「SHUNGA 春画展」

一条真也です。
14日、話題の「SHUNGA 春画展」に行きました。場所は目白にある永青文庫です。ここは初めて訪れましたが、旧細川邸を改造した美術館で、建物自体に趣がありました。「18才以下入場禁止」ということで少しだけ緊張しましたが(苦笑)、来場者は男女の高齢者と若い女性が多かったです。



「世界が、先に驚いた」のコピー通り、今回、日本で初めて開催される春画展ですが、2013年秋から14年冬までロンドンの大英博物館で史上最大の春画展「春画―日本美術における性とたのしみ」(“Shunga:sex and pleasure in Japanese art”)が開催されました。この展覧会はロンドンっ子の度肝を抜いて、延べ9万人が訪れる大盛況だったそうです。かの「ガーディアン」紙が四つ星をつけたのをはじめ、多くのメディアからも高い評価を受けました。


SHUNGA 春画展」チラシ(表)

SHUNGA 春画展」チラシ(裏)

永青文庫の門にて

展覧会の入口で

永青文庫の前で

永青文庫の内部のようす



今回の「SHUNGA 春画展」では、120点の春画が出展されています。永青文庫の所蔵だけでなく、東洋文庫三井記念美術館、岡田美術館、五島美術館といった日本を代表する美術館の所蔵品と、国際日本文化研究センターの所蔵品、さらには大英博物館およびデンマークなど海外からの里帰り作品18点も展示されます。これだけの春画が一同に会するのは空前であり、今回を逃したら、今度はいつ見れるかわかりません。


物販コーナー

4000円の図録を購入しました

さすがに内容が充実しています



SHUNGA 春画展」では、「プロローグ」「肉筆の名品」「版画の傑作」「豆判の世界」「エピローグ」の5つの章に分けて、鈴木春信の清楚、月岡雪鼎の妖艶、鳥居清長の秀麗、喜多川歌麿の精緻、葛飾北斎の豊潤が展示されています。


渓斎英泉「あぶな絵 源氏物語



「プロローグ」では、二人が見つめあい、男女が接近して心を通わし、触れ合う情景を描いた作品が展示されています。愛を交わす様子を描いた春画には、複数の場面で1つの作品を構成するものがあります。そのとき、最初に描かれた場面は、まだ愛を交わすに至っていないことが多いです。導入部として、2人が見つめあい、手をとり、そっと引き寄せ、裾に手を差し入れる場面が控えめに描かれるのです。


歌川国芳「華古与見」国際日本文化研究センター



「肉筆の名品」では、版画のように印刷された春画ではなく、人の手で線と色を書き出された「肉筆」を40点展示されています。また「版画の傑作」では、名だたる浮世絵師が筆をふるった版画、版本の数々が展示されています。さらに「豆判の世界」では、縦9センチ、横13センチ弱の小さな春画が展示されています。


喜多川歌麿 「歌満くら」 浦上満氏蔵



そして「エピローグ」には、永青文庫所蔵の春画が並んでいます。
江戸時代(17世紀)の肉筆画巻と、江戸時代後期、天保6年(1835年)頃の版本「艶紫娯拾餘帖」です。この「SHUNGA 春画展」に出品された春画は、いずれも、大名家から庶民までの、江戸時代以前の人々の暮らしの中で享受されて、今に伝わったものです。じつに多くの春画が制作され、人々に愛されてきたことがわかります。



春画は性的な表現を描いた芸術ですが、西洋の「ポルノグラフィ」とは異なり、そこには「笑い」の要素が含まれています。特徴を捉えるために、身体の一部をデフォルメして意図的に大きく描いているのです。
江戸時代の日本人は、「性」に対して独特の感性を持っていたのです。そこに描かれた男女の交わりは露骨な「性交」ではなく、あくまでも「色事」でした。そして、春画は縁起物であり、戦勝祈願の兵士のお守りにもなりました。春画が描いた「性」は「聖」に通じていたのです。



フロイトは「エロス」と「タナトス」が不可分であることを唱えましたが、一般に「性」と「死」は表裏一体とされています。わたしの場合はどうも「タナトス」や「死」のほうに関心が偏っているように自分でも思いますので、これからは「エロス」や「性」にも関心を向けていきたいと思います(苦笑)。まずは、4000円で購入した図録を眺めて、人体の神秘を研究します(笑)。


和を求めて

和を求めて

SHUNGA 春画展」を鑑賞して、わたしは日本文化の奥深さを痛感しました。本当はブログ『和を求めて』で紹介した最新刊の中でも春画を紹介したかったです。「和」は大和の「和」であり、平和の「和」です。異色の哲学者であった中村天風は「和というものこそ、平和を現実に具体化する唯一の根本要素である」と喝破しました。でも、なかなか「和の気持ち」を持つことは難しいのが現実です。ならば、どうすればよいか。天風は「「それは、何よりも、第一に個々の家庭生活の日々の暮らしの中に、真実の平和を築くことだ」と言いました。たしかに家庭内の夫婦が不仲で、職場の和も世界の平和もあったものではないでしょう。まず、原点は家庭の平和。「夫婦和合」とは、よく言ったものです。その「和合」の原点が春画にはあります。



さて、「春画」といえば、「週刊文春」10月1日発売号に「空前のブーム到来! 春画入門」として、春画に関する記事および画像が掲載されましたが、これが編集長が処分されるという問題に発展しましたね。文藝春秋社の広報部は、「春画に関するグラビア記事について、編集上の配慮を欠いた点があり、読者の信頼を裏切ることになったと判断した。週刊文春編集長には3カ月の間休養し、読者の視線に立って週刊文春を見直し、今後の編集に生かしてもらう」とコメントしています。10月10日配信の「春画掲載で編集長処分の『週刊文春』、刑法上の犯罪に該当の可能性も」というネット記事には、その事情が詳しく説明されています。
週刊誌なら、春画もヌード写真もない健全な「サンデー毎日」が一番!
安心して、家庭にも銀行や病院の待合室にも置いておけますから・・・



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年10月14日 一条真也