の受付横でも早速に販売されましたが、非常に好評で用意していた本はすべて売り切れました。ありがとうございます!



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2016年9月18日 一条真也