「曽根崎心中」

一条真也です。東京に来ています。
25日は朝から下北沢の劇場に向かいました。ブログ「古事記〜天と地といのちの架け橋〜」で紹介した東京ノーヴィレパートリーシアターの舞台を鑑賞するためです。演目は近松門左衛門原作の「曽根崎心中」でした。恋に殉じた男女の実話を元に描かれたあまりにも純粋な愛の物語です。



下北沢駅に降り立ちました

下北沢の街のようす

劇場の旗を見つけました!



じつは、この2月、今年で25年目を迎えた下北沢演劇祭の出展舞台として、東京ノーヴィレパートリーシアターではノーベル賞作家のサミュエル・ベケット作「ゴドーを待ちながら」(2月18日〜22日)と、“日本のシェイクスピア”と言われる近松門左衛門作「曽根崎心中」(2月25日〜3月1日)という東西の演劇史に残る二大名作を2週間に渡って上演しています。


東西の演劇史に残る二大名作を上演



この2つの作品を結びつけるテーマは「生」と「死」です。
わたしは、何度も劇団の方々から「天才作家が創り上げる作品世界の中で、舞台上で死と向き合う生身の人間達の物語を目撃することで、死について考え、また生と向き合う機会をお持ちいただければ」というお誘いを受けていたのですが、どうしても日程が合いませんでした。それで、その旨をお伝えしたところ、芸術監督で、ロシア功労芸術家のレオニード・アニシモフ氏が「それなら、一条さんのために25日の午前中から『曽根崎心中』を上演しましょう」と言って下さったのです。わたし1人のための演劇上演というお話に仰天し、丁重に辞退を申し上げたのですが、「そう言わずに、ぜひ。本番直前の最後の通し稽古を兼ねているので、ご遠慮なく!」というアニシモフ監督のお言葉に甘えることにしたのです。


公演前にアニシモフ監督と


とはいっても、本当にわたし1人というのは気が引けるので、大の演劇好きで知られる「出版寅さん」こと内海準二さんを一緒にお誘いしました。わたしたちは赤坂見附で待ち合わせして、そのまま下北沢にある東京ノーヴィレパートリーシアターの劇場へ向かったのです。


公演チラシより

公演チラシの裏



曽根崎心中」は元禄16年(1703年)に実際に起きた心中事件をもとに、1ヵ月で近松門左衛門が書き下ろし、上演された作品です。「心中もの」ブームの皮切りとなり、実際に心中事件が多発したそうです。江戸幕府享保8年(1723年)には心中ものの上演・刊行を禁じたほどであったとか。この日、わたしたちが鑑賞した舞台は、2007年、2008年のロシア、韓国で開催された国際演劇祭に招聘され好評を博した作品の再演とのこと。


曽根崎心中」の【あらすじ】は以下の通りです。
天満屋の遊女お初は観音巡りの最中、深く言い交わした仲の醤油屋の手代徳兵衛と再会する。音信が途絶えたことを、恨み泣かれる徳兵衛は、そのいきさつを話し始める。親方から勧められた結婚を断ったところ大坂追放を言い渡され、おまけに継母が勝手に受け取っていた持参金の返済を求められた。やっとの思いでそれを取り返したものの、今度は友人九平次に一生の頼みと頭を下げられ、その金を貸してやることになった。しかし、その九平次に騙され貸した金は返っては来ず、おまけに悪人扱いされ面目を失った徳兵衛は身の潔白を証明するために自害をほのめかす。その夜、死装束をまとったお初と徳兵衛は手を取り合い、来世での夫婦の契りを交わしながら梅田橋を渡り、曾根崎天神の森へ辿り着く」


東京ノーヴィレパートリーシアター曽根崎心中」より

東京ノーヴィレパートリーシアター曽根崎心中」より

東京ノーヴィレパートリーシアター曽根崎心中」より



曽根崎心中」は素晴らしい舞台でした。
お初を演じた中澤佳子さんが美しかったです。
他の役者さんたちの演技もみんな素晴らしかった。
約1時間半、わたしの心は異界にトリップしました。
内海さんはいつも「映画と違って演劇は生モノだから当たるよ」と言っていますが、本当にそんな感じです。東京ノーヴィレパートリーシアターでは、すでに何度も「曽根崎心中」を上演していますが、数多くの稽古と上演を経て作品そのものが変化成長しているそうです。同劇団の本拠地下北沢の劇場で代表的舞台を観ることができて幸せでした。


東京ノーヴィレパートリーシアター劇場前で



観劇の後、わたしは急いで神谷町へ向かいました。
15時15分から、互助会保証株式会社の監査役会、16時からは取締役会に出席するためです。互助会保証は冠婚葬祭互助会を支える会社ですが、「冠婚葬祭」も「演劇」もともに人の心を豊かにする文化です。わたしは、儀式こそは「文化の核」であり、日本人にとって冠婚葬祭互助会は不可欠であると信じています。また、「曽根崎心中」の舞台には「愛」と「死」が描かれ、冠婚葬祭人であるわたしに多大なインスピレーションを与えてくれました。アニシモフ監督をはじめ、東京ノーヴィレパートリーシアターのみなさまに心より御礼を申し上げます。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年2月26日 一条真也