宇宙葬のカリスマ

一条真也です。
東京に来ています。24日の17時からホテルニューオータニの「ガーデンラウンジ」で、1人のアメリカ人経営者とお会いしました。エリジウム・スペース社のトーマス・シベ(Thomas Civeit)CEOです。


トーマス・シベ(Thomas Civeit)CEO

はじめまして!

トーマスCEOと

固い握手を交わしました



トーマスCEOは、ブログ「宇宙葬」で紹介したアメリカにおける宇宙ビジネスのカリスマです。元NASAの技術者で、なんとハッブル望遠鏡の開発者でもあります。ブログ「宇宙葬の仕掛人」で紹介したエリジウム・スペース社の事業開発担当役員で(株)スペースシフト社長の金本成生さんも一緒で、この日は金本社長に通訳をお願いしました。


金本社長(左)に通訳をお願いしました

インタビューに答えるトーマスCEO



アメリカに本社を置くエリジウム・スペース社は、宇宙葬を今までよりも安く提供し、より多くの人にサービスを届けようとしています。
低価格の宇宙葬アメリカで大ヒット商品となり、昨年ついに日本にも上陸してきました。そのニュースは、昨年10月1日付の「毎日」、「朝日」、「産経」といった各全国紙のサイトでも大きく紹介されています。


宇宙葬を手がけるスタートアップ「エリジウム・スペース」



トーマスCEOは、宇宙に関する情報サイトとして有名な「astropreneur.jp」でインタビューに答えています。その記事の中で、トーマスCEOは「宇宙葬が日本人の葬送の文化にどのような影響をもたらすと考えていますか?」という記者の質問に対し、次のように答えています。
「日本人の宗教観においては仏教というものが大きく影響していると思います。仏教では死後の世界というものに対して既に一定の世界観があります。クリスチャンよりも遺体を大事にするように思われますが、その一方、日本文化では散骨がとても自然に行われています。 実際、私が調査したところ、日本人の中に最も早く宇宙葬を考えた一人がいます。一条真也という作家で、1980年代にとても素晴らしい本を書いています。 彼は日本の葬儀の未来に対してビジョンを抱いていました。死というものを地上から天へと解き放つ時期が来た、と。 死に対する価値観を変えていくという面で、私は彼に共感し『よしやろう』と思いました。人は死後、宇宙や月に行き、意義深く詩的な最期を迎えるということです」


宇宙葬が日本人の葬送の文化にどのような影響をもたらすか?

なんと、わたしの名前が登場!


なんと、ここで「一条真也」という名前が登場したので、非常に驚きました。
そして、しみじみと感動しました。『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』(国書刊行会)の中で、わたしが述べた「死のロマン主義」にNASAの重要人物が共感してくれたという事実に。そして、彼が起業した宇宙葬のビジネスが実際にアメリカで大成功したという事実に・・・・・。


宇宙葬を提唱した『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー



サンレー小倉紫雲閣で葬儀実務を研修した鈴木光さんがハーバード大学大学院在籍中に英文で書いた「葬儀」についての著書で『ロマンティック・デス』を大きく紹介して下さいましたが、それをNASAの関係者が読んだそうです。その中にトーマスCEOもいたわけです。その鈴木さんは現在、オーストラリアのシドニー大学で研究員(死生学)を務められていますが、今回の日本での宇宙葬スタートについての「毎日新聞」の取材に対して、「日米共に、宗教に縛られず自分らしい死への道筋を考える動きが広がっている。その時の新しい選択肢の一つになる」と語っています。


宇宙葬や月面葬について意見交換しました

若き同志と熱く語り合う



トーマスCEOはわたしと固い握手を交わしながら、「憧れのイチジョーにお会いできて光栄です。わたしが宇宙葬ビジネスに進出したのはイチジョーの本を読んだからです。『ロマンティック・デス』には多大な影響を受けました」と言ってくれました。わたしは、昔、メッセージを書いた手紙を入れた瓶を海に流した少年のような心境です。手紙には「死は不幸な出来事ではない」「月を見よ、死を想え」などと書かれ、それが入った瓶は長い年月を経て、アメリカの海岸へと漂着した。それをトーマス少年が拾い上げてくれたように思うのです。そのことをわたしが述べると、トーマスCEOは「Oh! Romantic!」と言われていました。そう、宮沢賢治が言ったように「わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です」ではなくて、「わたくしといふ男はひとりの浪漫野郎です」と言いたい気分です。そんなわたしの浪漫に反応してくれる人が現れて、しかも夢を実現してくれて、本当に幸せです。


エリジウム・スペース社の宇宙葬キットを手に取る

互いに、本とキットを手にして



それにしても、かつては「SF」の世界の話であった宇宙葬が、いよいよ現実的になってきました。宇宙葬とは、いわゆる散骨の形態の1つです。故人の遺骨などを納めたロケットを宇宙空間に打ち上げるというものですが、初の宇宙葬はもう15年以上前に行われました。1997年4月21日、空中発射型ロケットのペガサスロケットによって行われました。このロケットには24人分の遺骨が格納されており、カナリア諸島の上空11kmから発射されました。ロケットは遠地点578km・近地点551kmで公転周期96分の楕円軌道に乗り、2002年5月20日にオーストラリア北部に落下しています。今年10月には、エリジウム・スペース社が最初のロケットを打ち上げます。


内海さんより大きなトーマスCEO



今日は、『ロマンティック・デス』の編集者でもある「出版寅さん」こと内海準二さんも同席してくれました。いずれ、内海さんのプロデュースで、トーマスCEOとわたしの対談本が出るかもしれません。また、両者が出演する「宇宙葬」のシンポジウムなども開催されるかもしれません。内海さんは188センチですが、トーマス氏はさらに大きくて190センチとのことでした。内海さんは「最近、『進撃の巨人』などと呼ばれて困惑していたけど、自分より大きい人に会えてビックリしたなあ!」と言っていました。まるで、アンドレ・ザ・ジャイアントに初遭遇したジャイアント馬場のようですね。


最後は、みんなで記念撮影しました



翌25日はパシフィコ横浜で開催される「フューネラルビジネスフェア2014」のセミナーで、わたしが「葬儀イノベーション」について講演させていただくことになっていますが、エリジウム・スペース社の宇宙葬についても紹介する予定です。トーマスCEOをはじめ、金本社長、内海さんも来て下さるそうです。若き同志との出会いに、わたしの胸は高鳴りました。ここから新しい物語が幕を開ける予感がします。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2014年6月25日 一条真也