ちゅら葬儀で、ニライカナイへ

一条真也です。
6日、沖縄を代表する女優として知られる平良とみさんが敗血症による呼吸不全のため87歳で亡くなられました。その葬儀・告別式が8日、那覇市の「那覇北紫雲閣」で営まれました。芸能関係者ら約900人が参列し、「琉球新報」や「沖縄タイムス」の9日朝刊で大きく報道されました。


琉球新報」12月9日朝刊



琉球新報」には、「進さん『忘れないで』」「平良とみさん告別式 900人別れ惜しむ」の見出しで、以下のように書かれています。
「6日に87歳で亡くなった女優の平良とみさんの告別式が8日、那覇市サンレー那覇北紫雲閣で執り行われた。友人やファンら約900人が訪れ、『おばあ』として親しまれたとみさんに『ありがとう』『忘れない』と別れを告げた。所属事務所エーシーオー沖縄の下山久代表(68)は『とみさんらしい「ちゅら葬儀」だ』と話した。
遺影のとみさんはいつも満面の笑み。とみさんの語りを入れたCD『その日』のジャケット写真が使われ、CDも流された。人を愛した優しい人柄から法名は『淨誠院釋優愛』となった。喪主の夫進さん(80)は『二人三脚で沖縄芝居の道を生きてきた。つらく寂しいが、とみが芝居に懸けた思いを無駄にせず頑張っていきたい。写真を見ると今にも語り掛けてくるような気がする。これからも平良とみを忘れないで』と涙をこらえあいさつした。
とみさんが出演した演劇『洞窟(ガマ)』を演出した幸喜良秀さん(77)は『戦争を生き抜いて沖縄芝居をつないでくれた。今度は私たちが次の世代につなぐ』と力を込めた。『その日』を一緒に作ったしゃかりのチアキさん(43)は『いずれ天国でコラボレーションしたい』。
とみさんがときわ座在籍時に地謡をした照喜名朝一さん(83)は『「あの世でも芝居を見せて」と遺影に語り掛けた。宝物を失った』と惜しんだ。
稲嶺恵一元知事らも参列した。お骨を抱いた家族が式場から出ると、参列者は『とみさん、ありがとう』と声を掛けた」


沖縄タイムス」12月9日朝刊



また、「沖縄タイムス」には「とみさんありがとう 告別式に900人」の見出しで、以下のように書かれています。
「沖縄芝居やドラマ、映画などで活躍し6日に死去した女優の平良とみさん(享年87)の葬儀・告別式が8日、那覇市サンレー那覇北紫雲閣であった。開始前から芸能関係者やファンらが列をなし、約900人が参列。祭壇に飾られた着物姿でほほ笑む平良さんの遺影=写真=に、涙を浮かべ手を合わせた。人気を全国区にしたNHKドラマ『ちゅらさん』の出演者や映画・舞台の共演者、琉球芸能関係者らから多くの供花も寄せられた。参列者は平良さんとの思い出を語り合い、長い芸歴と愛される人柄をしのんだ。遺骨が祭場を出る際は『ありがとう』の声と拍手もわき、『おばぁ』として親しまれた名優に別れを告げた。夫で俳優の平良進さん(80)は『うちなー芝居一筋の幸せな人生でした。いなくなってつらく寂しいが、とみのためにも頑張りたい』と悲しみをこらえあいさつした。
ちゅらさん』の脚本家岡田惠和さんは『出演を迷っていた平良さんから「沖縄のためになりますか」と聞かれ、「そうなるよう頑張ります」と返事しました。出会えて幸せでした』と振り返った。映画『ナビィの恋』などで共演したタレントの津波信一さん(44)は『沖縄の言葉がなくなると芸能もなくなる。沖縄をもっと大切にしてほしいと何度も言われた』と悼んだ」


ヤフー・ニュースより



平良さんの葬儀のニュースは、ヤフー・ニュースにも大きく取り上げられました。わたしは、最近の大物芸能人や俳優の死去がなぜかリアルタイムで知らされず、「葬儀は近親者のみですでに終えたという」といった報道に接するにつれ、疑問に思っていました。現在のわたしと同じ52歳で亡くなった石原裕次郎美空ひばりも、亡くなったと同時にニュース速報が流れ、告別式には多くのファンが参列しました。
最近の「知らせない」風潮に対して、あえて一言申しますが、歌手にしろ俳優にしろ、芸能人というのはファンあってのもの。ファンに支えられて生活し、輝かしい人生を送ってきたはず。ファンには長年応援してきた芸能人がこの世を去った日にそれを知り、その日に悲しむ権利があるはずです。わたしもファンだった高倉健がすでに亡くなっていたことを知ったときは非常に寂しい思いをしました。その意味で、多くのファンの方々に見送られてニライカナイへ旅立った平良さんの「ちゅら葬儀」は、すべての芸能人が模範とし、目指すべきだと思います。
現代日本社会は「無縁社会」などと呼ばれますが、沖縄には血縁、地縁が今も強く残っています。そして、沖縄人は何よりも冠婚葬祭を大切にします。それが「人の道」だからです。沖縄は「守礼之邦」だからです。わたしは、ずっと「本土復帰」ではなく、本土が「沖縄復帰」すべきであると訴えてきましたが、平良さんの葬儀でその思いをいっそう強くしました。偉大なる「おばぁ」、平良とみさんの御冥福を心よりお祈りいたします。合掌。


*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年12月9日 一条真也