2000人の死を見た僧侶

一条真也です。
東京に来ています。「広島原爆の日」である6日、13時から新橋で全互協の理事会が開催され、わたしも参加しました。その後、いくつかの打ち合わせをした後、夜は都内ホテルで素晴らしい方にお会いしました。


中下大樹さん



発端は、わたしの公式HPに「突然のメールをお許しください」という1通のメールが届いたことでした。僧侶の中下大樹という方からでした。
メールには、「私は中下大樹と申します。在家出身ですが、浄土真宗の僧侶を持っており、震災後に『悲しむ力〜2000人の死を見た僧侶が伝える30の言葉〜』という本を書きました。その私の拙い本を、一条さまがご自身のブログ・著書等で取り上げて下さっているのを拝見し、嬉しかったです。本当に、ありがとうございました」と書かれていました。


悲しむ力 2000人の死を見た僧侶が伝える30の言葉

悲しむ力 2000人の死を見た僧侶が伝える30の言葉

わたしは、ブログ『悲しむ力』で紹介した本のことを思い出しました。
この本は、ホスピス・震災・孤立死・自殺などの現場から「それでも人生を肯定する希望」を探し出す内容で、素晴らしい名著です。
一読して感銘を受けたわたしは、『のこされたあなたへ』(佼成出版社)および『死が怖くなくなる読書』(現代書林)でも紹介させていただきました。



中下さんは1975年生まれ、大学院でターミナルケアを学び、真宗大谷派住職の資格を得たそうです。その後、新潟県長岡市にある仏教系ホスピス(緩和ケア病棟)にて末期がん患者数百人の看取りに従事されたそうです。
退職後は東京で超宗派寺院ネットワーク「寺ネット・サンガ」を設立し、代表に就任。現在は寺院や葬儀社、石材店、医療従事者、司法関係者、NPO関係者などと連携し、「駆け込み寺」としての役割を担っているとか。



中下さんから頂戴した名刺の裏には、以下の肩書きが書かれています。
真宗大谷派 祐光寺僧侶
●「超宗派寺院ネットワーク「寺ネット・サンガ」代表
●生活困窮者の葬送を支援する「葬送支援ネットワーク」代表
●いのちに関する包括的支援「いのちのフォーラム」代表
一般社団法人「家族のこと」理事
一般社団法人「終活カウンセラー協会」全体監修
原子力行政を問い直す宗教者の会・東京世話人


無縁社会から有縁社会へ

無縁社会から有縁社会へ

中下さんは、宗教学者島薗進先生から学ばれたそうです。
ブログ「島薗進先生からのメール」にも書いたように、島薗先生は日本における死生学の第一人者であり、現在は上智大学グリーフケア研究所の所長を務められておられます。わが義兄弟である「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生とも非常に親しいことで知られています。わたしは、かつて島薗・鎌田両先生とともにブログ『無縁社会から有縁社会へ』で紹介した本を出させていただきました。中下さんはこの本を島薗先生からプレゼントされ、読まれたそうです。中下さんが島薗先生の教え子であると知り、わたしは「ああ、やはり、この世は有縁社会だなあ」としみじみ思いました。




わたしは最近、「これでいいのか日本仏教?」と思うことがしばしばあり、「グリーフケア」を中核とした仏教アップデートのお手伝いをしたいと考えています。ですので、中下さんのような心ある僧侶と知り合いになれて嬉しいです。ぜひ、お互いに情報交換や意見交換をしながら、ブッダが説いた「慈しみ」のある社会づくりに取り組みたいです。また、中下さんの活動と共通点の多い「隣人愛の実践者」こと奥田知志さんもご紹介したいです。


これからも、よろしくお願いします!



実際にお会いした中下さんは、とても感じの良い方でした。もちろん真摯な宗教家だということはわかるのですが、意外にも(失礼!)笑顔がチャーミングな方でした。「悲しむ力」は「微笑む力」にも通じているのでしょう。
かなり以前、「笑う門には福来る すべての人に笑顔を!」にも書きましたが、仏像は、みな穏やかに微笑んでいます。これは優しい穏やかな微笑みが、人間の苦悩や悲しみを癒す力を持っていることを表しています。わたしは、紫雲閣のスタッフにも「笑顔を大切に」といつも言っています。葬儀だからといって、暗いしかめっ面をする必要などまったくないのです。



笑顔の素敵な中下さんはわたしの一回り下のウサギ年だそうです。
なんだか、こんなところにも御縁を感じますね。
今日は都内ホテルのティー・ラウンジで会いましたが、ぜひ次回は小倉のサンレー本社でお会いしたいです。小倉紫雲閣月の広場、そしてムーンギャラリーなどにもご案内して、感想をお聞きしたいと思います。「広島原爆の日」に素晴らしい出会いがあったのは、もしかすると死者たちからのプレゼントかもしれません。中下さん、これからもよろしくお願いします。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2014年8月7日 一条真也