都議会ヤジに思う

一条真也です。
いま、羽田空港のラウンジです。これから北九州へ帰ります。
今朝の新聞やニュースで知ったのですが、東京都議会で男性議員がセクハラともとれるヤジを飛ばした問題が幕引きしましたね。都議会は最終日の25日、他のヤジを飛ばした議員の特定を求める決議案を否決したのです。


朝日新聞」6月26日朝刊



一連の報道に接して、わたしが改めて思ったのは国会、都議会、県議会、市議会、町議会、村議会などに関わらず、ヤジなどという下衆な行為は本当に下らないということ。わたしはもともと政治というものに関心が薄いのですが、特に議会政治とか政党といったものには存在意義を感じにくいです。だいたい、議会で他党の議員が発言している際にヤジを飛ばすのは日本が一番激しいそうではないですか。他人が発言しているときに、それを清聴するのは「礼」の問題です。政治とか政党とか、そんなものは関係ない。「礼」のほうが、人間としてもっと根本的に、そして決定的に重要な問題です。小学校の頃、授業で他の生徒が発表しているときに私語をしたりすると、先生から叱られました。そんな当たり前のことを大の大人、しかも議員バッジをつけた人間が守れないようでは、同じ日本人として恥ずかしい限りです。



議会でヤジを飛ばすのは、自民党だけではありません。
ほとんどの日本の政党では、新人議員がヤジを担当します。
しかし、こんな下品な慣習は日本の国際的な評価を下げるだけですから、これを機会に議会でのヤジを全面禁止すればいかがでしょうか。今回の都議会での一件は良い契機になると思います。また、東京オリンピックを控えて、国際社会に恥じない日本をアピールする上でも必要なことではないでしょうか。24日、ヤジを飛ばされた塩村文夏都議が日本外国人特派員協会で会見しましたが、ロイターをはじめとする海外の記者たちは一様に「日本は遅れている」といった厳しい意見を述べました。


朝日新聞」6月25日朝刊



各党でヤジを担当している新人議員たちも、「志をもって政治家になったのは良い社会をつくるためです。ヤジを飛ばすためではありません」とヤジなど断固拒否すべきです。企業でも「ブラック企業」などという考え方が普及してルールを守らない企業、モラルのない企業は弾劾されています。ぜひ政党も、企業と同じ姿勢で国民に臨むべきではないでしょうか。このままでは、日本は下品な「礼のない国」になってしまいます。



もちろん、鈴木章浩都議の「早く結婚したほうがいい」をはじめ、都議会ヤジの内容にも大いに問題があります。わたしには2人の娘がいますし、わが社には多くの女性社員たちが頑張ってくれています。女性に対する蔑視や差別は絶対に許すことができません。その一方で、娘たちには良い男性に出会って結婚してほしいと思うし、孫を産んでほしいとも思います。
今回の都議会ヤジをめぐる一連の騒動で、「日本社会がセクハラに厳しくなった」という意見も多いようです。以前も、この手のヤジは数えきれないほどあったでしょう。しかし、言われた当事者である塩村議員が美人であったことも手伝って、今回は大問題になりました。



女性は結婚したほうが幸せなのか、子どもを産んだ方が幸せなのか。
これは各人の意見があるでしょうから、他人が口を出すのは大きなお世話です。まあ、親とか身内ならば、娘に対して「早く結婚したほうがいい」と言うのは当たり前ですし、息子夫婦に対して「早く孫の顔を見せておくれ」というのも当然です。わたしが学んでいる儒教は結婚や出産に価値を置いており、わたしの本業である冠婚葬祭業もその立場に立っています。かつての日本には、そういったことを他人が口に出さなくても、結婚や出産を促すような文化装置がありました。見合いや仲人といった制度もその1つかもしれません。そのようなデリケートな問題を口に出しては終わりです。まあ、なんというかルール違反であると同時に「野暮の極み」ですね。


塩村議員は、日本テレビ系の恋愛トークバラエティー番組「恋のから騒ぎ」に出演していたことがあり、当時の軽率な発言が問題視されています。他にも、いろいろと物議を醸している“痛い過去”があるのは事実です。しかし、彼女はグラドル出身の美貌だけでなく、過去に放送作家をしていたというだけあって知性も感じさせる人ですね。ただ残念なのは、例のヤジ場面を動画で確認しますと、ヤジが発せられた瞬間、彼女は笑っています。もちろん、おかしくて笑っているのではなく、嫌なことを言われての苦笑いですが、ここは本当は怒りを表現してほしかった。あのとき彼女が笑って済ませたことによって、あのヤジはスルーされた印象がありました。それを後から大問題になったので、自民党も戸惑った部分があると思います。



あの瞬間、塩村議員は発言を中断して、「いま、なんて言いましたか?」「いまの言葉は、どういう意味ですか?」と問うべきだったと思います。もちろん、いつもそんなことをしていたら議会が先に進まないという意見もありますが、あのヤジは議会を止めてもいいぐらいの問題発言だったのではないですか。塩村議員は、あのとき、苦笑いでなく、血相を変えて怒るべきでした。そうすれば、あの下らないセクハラ発言はもっと大問題になって、今回のような中途半端な幕引きは出来なかったのではないでしょうか。
わたしも最近、看過できない発言に接し、二度ほど怒りを見せました。
詳しくは、ブログ「仏教連合会パネルディスカッション」ブログ「国際情報同好会講演」をお読み下さい。それを「大人気ない行為だった」と反省する気など、まったくありません。あのとき、わたしには守るべきものがあり、相手がそれを侵害してきたから本気で怒ったのです。



いま、ロックバンド・氣志團綾小路翔さんのツイッターが話題になっています。彼はフジテレビ系月9ドラマ「極悪がんぼ」の主題歌を担当したそうですが、主演は女優の尾野真千子さんでした。綾小路さんは、同ドラマの打ち上げに「サプライズGIGを強行して参りました。緊張しつつも、最高に楽しみました」と綴り、「最後にご挨拶をした尾野真千子さんが『楽しかった。でも辛かった。苦しかった。悔しかった。数字じゃないと慰めて貰ったけれど、視聴率を取れなかったのは主演の責任』と涙を流した」と尾野さんが悔し涙を流したことを報告したのです。



涙を流す尾野さんを目の当たりにした綾小路さんは、「全身が震えた。この方の演技力は以前からズバ抜けていたけれど、意識の高さが尋常ではない。感服。負けていられない」と刺激を受け、「尾野真千子さん、本当に男前・・・いや、女前だった。『喧嘩上等』の世界観にピッタリの人だった。俺なんか男のくせに、いつもイジイジしてやがって・・・。よし頑張ろう。猛烈に頑張ろう」と書きました。この綾小路さんのツイッターの内容に対する反応が賛否両論でした。結局は綾小路さんが謝罪されたそうですが、わたしは素晴らしいメッセージだと感じました。
こんな心あるメッセージを誤読するほうがおかしい!



喧嘩上等・・・・・・いいじゃないですか!
わたしも、これまでずっと紳士であろうとするあまり、また会社を守ろうとするあまり、他人との衝突を避けてきた部分がありますが、本当に相手が間違っていると思うときは怒るべきであるし、喧嘩するべきであると思います。
人間、守るべきものがあるときは、命をかけて戦わなければなりません。
かの上杉謙信公は「非道を知らず存ぜず」と述べましたが、それは自分自身が非道なふるまいをすべきではないという戒めであって、相手の非道な行いにも目をつぶるという意味ではありません。実際、謙信公は非道な相手には直情的に怒りを示したと伝えられています。



子どもの頃からケンカ太郎だったわたしは、小学校から高校1年ぐらいまで無数のケンカをしてきました。もちろん、殴ったり蹴ったりの実戦です。そのときに悟ったことは、「本気にはかなわない」ということ。ケンカというのは、腕力が強いとか格闘技の経験があるとかではなく、本気で怒っているほうが勝つということです。わたしも、ここ最近、本気で怒りました。これからも、経営においても執筆においても、また人生においても「喧嘩上等」の精神で進んでゆきたいと思います。それでは、これから北九州に帰ります!



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2014年6月26日 一条真也