『管理される心』

管理される心―感情が商品になるとき


一条真也です。
『管理される心』A・R・ホックシールド著、石川准・室伏亜希訳(世界思想社)を再読しました。ずいぶん前に読んだ本です。ブログ『卒業式の歴史学』で紹介した本に引用されていたので、なつかしくなり、読み返してみたくなったのです。著者のホックシールドアメリカの社会学者で、1983年出版の本書において、「感情労働」という概念を提唱しました。


本書の帯



本書のサブタイトルは「感情が商品になるとき」で、帯には「感情を、売り買いする時代」として、「乗客に微笑むスチュワーデス。債務者の恐怖を煽る集金人。彼らは肉体労働者である前に、感情労働者である。丹念なインタビューをもとに、感情を売り買いする時代の、商品化された『心』を探究する」と書かれています。


本書の帯の裏



本書の「目次」は、以下のようになっています。
「まえがき」
「謝辞」
第1部 私的生活
 第1章 管理される心の探究
 第2章 手がかりとしての感情
 第3章 感情を管理する
 第4章 感情規則
 第5章 感情による敬意表明――贈り物の交換
第2部 公的生活
 第6章 感情管理――私的な利用から商業的利用へ
 第7章 両極の間で――職業と感情労働
 第8章 ジェンダー、地位、感情
 第9章 本来性の探究
付録
 A 感情モデル――ダーウィンからゴフマンまで
 B 感情の命名法
 C 仕事と感情労働
 D 地位と個人に関するコントロールシステム
「注」
「訳者あとがき」
「参考文献」
「索引」



現代は、モノを生産したり加工したりする仕事よりも、人間を相手にする仕事をする人、すなわち「感情労働者」が多くなってきました。感情労働とは、肉体労働、知識労働に続く「第三の労働形態」とも呼ばれます。「感情社会学」という新しい分野を切り開いたアメリカの社会学者アーリー・ホックシールドは、乗客に微笑む旅客機のキャビンアテンダントや債務者の恐怖を煽る集金人などに丹念なインタビューを行い、彼らを感情労働者としてとらえました。ホックシールドは言います。マルクスが『資本論』の中に書いたような19世紀の工場労働者は「肉体」を酷使されたが、対人サービス労働に従事する今日の労働者は「心」を酷使されている、と。



現代とは感情が商品化された時代であり、労働者、特に対人サービスの労働者は、客に何ほどか「心」を売らなければならず、したがって感情管理はより深いレベル、つまり感情自体の管理、深層演技に踏み込まざるをえません。
それは人の自我を蝕み、傷つけるというのです。
冠婚葬祭業にしろホテル業にしろ、確かに気を遣い、感情を駆使する仕事です。お客様は、わたしたちを完全な善意のサービスマンとして見ておられます。もちろん、わたしたちもそのように在るべきですが、なかなか善意の人であり続けるのは疲れることです。みなさんは、感情労働のプロとして、ホスピタリティを提供しているのです。



第1章「管理される心の探究」では、「感情の私的利用と商業的利用」として、以下のように述べられています。
「私的な社会生活では常に感情の管理が必要とされていると言ってもよい。パーティに集まった客はホストに対して楽しい気持ちになる義理があるし、会葬者は葬式の場に適した悲しみを呼び起こす。1人1人が、集団のためによかれと、つかの間の捧げ物として自分の感情を差し出しているのだ。集団への捧げ物としての感情(より集団中心的なホビ族の文化では〈alofa〉と呼ばれている)を表す英語の名詞がないので、私は交換の概念を持ち出すことになる。怒りの抑圧、感謝の気持ちの表明、羨みの抑圧等は、親から子へ、妻から夫へ、友達から友達へ、恋人から恋人へ、というように、あちらこちらで贈り物として提供されている」



また、著者は以下のようにも述べています。
「人が、感じたいと�