迷惑について考える映画「家族はつらいよ」

一条真也です。
4月になりました。桜も満開、春爛漫です!
わたしは、 終活WEB「ソナエ」で「一条真也のハートフル・ライフ」を連載しています。「日本の心」や「心ゆたかな生き方」をテーマに月に2回、コラムをお届けしております。その第30回目が本日アップされました。


「迷惑について考える映画『家族はつらいよ』」



第30回目となる今回のタイトルは、「迷惑について考える映画『家族はつらいよ』」です。日本映画「家族はつらいよ」を観ました。「男はつらいよ」シリーズなどをはじめ、長年にわたって「家族」を撮り続けてきた名匠・山田洋次監督による喜劇です。結婚50年を迎えた夫婦に突如として訪れた離婚の危機と、それを機にため込んできた不満が噴き上げる家族たちの姿をユーモラスに描いています。




わたしは東京・有楽町の映画館で鑑賞したのですが、館内には老夫婦の観客が多かったです。それが必ず御主人(おじいさん)のほうがよく喋るのです。つぶやきといったレベルではなく、けっこう大きな声で喋るのです。きっと隣りに座っている奥さん(おばあさん)に聞かせるために声を出しているのでしょうが、「なるほどねぇ」とか「役者ってのは、やっぱり演技がうまいねぇ」とか、どうでもいいような下らないことを大きな声で言うのです。もしかしたら、自宅でテレビを観ている感覚なのかもしれません。でも、聞いている奥さんのほうは無言でしたね。「あなた、静かにしなさいよ」ぐらい言ってくれてもいいと思いましたけど・・・・・・。



平気で周囲に迷惑をかける御主人たちは、きっと家でも奥さんに迷惑をかけ続けているのではないかと思います。ある日、奥さんから離婚届を突きつけられるかもしれません。わたしは、この映画を観ながら「迷惑とは何か」ということをずっと考えていました。
「終活」がブームになっています。「終活」という言葉には何か明るく前向きなイメージがありますが、わたしは「終活」ブームの背景には「迷惑」というキーワードがあるように、ずっと思っていました。「無縁社会」などと呼ばれる現在、みんな、家族や隣人に迷惑をかけたくないというのです。



「残された子どもに迷惑をかけたくないから、葬式は直葬でいい」「子孫に迷惑をかけたくないから、墓はつくらなくていい」「失業した。まったく収入がなく、生活費も尽きた。でも、親に迷惑をかけたくないから、たとえ孤独死しても親元には帰れない」「招待した人に迷惑をかけたくないから、結婚披露宴はやりません」「好意を抱いている人に迷惑をかけたくないから、交際を申し込むのはやめよう」。すべては、「迷惑」をかけたくないがために、人間関係がどんどん希薄化し、社会の無縁化が進んでいるように思えます。



しかし、そもそも、家族とはお互いに迷惑をかけ合うものではないでしょうか。子どもが親の葬式をあげ、子孫が先祖の墓を守る。当たり前ではないですか。そもそも“つながり”や“縁”というものは、互いに迷惑をかけ合い、それを許し合うものだったはずです。家族だって隣人だって、みんなそうでした。家族とは迷惑をかけ合うもの。しかしながら、感謝の「こころ」を忘れてはなりません。そして、「こころ」は「ことば」にしたり、「かたち」にする必要があります。「こころ」を「かたち」にする最高の場面こそ、冠婚葬祭です!


次回の「一条真也のハートフル・ライフ」は、4月15日(金)にアップされる予定です。タイトルは「死ぬまでにやっておきたい50のこと」です。わたしの最新刊『死ぬまでにやっておきたい50のこと』(イースト・プレス)が刊行されました。「人生の後半を後悔しないライフプランのつくり方」というサブタイトルがついています。死の直前、人は必ず「なぜ、あれをやっておかなかったのか」と後悔するといいます。 さまざまな方々の葬儀のお世話をさせていただくたびに耳にする故人や遺族の後悔の念・・・・・・そのエピソードを共有していけば、すべての人々の人生が、今よりもっと充実したものになるのではと考えました。次回はそんなことを書きます。どうぞ、お楽しみに!



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2016年4月1日 一条真也