『ジョコビッチの生まれ変わる食事』

ジョコビッチの生まれ変わる食事


一条真也です。
ジョコビッチの生まれ変わる食事』ノバク・ジョコビッチ著、タカ大丸訳(三五館)を読みました。本書の編集者である「出版界の青年将校」こと中野長武さんから頂いた本です。ブログ「羽田ミーティング」に書いた日に手渡されたのです。わたしは、そのとき、ノバク・ジョコビッチという名前を生まれて初めて知りました。わたしはテニスには無知なのです。恥ずかしながら、大学1年生のときにはテニス・サークルに入っていたにもかかわらずです!


わたしなどが改めて説明するまでもなく、ジョコビッチは世界の超・超有名人です。先日のウィンブルドンでは、決勝における宿敵ロジャー・フェデラーとの壮絶なラリー合戦を制して、2年連続3回目の優勝を飾りました。
Wikipedia「ノバク・ジョコビッチ」によれば、1987年5月23日生まれの彼は、セルビアベオグラード出身の男子プロテニス選手。ATPランキング自己最高位はシングルス1位、ダブルス114位。ATPツアーでシングルス53勝、ダブルス1勝。身長188cm、体重80kg。右利き、バックハンド・ストロークは両手打ち。グランドスラムは歴代8位タイ記録の優勝8回。全豪オープンオープン化以降最多優勝・最多連覇の3連覇5回優勝。ワールドツアー・ファイナル優勝4回現在3連覇中。2011年にはオープン化以降男子6人目となる4大大会シングルス3冠達成」とあります。


Wikipedia「ノバク・ジョコビッチ」には、続いて「世界ランキング1位在位記録歴代6位で2014年7月から現在まで1位に在位中。セルビア人初の4大大会優勝者で2010年のデビスカップセルビア代表の優勝に貢献。ロジャー・フェデラーラファエル・ナダルアンディ・マレーと共にBIG4と称される。ジョークや有名選手のモノマネといった、試合内外関わらずユーモラスなパフォーマンスを行うことでも知られ、『ノーレ』(Nole)という愛称で呼ばれ親しまれている。セルビア・モンテネグロの分離により、現在は『セルビア』国籍でエントリーしている」とも書かれています。


そう、ジョコビッチはテニス界の絶対王者というよりも、世界のスポーツ界全体を見渡しても、こんなに圧倒的な強さを発揮している選手はいないほどの究極のアスリートなのです。当然ながら人気も最高で、男子のジョコビッチ、女子のシャラポワが2大スーパースターといった感じです。ちなみにテニスに疎いわたしでも、ナイスバディなシャラポワ選手のことは知っていました。このブログ記事を書くにあたってYouTubeをチェックしたのですが、ジョコビッチシャラポワがテニスの技術を使ってさまざまな競技に挑戦するという動画を見つけました。テニスボールをラケットで叩き、シャラポワがゴルフでホールインワンジョコビッチがボーリングでストライクを取る場面には仰天しました。いやあ、一流のテニス・プレーヤーって本当に凄いですね!


本書の帯



さて、本書に話題を戻しましょう。帯には著者ジョコビッチの上半身姿の写真が使われています。スラリと痩せています。
サブタイトルは「あなたの人生を激変させる14日間プログラム」で、帯には「What? How? 何を、どう食べたらいいのか?」「テニス界絶対王者が語る『人生好転・肉体改造のための設計図』」「14日で体重5kg減、そして世界制覇――」と書かれています。


本書の帯の裏



また帯の裏には「ジョコビッチからあなたへの提案」として「グルテン(小麦などに含まれるタンパク質)を14日間だけやめてみて、どういう気分になるか試してみてほしい。そして、15日目に、パンを少しだけ食べて様子をみてほしい。体が発する声に耳を傾けてほしい」と書かれています。



さらには表紙カバーの前そでには、「わたしがこの本を書こうと思ったのは、私ならあなたの肉体だけでなく人生すべてを変えられる――それもたったの14日間で――と知っていたからだ」と書かれています。
第二集団でもがくだけの存在だったプレーヤーは、なぜテニス界絶対王者に君臨することができたのでしょうか。本書では、著者が自らの食事法を紹介しながら、「何を、どう食べたらいいのか?」という人生好転・肉体改造のための設計図を明かしています。


本書の目次構成は、以下のようになっています。
「刊行によせて」ストラヴコ・ゼムノヴィッチ清水エスパルス元監督)
「序文」ウイリアムデイビス(医学博士)
序章  私を生まれ変わらせた食事   
第1章 バックハンドと防空壕
第2章 夢を叶えた、私の食べ方
第3章 オープンマインドになるだけで体は変わる
第4章 あなたの動きと思考を邪魔するもの
第5章 食事に関する、私のルール
第6章 圧倒的成果を出す、思考のトレーニング
第7章 誰でもできる簡単なフィットネスプラン
付録(1)王者のレシピ ――私を成功に導いた素晴らしい料理
付録(2)おすすめ食品ガイド
実際に本書を実践しての訳者あとがき
解説(1)小麦粉断ちがこんなに効果をあげるワケ
――白澤卓二(順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授)
解説(2)プロテニスプレーヤーが見るジョコビッチのすごさ
――杉山愛インタビュー



イリアムデイビスは、「序文」の冒頭に次のように書いています。
「ピーク・ヒューマン・パフォーマンス(人類が行ないうる最高のパフォーマンス)――これぞノバク・ジョコビッチがテニス界において勝ち取ったものである。この次元に達することができる者はどの世界においてもほんの一握りだけで、そこには途方もない才能と勇気、断固とした決意――そしてあらゆる邪魔な要素の排除――のどれ一つも欠くことができない。
それは量子力学からコンピューター・プログラミング、そしてテニスに至るまであらゆる人間の挑戦に欠かせないものである。ほとんどの人々にとって、ピーク・パフォーマンスの獲得は非常に困難なものであり、人体と精神が秘める最高の可能性を引き出すのは幾多の肉体的そして感情的な障壁を乗り越えなければならないのだ。
ノバク・ジョコビッチは、わずかな可能性を手繰り寄せてそんな障壁を乗り越えた、テニス史上に残るほど稀な人間である」



ほとんどの人は、6歳とのときに「人生で何をしたいのか」を決めることはできないでしょう。しかし、本書の著者であるジョコビッチは決めていました。セルビアの山岳地帯にあるコパオニクという街で彼の両親がやっていたピザ店の小さなリビングルームで、ジョコビッチ坊やはピート・サンプラスウィンブルドンで優勝する姿を見ました。そのとき、彼は「いつの日か、あそこで優勝するのはボクなんだ」と心に誓ったそうです。



テニスは過酷なスポーツです。他の多くのスポーツと違って、テニスには本格的な「オフシーズン」というものがありません。1年のうち11カ月は、世界最高の選手たちと戦える状態でいなければなりません。試合時間も長く、男子の場合は3〜4時間も続くことも珍しくなく、しかも1日おきに次の試合があります。そして時差ボケに悩まされながら文字どおり全世界を毎週のように転戦しなければならないのです。



そんな過酷なスポーツで王者となるためには、完璧な肉体づくりが求められます。そのために最も必要となるのが正しい食事です。
正しい食事について、著者は以下のように述べています。
「正しい食べ物を選ぶということは、単に野躯体的スタミナにつながるだけではない。忍耐、集中力、前向きな態度にもつながるのだ。
それがコート上での動きにつながるし、私が愛するまわりの人々の幸福にもつながっている。正しい食べ物によって、私は人生のあらゆる場面で最高の次元に達することができる。
あなたが望みうる最高の自分になりたいと願うなら、私が勧めることはこれしかない。まずは、食べ物を変えることから始めてみてはどうだろう」



本書には、著者がトッププレーヤーとしての壁を乗り越えるきっかけとなった食事療法が具体的に示されています。現在は世界一のテニス・プレーヤーとして不動の地位を築いた著者ですが、ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。故郷セルビアの分離・独立戦争や原因不明の体調不良によって、試合を棄権するなど苦難の日々が続いていたのです。しかしながら、国の混乱は家族が団結して乗り切りました。また、体調不良も同胞であるセルビア人栄養学者からのアドバイスで食事スタイルを変更しました。すると、信じられないほど体調は改善して、ライバルだったナバル選手を打ち破り世界一の座を手に入れたのです。



著者には「一種の宗教」として守っている4つの原則があります。
それは、以下のとおりです。
(1) ゆっくり、意識的に食べよ。
(2) 肉体に明快な指示を出せ。
(3) 前向きであれ。
(4) 量ではなく、質を求めよ。
これらは、実際に著者の食事計画に組み込まれているそうです。



そして著者の食事法で最も重視していることこそ、小麦に含まれるタンパク質である「グルテン」を完全に除去することでした。グルテンは、人によってはアレルギーを誘発したり、腸粘膜や全身に炎症を引き起こしたり、精神を不安定にさせるそうです。さらには食欲増進作用で肥満を誘発し、毎日何時間も練習を積んでいるアスリートにさえ体重増を引き起こすのです。



著者はまた、「糖質」を摂取することもできるだけ避けてきました。
小麦や米や糖分は消化されて血中に入ると急激に血中糖度を上昇させます。そのため、膵臓などの内臓に負担をかけ、精神的にも悪影響を与えるというのです。著者は、このような考え方のもとに、信頼できる専門家の意見を聞き、自分でも情報を集めて実践しながら独自のトレーニングスタイルを築いてきたのです。



さらに、パーフェクトな肉体を求める著者は、食事だけでなく、ヨガのストレッチや瞑想、中国医学などにも目を向けます。世界中を旅する中で、オープンマインドであることがいかに大切かを知り、それを自分の人生に大いに活用したという著者は、次のように述べています。
「たとえば、今日頭痛がするとしよう。病院に行って医師に『頭痛がするんですが』と伝えると、『了解、ではこちらが薬です』と言って錠剤を渡される。西洋医学でよくわるやり方だが、これは症例に対するもので根本原因に効くものではない。他の文化圏における医学(漢方、アーユルヴェーダなど)は、根本原因を治療することに主眼を置いている。時として『治療する』にはグラスに水を1杯飲むだけでいいという単純な場合もある(脱水症状から頭痛が起きることもあるのだ)。だが西洋医学の医師は、自らの専門分野研究と経験だけに基づいて判断することがままある。私の経験から言っても、西洋医学の一分野を学んだ医師は代替治療に見向きもせず、時間をかけようともしない。彼らは自らの専門分野外からの観点で考えようとはしない」


理性のゆらぎ―科学と知識のさらなる内側

理性のゆらぎ―科学と知識のさらなる内側

水といえば、ネガティブなエネルギーを吹き込むと緑にくすみ、ポジティブなエネルギーを吹き込むと変化しないなどという記述も本書にはあります。こういうのは「ニセ科学」とか「トンデモ」などと言われて読者の失笑を買うことが多いのですが、たいていこういった説を唱える精神世界に通じた人は現実の生活が残念な結果になっていることが多いです(失礼!)ね。でも、本書の著者であるジョコビッチの場合は現実世界でも最高の結果を収めているわけですから、傾聴に値します。真理というのは「何を言うか」よりも「誰が言うか」が大事な部分が大きいですが、もしかするとジョコビッチは「水は答を知っている教」の教祖になれるかもしれません。いずれにせよ、わたしは水のくだりを読んで、本書以前の三五館の大ベストセラーである青山圭秀氏の著書『理性のゆらぎ』の内容を思い出しました。いや、ほんとに。



それにしても、著者の精神世界への並々ならぬ関心の高さには好感が持てました。瞑想の重要性を説いているくだりも説得力がありました。
彼の「グルテン不耐症」をずばりと当て、著者自身を納得させた恩人セトジェヴィッチ博士の実験は「キネシオロジー」と呼ばれる方法です。西洋の神経学、生理学、解剖学、カイロプラクティックの医学をもとに筋肉の反射を調べる方法で、東洋医学(五行や経絡の流れつぼ)をもとにアンバランスを見つけて身体に最も必要で適切なヒーリングを選択して心身のバランスを整える健康法とされています。食べ物との相性を知るには簡単で効果的な方法だそうで、本書のヒットによってキネシオロジーも注目されるかもしれません。ちなみに、キネシオロジーで携帯電話を調べると、どんな人でも拒絶反応が出るそうです。ケータイはとても体に悪いようですね。



訳者のクセの強さに困惑しながらも、著者の真摯な人生観が横溢した本書を読み終え、わたしは自分自身を顧みました。そして、日々の暴飲暴食で体が緩みきってしまった姿を鏡で見ながら、自己嫌悪に陥りました。「せめて、体重をあと5kg落としたい!」と思ったわたしの目に、「14日で体重5kg減、そして世界制覇――」という本書の帯のコピーが飛び込んできました。別に「世界制覇」はできなくともよいから「14日で体重5kg減」を切実に希望します。本書の最後にはレシピや食品ガイドも掲載されているので、ぜひ試してみたいと思います。著者も「私がこの本を書こうと思ったのは、私ならあなたの肉体だけでなく人生すべてを変えられる――それもたったの14日間で――と知っていたからだ」と語っていますし・・・・・・。


同じ編集者なのだから、売れ行きもあやかりたい!



ともあれ、本書はアマゾンの「スポーツ」カテゴリの第1位を独走し、アマゾン総合でも上位のベストセラーです。わがホームグラウンドである三五館からベストセラーが生まれて嬉しい限りです。本書の編集者である「出版界の青年将校」こと中野長武さんは、『唯葬論』の編集者でもあります。
どうか、わたしの最新刊も本書にあやかって多くの読者を得ることを願っています。中野さん、素晴らしい本をプレゼントしてくれて、ありがとう!


出版界の青年将校」こと三五館の中野長武さん



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年7月20日 一条真也