「スサノヲの到来」

一条真也です。
9月8日はハード・スケジュールで、午前中に経済産業省を訪問、昼は四谷の三五館の新社屋を訪ねてビジネスランチ、午後からは「日経ビジネス」の取材を受けました。その後、渋谷区の「松濤美術館」を訪れました。


スサノヲの到来 いのち、いかり、いのり」のチラシ(表)



ここで展覧会「スサノヲの到来 いのち、いかり、いのり」が開催されているのです。この展覧会については、「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生から聞いていましたので、かねがね行きたいと思っておりました。
すると、「未来医師イナバ」こと東大病院の稲葉俊郎先生が、ご自身のブログ「」に「スサノヲの到来 いのち、いかり、いのり」という記事を書かれているのを読みました。それで松濤美術館での開催を知り、東京出張に合わせてついに訪れた次第です。


スサノヲの到来 いのち、いかり、いのり」のチラシ(裏)



日本神話に登場するスサノヲは、大地を揺るがし草木を枯らす荒ぶる魂と、和歌の始祖としての繊細な美意識を備えた存在です。この両面を持つスサノヲの姿を、古美術品・歴史資料でたどり、さらには、「破壊と再生」というスサノヲの象徴性に触発されて制作された現代の作品も展示し、時代を超えたスサノヲの影響を見ていく展覧会です。
もともと、「スサノヲの到来 いのち、いかり、いのり」は2014年10月18日より足利市立美術館にて開催された展覧会です。足利では12月23日まで開催され、その後、2015年秋まで各地の美術館で開催されました。


図録『スサノヲの到来 いのち、いかり、いのり

鎌田先生が解説記事を寄稿されています



鎌田先生は、本展覧会の展図録に解説記事「スサノヲという爆発ー放浪する翁童神のメッセージ」を寄稿され、以下のように述べています。
「スサノヲは爆発である。泣き虫の爆発であり、きかん気の爆発であり、暴れん坊の爆発である。また、スサノヲはスキャンダルである。アウトローであり、バガボンドであり、ヒッピーであり、ヒーローである。八頭八尾の八俣大蛇を退治することのできたスサノヲ自身が八頭八尾の怪物体である。異相の怪物神スサノヲ。この多面多層体のスサノヲ神話は、確かに、折口信夫の言う貴種流離譚のプロトタイプである。振り返ってわが人生を通観してみると、そのスサノヲとの遭遇の繰り返しであったと総括できる。まず、『オニ(鬼・大人)』を見ることから始まったわが人生で、初めて大きな社会発信をしたのが、一九七〇年五月、十九歳の時に、大阪の心斎橋で一ヶ月間『ロックンロール神話考』なるアングラ劇を作・演出したことにあった。(中略)研究面だけではなく、私生活の方でもスサノヲに遭遇し続けた」

神界のフィールドワーク―霊学と民俗学の生成

神界のフィールドワーク―霊学と民俗学の生成

翁童論-子どもと老人の精神誌(翁童論1) (ノマド叢書)

翁童論-子どもと老人の精神誌(翁童論1) (ノマド叢書)

明らかに鎌田先生の名著『神界のフィールドワーク〜霊学と民俗学の生成』(青土社ちくま学芸文庫)、『翁童論〜子どもと老人の精神誌』(新曜社)で展開された鎌田ワールドが30年の時間を超えて甦った印象です。ともに何度も繰り返し読んだ愛読書ですので、非常に懐かしかったです。それにしても、自著の内容が展覧会として立体化されるとは、鎌田先生ほど幸福な著者もいないのではないでしょうか。それこそ、一貫して神界をフィールドワークされてきたことへのスサノヲからの「ご褒美」だったような気がします。なお、鎌田先生は6日(日)に松濤美術館で講演され、大変な人気だったそうです。わたしも聴きたかった!


売店で勾玉・三角縁神獣鏡なども求めました



スサノヲには、荒ぶる神、和歌の始祖、文化創造神、農耕神、漂流神、そして英雄神という多面性があります。この展示では、縄文土器にはじまり、芭蕉円空上田秋成本居宣長平田篤胤出口なお出口王仁三郎、金井南龍、岡本天明南方熊楠といった人々の精神世界を紹介しながら、最終的には現代美術としての表現に着地させて展示しています。個人的には、奈良時代の『古事記』写本、芭蕉の『奥の細道』、秋成の『雨月物語』、宣長の『古事記伝』、篤胤の『仙境異聞』や『勝五郎再生記』の原本、出口なおの「お筆先」、南方熊楠のスケッチなどに感銘を受けました。
これらのお宝を一堂に集めたなんて、すごすぎます!


初めて訪れました

松濤美術館の前で(7日)

松濤美術館にて(8日)

松濤美術館の館内で(8日)



じつは7日の夕方にも訪れたのですが、休館日でした。
気を取り直して翌8日の夕方に来ましたが、台風による大雨で到着が大幅に遅れ、閉館時間ぎりぎりに入場することができました。時間は短くとも、この奇跡のような展覧会を鑑賞することができて良かったです。本当に素晴らしい展覧会でした。9月21日まで松濤美術館で開催されています。
東京周辺にお住まいの方はぜひ行かれて下さい!


*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年9月9日 一条真也