死を考える広告

一条真也です。
今日、ヤフーニュースのTOPに「樹木希林起用 死を考える広告」というタイトルが掲載されていました。非常に興味を引かれたので思わずクリックすると、「『死ぬときぐらい好きにさせてよ』 樹木希林さん起用した話題の広告、伝えたかったメッセージとは?」というwithnewsが配信した記事が出てきました。最初はどこかの葬儀社か霊園の広告かなと思ったのですが、なんと出版社である宝島社の企業広告でした。


ヤフーニュースより



その記事の冒頭には以下のように書かれていました。
「『死ぬときぐらい好きにさせてよ』。そんな衝撃的なキャッチコピーの横には、仰向けになって水面に浮かんでいる樹木希林さん。何かといえば、ジョン・エヴァレット・ミレイの名作『オフィーリア』をモチーフにした宝島社の企業広告の話です。今年1月に新聞掲載され、話題になりました」


2016年度の宝島社の企業広告



ミレーの「オフィーリア」は、シェークスピアの悲劇「ハムレット」に構想を得たことで知られています。恋人ハムレットに父を殺されて、気がふれたオフィーリアが、川に落ち沈んでいく場面を描いたとされています。
「死ぬときぐらい好きにさせてよ」というキャッチコピーの下には「人は死ねば宇宙の塵芥(ちりあくた)。せめて美しく輝く“塵”になりたい」という文面が続きます。これは拙著『唯葬論』(三五館)の第一章である「宇宙論」のメッセージとまったく同じなのでちょっと驚きました。


唯葬論

唯葬論

はるか昔のビッグバンからはじまるこの宇宙で、数え切れないほどの星々が誕生と死を繰り返してきました。その星々の小さな破片が地球に到達し、空気や水や食べ物を通じてわたしたちの肉体に入り込み、わたしたちは「いのち」を営んでいます。わたしたちの肉体とは星々のかけらの仮の宿であり、入ってきた物質は役目を終えていずれ外に出てゆく、いや、宇宙に還っていきます。宇宙から来て宇宙に還るわたしたちは、「宇宙の子」であると言えます。人間も動植物も、すべて星のかけらからできているのです。



宝島社の企業広告といえば、これまでも「おじいちゃんにも、セックスを。」などのインパクトのある広告で世間を驚かせてきました。
今回は「死について考えることで、どう生きるかを考えるきっかけになれば」というメッセージが込められていますが、これに対して樹木さん自身は次のようにコメントしています。
「宝島社の企業広告はこれまで目にしたことがあり、かなり記憶に残っています。それはすごいことだと思い、お受けしようと思いました。『生きるのも日常、死んでいくのも日常』 死は特別なものとして捉えられているが、死というのは悪いことではない。そういったことを伝えていくのもひとつの役目なのかなと思いました」
.


宝島社の担当者は今回の広告について、次のようにコメントしています。
「日本の平均寿命は年々更新され、今や世界一。いかに長く生きるかばかり考え、いかに死ぬかという視点が抜け落ちていると感じ、今回のテーマとしました。いかに死ぬかは、いかに生きるかと同じこと。それなら個人の考え方や死生観がもっと尊重されていいのではないか、という視点から問いかけています」

 

わたしはこのような「死」を正面から扱った企業広告が製作され、またそれが話題になるのは素晴らしいことだと思います。かつて日本人にとって「死」は最大のタブーでしたが、もはや「死」を直視して生きる時代となりました。わたしの次回作は『死ぬまでにやっておきたい50のこと』(イースト・プレス)ですが、このたびアマゾンにもUPされました。機会があれば、宝島社から「死」をテーマにした本を出してみたいです。


死ぬまでにやっておきたい50のこと

死ぬまでにやっておきたい50のこと

最後に、樹木希林さんは死ぬのが怖くないのではないかと思います。
なぜなら、樹木さんの娘婿は「おくりびと」の本木雅弘さんですから!
きっと、何の心配もなく安心してあの世に旅立てるのではないでしょうか?



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2016年2月27日 一条真也