京都の朝

一条真也です。
今朝、JR京都駅に隣接したホテルで目覚めました。
客室のカーテンを開くと、目の前が京都タワーでした。
京都タワーの背後には山々が連なっています。
改めて「京都は盆地なのだ」と理解できました。


ホテルの客室から見えた京都タワー



ブログ「東日本大震災関連シンポジウム」で紹介したように、昨日は連携研究員を務める「京都大学こころの未来研究センター」が主催するシンポジウムに参加し、最後は発言もさせていただきました。
シンポジウムの後は、近くの居酒屋で打ち上げが行われました。
わたしは鎌田東二先生や玄侑宗久先生の向かいの席に座らせていただき、さまざまな話題について意見を交換させていただきました。まことに知的刺激に満ちていて楽しい時間でした。その後は、鎌田先生と近藤高弘さんの2人の義兄弟とともにカラオケ店を訪れ、夜遅くまで歌いまくりました。


シンポジウムの打ち上げで玄侑宗久先生と



朝一番でパソコンを開くと、玄侑先生からメールが届いていました。
「昨日は刺激的な時間をありがとうございました」からはじまって、芥川賞作家らしい素晴らしい名文でシンポジウムの感想などが綴られていましたが、「今日はこれから建仁寺に行ってまいります。朝の坐禅を終えた人々に話をしてきます」という一文がありました。さすがですね。
驚いたのは、このメールの受信時間が5時41分だったということです。昨夜はけっこうお酒を召し上がっておられて、かつ遅くまで起きておられたご様子なのに、こんなに早起きして、しかもこれから早朝講演をされるとは!
わたしは、「現役の禅僧はやっぱりすごいなあ!」と思いました。


玄侑先生から頂戴した「東天紅



その後、わたしは朝食会場である和食店に行ったのですが、外国人観光客をはじめとした多くの人々が行列を作っていました。わたしは「これは、待つ時間がもったいないな」と思って、いったん部屋に戻り、ブログを書いていました。約1時間後にチェックアウトを済ませた後、再び和食店を訪れました。席に着くと、隣の席に玄侑先生が座っておられたので驚きました。
聞くと、健仁寺での講演を終えられて食事を取られているとのこと。関係者らしき方もご一緒でした。わたしは御縁を喜びながら、「早朝のメールには驚きました」と申し上げると、玄侑先生はニッコリ笑われました。
そして、わたしに「東天紅」という小説を「ぜひ、お読み下さい」と言われて手渡して下さいました。「文學界」2014年3月号に掲載された作品だそうですが、12ページほどなので帰りの新幹線の中で読ませていただきます。
玄侑先生、嬉しいです。どうも、ありがとうございました。わたしも、もうすぐ発売される拙著『永遠葬』や『唯葬論』を送らせていただきます。


永遠葬

永遠葬

唯葬論

唯葬論

玄侑先生といえば、昨日京都へ向かう新幹線の中で読んだ『寺院消滅』鵜飼秀徳著(日経BP社)に登場しておられました。
同書は、人口減に伴って衰退する寺院経営の現状を、ビジネス誌記者がレポートする傑作ノンフィクションです。同書には「『坊主丸儲け』『寺は金持ち』というイメージは強いが、日本のお寺は、かつてないほどの危機に瀕している。菩提寺がなくなり、お墓もなくなってしまった――こんな事態が現実になろうとしている」と書かれています。
また同書の「解説」では、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏が「宗教が衰退しているのは、死に対する意識が変化しているから、と私は見ている。葬儀を行わず、墓をつくらない人が増えているのは、死に対する意識の変化だ。生のみを追及して、死は無意味であるという発想は間違いだと思う」と述べています。この佐藤氏の指摘は核心を衝いていますね。


寺院消滅

寺院消滅

この『寺院消滅』について玄侑・鎌田の両先生とも語り合ったのですが、鎌田先生は「寺院消滅だけじゃなくて、神社消滅も起こるよ。だって、氏子が減っていく一方だから」と言われていました。
しかしながら、消滅するのは地方の小さな寺院や神社の話です。観光名所となっている有名な寺院や神社の人気は衰えません。わたしは宿泊したホテルのロビーにも数多くの外国人観光客の姿がありました。きっと清水寺金閣寺平安神宮などを訪れるのでしょう。そういえば、最近も「世界一行きたい場所」に京都が選ばれたとか。


ホテルのロビーには外国人観光客がいっぱい



昨日のシンポジウムの終わりに鎌田先生が「なぜ、お寺は拝観料を取るんでしょうね? 神社は取らないのに」と言われていたことを思い出しました。
日本人の宗教意識は変化していますが、その根底には佐藤優氏の言われるように「死に対する意識の変化」があります。わたしは、日本人の「死」の未来を見つめながら新しい「葬」の形を提案していきたいと思います。


沖縄の台風が心配です



テレビをつけると、沖縄を台風9号が直撃している様子が映し出されていました。那覇や石垣も暴風雨に見舞われており、心配です。
ブログ「久高オデッセイ」で紹介した映画では、久高島に襲来した台風の場面が延々と続いたことを思い出しました。あのような激しい台風に象徴される自然現象が「カミ」の原形をつくったような気がします。


「久高オデッセイ」イベントの打ち上げで鎌田東二先生と



あの映画の上映会は鎌田先生が理事長を務める東京自由大学が総力を挙げたイベントでした。東京で「自由」を謳い、京都で「未来」を見つめ続ける鎌田東二先生はやはり凄いです。もうすぐ、鎌田先生との共著『満月交遊 ムーンサルトレター』上下巻(水曜社)が刊行されます。お楽しみに!



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年7月10日 一条真也