山と想像力

一条真也です。
3日朝、北海道七飯町の山林で親に「しつけのため」と置き去りにされ、行方不明となっていた小学2年生の田野岡大和くん(7)が無事に保護されました。不明になったのは5月28日の夕方で、捜索が長期にわたることで心配する声が強まっていましたが、見つかって良かったですね!


不明男児の発見を報道する各紙夕刊



大和くんが見つかった場所は七飯町の隣、鹿部町にある陸上自衛隊駒ヶ岳演習場内でした。演習場には柵があって大人は入れませんが、子どもなら潜って入ることが可能だそうです。敷地は広大で小屋もあり、大和くんは1人で歩いてここにたどり着いて、蛇口から水を飲んで約1週間を生き延びたといいます。大和君は「(寒さをしのぐために)マットレスマットレスの間にはさまっていた」と話しました。大和君の服はあまり汚れておらず、おそらくずっと動かずにいたものと思われます。「保温」と「動かない」というのが遭難時の鉄則だそうですが、これを7歳で実践するとは凄いですね!
捜査は長期化し、捜査員の人数は200人近くにもなりました。2日夜には合同捜査本部を解散し、3日からは規模を縮小して捜索する予定でした。
その矢先の発見だったというわけで、本当に良かった!


それにしても自衛隊が1週間探して見つからなかった子どもが自衛隊施設にいたとは! まさに「事実は小説より奇なり」ですが、今回の失踪事件そのものが謎に満ちていました。大和くんの臭いに警察犬が反応しなかったこともそうですし、「(不明になった)28日から(陸自宿舎に)いた」という大和くんの証言と、「30日の点検時に、誰の姿も見えなかった」とする陸自の説明の「矛盾」も謎です。見落としや、大和くんが一時的に宿舎を離れていた可能性も考えられますが、なぜ30日の時点で発見されなかったのか?
ネット上ではさまざまな憶測が飛び交い、2日夜には「2ちゃんねる」に80以上のスレッドが立っていたそうです。心ない推測を書き込んだネット民たちは反省のコメントを続々と寄せています。


遠野物語・山の人生 (岩波文庫)

遠野物語・山の人生 (岩波文庫)

「現代の神隠し」といった意見もありましたが、わたしは今回の失踪事件を知って柳田國男の『遠野物語』を連想しました。日本民俗学の幕開けとなった書ですが、山中の「神隠し」について記述されています。また、柳田には『山の人生』という著作もあります。いわゆる山人についての論考ですが、大和くんが無事で発見されたという第一報が届いたとき、わたしは咄嗟に「山人に助けられたのではないか」と思ってしまいました。
遠野物語』や『山の人生』には多くの不思議な実話(?)が紹介されていますが、中には今回の出来事のような真相もあったかもしれませんね。それにしても、山には人々の想像力をかき立てる何かがあります。


*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2016年6月3日 一条真也