未来医師からのメール

一条真也です。
ブログ「かみさまシンポジウム」で紹介したように、11月3日に東京・永田町の星陵会館において画期的なシンポジウムが開催されました。わたしも登壇者の1人として、「冠婚葬祭の現場より」をテーマに話しました。


未来医師イナバ」こと東京大学病院の医師である稲葉俊郎先生が主宰する「未来医療研究会」のイベントだったのですが、その稲葉先生から以下のようなメールが届きました。ご本人の了承を得たので、紹介いたします。
「11/3のシンポジウムのご参加有難うございました!
一条さんのご参加で、厚みのある深い会になりました。
参加者からも、絶賛の嵐でした。今回、未来医療研究会としては初となる、一般の方もお誘いしました。400人規模で行うのは大変な面もありましたが、医療の世界に大きな爪痕を残すような楽しい会になったと思います。
これも、一条さんのご参加のおかげです。
本当にほんとうに感謝しております。
小倉から来て頂き、ほんとうに嬉しかったです」


シンポジウム登壇者全員による座談会のようす



この稲葉先生からのメールを読んで、わたしは温かい気持ちになりました。
稲葉先生に対して、わたしは以下のようなメールを返信しました。
「メール、ありがとうございます。わたしのような門外漢が医療関係の方々の中に混ざるのはどうかとも思いましたが、楽しい会でした。
高濱さんの爆笑漫談とペアにされたのは、正直焦りましたが・・・・・・(笑)
それにしても、よく医師としての激務をこなされながら、あれだけのイベントを成功させましたね。稲葉先生には、やはり(矢作先生とはまた違った)大きな役割があるのだと思います」


わたしは「教育、冠婚葬祭の現場より」に登壇



さらに、それを読んだ稲葉先生から以下の返信が来ました。
高濱さんとのペア、、、、お二人が自由闊達に、それぞれ自分の意見を述べる感じが、聞いていてとても楽しかったですよ!(^^(やりにくかったのならスミマセン・・・見ている側としてはいいバランスだなぁ、と見ていました。)
今、自分は安田登先生のところで能を習っていますが、能と狂言は常にペアで行われますよね。能は常に死者への鎮魂なので必然的に重いものですが、狂言は、常に能のテーマをパロディ化して、能の重いテーマから少し客観視して余裕を持って見ることを促します。そういう意味で、おなじ事柄を能と狂言で見ているような気持ちになりました」


はなまる学習塾・高濱正伸氏と



わたしは、このメールを読んで、「うーん」と唸りました。
なるほど、能と狂言か・・・・・・うまいこと言うなあ!
さすがに東大医学部のご出身だけあって、稲葉先生は本当に頭が良い方です。彼のブログなどでその言語感覚に触れるたびに、いつも感心させられます。でも、能と狂言なら、先にわたしが発言して「死者への鎮魂」を語ったほうが良かったかも?(笑)



日曜日はお休みなのでしょうか、わたしへのメールの直後、稲葉先生はご自身のブログ「吾 日常」を更新され、ずばり、「映画『かみさまとのやくそく』の上映会+シンポジウム」という記事がアップされました。
そこで、稲葉先生は「とてもいいイベントだった。数日の間は温泉に入っているようなホクホク、ポカポカした気分で日々を過ごした。日々の激務としての日常に戻りながらも、心地良い空気に包まれているような不思議な感覚。当日は色々な人から助けて頂き、むしろみなさんへの感謝の思いの方が強く溢れた。」と書かれていました。素敵なコメントですね。


(撮影:松岡みのり)



そのブログの中で、「やっぱり笑顔に勝るものはないなー。(^^)」という稲葉先生のコメントの後に、シンポジウム当日の写真が数点掲載されています。わたしの笑顔の写真も2点掲載されていましたが、なかなかいい感じ。明らかに実物よりも良く撮られています。(微苦笑)
それもそのはず、これらの写真は松岡みのりさんというプロカメラマンの方がボランティアで撮って下さったそうです。じつは、当日わたしは檀上からカメラを構えた松岡さんの姿が見えました。そのとき、「おお、キレイな女性が写真を撮っているな」と思った覚えがあります。
松岡さん、どうも、ありがとうございました!
当日の写真は、他にも多くあるとのことです。
facebookの未来医療研究会内のグループにアップされています。
しかしながら、facebookしていない人でも見れるように、稲葉先生が以下の場所に一時的にアップして下さいました。どうぞ、御覧下さい。
「かみさまとのやくそく」シンポジウム写真は、ここをクリックして下さい


(撮影:松岡みのり)



さて、9日の日曜日、稲葉先生とは続けてメールのやり取りをしました。
ブログ「記憶と真実」にも書いたように、もうすぐ渡部昇一先生との対談本『永遠の知的生活』(実業之日本社)が刊行されますが、同書の中で「記憶」というものが最重要テーマになっています。渡部先生は「記憶こそ人生である」と喝破されていますが、わたしもまったく同意見です。



いま、「胎内記憶」や「臨死体験」が大きな関心を読んでいますが、その正体は「フォールスメモリー(偽の記憶)」であるという説があります。わたしは基本的に「霊」や「死後の世界」の存在を信じている人間ですが、「フォールスメモリー」についても多大な関心を抱いています。そのあたりを、ずばり稲葉先生に問いかけ、感想を求めたのです。



すると、稲葉先生からは以下のようなメールが返ってきました。
「記憶に関してですが、虚偽記憶というのはあると思うのですが、ただ、それは<何か客観的で普遍的なほんと>があるという前提での話しかと思うのですが、自分はそういうものはないと思っているのです。
それよりも、自分は、主観的にはすべてが本当だ、と思っているのです。
ですから、嘘も、その人にとっての主観的なほんとうのこと、なのだと。
それは常に状況や時代によって移り変わるもので、その現実の層のどのRealityに焦点を当てるかで、嘘にもほんとうにもなりうるもので・・・。
そうして、その人それぞれのRealityが作られていき、それが重なっているのがこの現実。ある時に、それは人から嘘と呼ばれたり、本当と呼ばれたりするけれど、それも全部ふくめ、その人にとってすべてが本当の世界。
虚偽記憶も含めて、それはその人の脳が何かを守ろうとして行った最善の策だと思うので、それをありのまま受け入れることが、医療において重要なことだと思い、自分はジャッジしないようにしています。だから、自分は相手の言っていることが嘘かホントか、という検証はせず、すべてその瞬間にとって何らかの意味で最善の言葉であり、そこに深い意味や可能性を見いだしていく、というのを医療の根本姿勢にしているのです。それこそが、人間の在り方そのものだ、と思っています。村上春樹1Q84の冒頭も、自分はそのことがKeyとなって出てくるように思ったのです」


シンポジウムの懇親会場で、稲葉先生と



わたしは、これを読んで再び「うーん」と唸ってしまいました。
医師としての真摯な姿勢はもちろんですが、彼の問題意識はもはや「人間とは何か」という全体論なものに向かっており、その延長線上に「医療を芸術に高めたい」という彼の志があるように思えたのです。やはり、稲葉先生には「未来医師」としての大きなミッションがあると思います。いま処女作を執筆されているそうですが、刊行されるのが本当に楽しみです。ということで、稲葉先生、今後ともよろしくお願いします!



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2014年11月10日 一条真也