「熱き心で突っ走れ!」

一条真也です。
13日(日)の午後、北九州芸術劇場で話題の「熱き心で突っ走れ」を鑑賞。演劇と歌謡コンサートによる二部構成のエンターテインメントです。


「熱き心で突っ走れ!」の公演チラシ



最初に、この公演の存在を知ったのは、某新聞の全面広告でした。織田信長小林旭濃姫浅丘ルリ子、斉藤道三を松方弘樹が演じるという広告を見て、わたしは強いインパクトを受けました。たしか3人とも70代のはずです。「人は老いるほど豊かになる」という信条を持っているわたしの心に響くものがありました。しかも、第2部のコンサートでは、あのアキラの歌声も聴けるとあって、「これは、ぜひ行かなければ!」と思ったのです。


北九州劇術劇場の入り口で

劇場ロビーから小倉城が見えます



北九州芸術劇場を訪れたのは、「ブログ「ハートフル・シティ講演」で紹介した自分の講演以来です。雨の中をリバーウォーク北九州まで行き、エレベーターで6階の劇場に向かうと、まだ開場前で多くの人々が待っていました。その客層、年齢層を見て、「サンクスフェスタ」をはじめとしたわが社の高齢者イベントの参考になると直感しました。


信長役の小林旭(公演パンフレットより)



公演パンフレット冒頭には、石田重廣氏(製作総指揮)による「ご挨拶」があります。ここで石田氏は、公演コンセプトを次のように書いています。
「ゆったりと気軽に楽しめる、いわゆる『シニア層』にお楽しみいただける公演が実に少ないのです。また、開催地にいたっても大都市を中心とした大きな街での公演が多く、地方にお住まいの方々にとっては、お芝居に触れあえる『場』が激減しているという、寂しい状況がございます。
お芝居の魅力は一言では言い表せません。しいて言うなれば、目の前の舞台で繰り広げられる、役者さんたちの息づかい、演技から伝わる『生命力』ではないでしょうか。いつか自分もお客様に『生命力』を感じていただける舞台をお届けしたい。そして、年齢とともになかなか会場までお越しいただけないお客様のために、公演を行う私たちからお客様の近くに伺って公演を行いたい、『生命力』を感じていただきたい、そんな『夢』を抱くようになりました。そんな夢をある時、小林旭さん・松方弘樹さんにお話したところ、ご両名ともに即快諾。さらに小林さんのお声がけで浅丘ルリ子さんもご出演いただけることに。なんとも夢のような出演者で長年の私の夢が叶うという、まさに『夢の結晶』が本日ご覧いただく舞台です」


浅丘ルリ子松方弘樹(公演パンフレットより)

チェリッシュや狩人などの歌手も出演!



第1部の芝居は、豪華キャストにより繰り広げられる「戦国の夢追い人 熱き心で突っ走れ!」です。出演は、小林旭織田信長)、松方弘樹斎藤道三)、浅丘ルリ子濃姫)、宮園純子堤大二郎亀石征一郎、大門伍朗、清郷流号、林三重子、坂元亮介、松崎好孝(チェリッシュ)、松崎悦子(チェリッシュ)、加藤久仁彦(狩人)、高道(狩人)、三善英史、保科有里など。


稽古風景(公演パンフレットより)



物語の舞台は戦国時代。若き織田信長を中心に、妻の濃姫、舅の斉藤道三らの人間模様が繰り広げられます。わたしは、昔読んだ司馬遼太郎の『国盗り物語』を思い出しました。この芝居は約1時間半ということで、正直言って、ずいぶんストーリーが性急な印象を受けました。
しかしながら、まあ、そんなことは関係ありません。なんといっても、この芝居はストーリーよりも役者を観るための芝居ですから。
映画「渡り鳥」シリーズなどで日活の黄金時代を支えた小林旭浅丘ルリ子約50年ぶりに共演したことが最大の話題です。また、東映の人気シリーズ「仁義なき戦い」数本で共演した小林旭松方弘樹の共演も目玉です。小林旭は60年におよぶ長い俳優生活の中にあって縁の深いこの2人と初めて同じ舞台に立ったそうです。


稽古風景(公演パンフレットより)



それにしても、小林旭は75歳、浅丘ルリ子は72歳、松方弘樹は71歳と、メインの3人はいずれも70代です。それだけでも驚きですね。
デヴィ夫人浅丘ルリ子と親交があるそうですが、自身のブログ「デヴィの独り言 独断と偏見」の中の「戦国の夢追い人『熱き心で突っ走れ!』」という記事で以下のように述べています。
「70代の旭さん、ルリ子さんが10代の『信長』、『濃姫』を演じましたが役者魂というのでしょうか、旭さん演じる 『信長』は 若さゆえの 荒々しさ、無鉄砲さも表現しながら 演じていらっしゃいましたがあまりに太ってらっしゃり、お顔が大きいので損していらっしゃる感じでした。一方では ルリ子さん演じる 『濃姫』にいたっては純粋で あどけなく かつ 激しい男まさりの 気丈さも持つ 美しいお姫様を とても 素晴らしく 演じていらっしゃいました。松方さんも 舞台出演は13年ぶりだったそうですが『時代劇スター』という言葉が お似合いで 迫真の殺陣、堂々とした風格でこの難しい『道三』役を 松方さんならではのぎらぎらとした 欲望に満ちた『道三』を 迫力いっぱいに演じていらっしゃいました。日本文化の伝統を守る、継承するということも俳優の使命だと おっしゃっていた 旭さんですがまさに この舞台は 時代劇の素晴らしさをあらゆる面で 見ている私たちに 教えて下さった舞台でした。また、まだまだ若い、まだまだやるぞ!といった日本に元気を与えるくらいの熱い熱気も感じられるお芝居でした」



このデヴィ夫人のブログは素晴らしい文章で「熱き心で突っ走れ!」の魅力を語っていますが、小林旭についての「あまりに太ってらっしゃり、お顔が大きいので損していらっしゃる感じでした」というのは笑えますね。(笑)
でも、わたしは太っていて顔が大きい小林旭が最高に魅力的に思えました。松方弘樹だって顔は大きいですが、だいたい舞台俳優というのは顔が大きいほうが良いのです。また貧相な体つきよりも、少々体格が良いほうが好ましいのです。もちろん、遠くの席からでもよく観ることができるのが最大の理由ですが、とにかく最近の「草食系男子」だかなんか知らないが、モヤシみたいな弱っちい野郎が多い中で、大きな腹と大きな顔で堂々と演技をするアキラは最高にカッコ良かったです。いや、ほんとに。
わたしも、けっして細いほうではありませんが、もっとガンガン食って飲んでアキラ兄さんみたいな体型になりたいものです!(微苦笑)


武将姿の俳優さんがパンフレットを販売

武将と記念撮影



第1部の芝居が終わって、30分の休憩がありました。
劇場のロビーでは、武将の姿をした俳優たちが公演パンフレットを販売していました。わたしも1部求めました。1000円でした。


小林旭の手形(公演パンフレットより)

浅丘ルリ子の手形(公演パンフレットより)

チェリッシュの手形(公演パンフレットより)

狩人の手形(公演パンフレットより)


この武将から買ったパンフレット、なかなかユニークです。というのも、出演者の写真とともに手形が1ページを使って掲載されているのです。横綱にも負けない堂々たる体躯の小林旭松方弘樹の手形ならまだ理解できるのですが、なんと浅丘ルリ子の手形にチェリッシュや狩人の手形まであります。これは、ちょっと不思議な感じがしましたね。なんで手形なのよ?(笑)


おみやげに「アキラの飴」を求めました



それから、小林旭のグッズもいろいろ売られており、わたしは「アキラの桜飴」「アキラのゆずきんかん飴」を数個づつ求めました。わが社にはアキラのファンが多いので、配るつもりです。



第2部の歌謡ショー「夢コンサート」もエキサイテングでした。
オープニングでは、いきなり狩人の2人が登場。名曲「あずさ2号」を歌いました。2人のスタイルの良さもさることながら、その歌の上手さにビックリ! 最近、小倉にある「穂」という店で「あずさ2号」のカラオケを聴いたばかりですが、やはりプロが歌うと、素人の歌とはまったく違いますねぇ。はい。
とにかく狩人はむちゃくちゃカッコ良かったです。



続いて保科有里が「さくらの花よ泣きなさい」を歌った後、三善英史が登場。「雨」を聴いたときは、なつかしさで胸が熱くなりました。
かつて「小倉の止まり木」と呼んでいた「レパード」というスナックでわたしが初めて歌ったのがこの「雨」だったのです。三善英史ももう60代。9年間もお母さんの介護をされていて、その経験談を本にまとめたそうです。
「雨」に続いて歌った「円山・花街・母の町」も哀愁がありました。



それから、チェリッシュの2人が登場しました。
大ヒット曲の「てんとう虫のサンバ」を歌いました。この2人も60代だそうですが、年齢相応の松崎クンに比べて悦ちゃんの若いこと!
かつて、日本中の結婚披露宴では「てんとう虫のサンバ」が歌われました。友人たちが「口づけせよと、はやし立て♪」というフレーズを新郎新婦がキスするまで何度もしつこく繰り返すのです。もう30年以上前のブームですが、わたしはこの歌を聴きながら、「あの頃は、互助会の冠婚部門も全国的に元気だったなあ」などと思っていました。
まるで「夫婦漫才」のような松崎夫妻のおしゃべりの後は、「白いギター」が歌われました。本当は、わたしは「なのにあなたは京都へいくの」が聴きたかったのですが・・・・・・。


松方弘樹の手形(公演パンフレットより)



それから、松方弘樹がダンディなスーツに開襟シャツのスタイルで登場。
ムード演歌のメドレーを歌いましたが、その歌唱力は素晴らしいものでした。本人は「ボクは歌が苦手なのよ」と言っていましたが、いやいや、そのへんの歌手よりもずっと上手かったです。
歌の合間には、軽快なトークで会場を沸かせました。いやあ、松方弘樹トークがこんなに面白いとは思いませんでした。マグロ釣りの話も興味深かったです。また、客席に降りて行って、多くの観客と握手をしていました。サービス精神のある人です。強面の印象もある松方弘樹ですが、「これぞエンターテイナー!」という感じでしたね。この人は、昔も今も、夜の蝶にすごくモテるでしょうねぇ・・・・・・。



そして、いよいよ大トリの小林旭の登場です。
ペパーミント・グリーンの衣装に身を包んで、最初に「ダイナマイトが百五十屯」を歌いました。その後、「自動車ショー歌」「アキラのダンチョネ節」「アキラのズンドコ節」をはじめとしたヒット・メドレーを披露。いやあ、やっぱり、むちゃくちゃ歌が上手いです! 「ズンドコ節」なんか氷川きよしよりもずっと味がある。「さすがはオリジナルだ!」と感心しました。
アキラはトークも洒脱で、小倉の思い出などを語ってくれました。
キャバレーの「月世界」とか「小倉日活ホテル」といった懐かしい名前も飛び出しました。あの頃の小倉には活気があったようですね。



それから、共演の浅丘ルリ子をステージに呼び込み、2人で思い出話をしました。日活で共演していた2人ですが、当時の浅丘ルリ子は超売れっ子で、石原裕次郎赤木圭一郎とも共演していたそうです。最初、舞台に浅丘ルリ子が登場したとき、「マイケル・ジャクソンみたいだな」などと失礼なことを思ったのですが、かつての彼女は天使のように美しかったのです。林真理子の『RURIKO』(角川文庫)を読むと、当時の日本人にとって彼女がいかに「美」のシンボルであったかがよくわかります。浅丘ルリ子も歌いましたが、彼女の歌は初めて聴きました。乙女チックで初々しい歌でした。

RURIKO (角川文庫)

RURIKO (角川文庫)

浅丘ルリ子が舞台を去った後、アキラは名曲「昔の名前で出ています」を歌いました。わたしはこの歌が好きで、よくカラオケでも歌ったものです。
「ハマの酒場に戻ったその日から」という歌詞を「小倉の酒場に戻ったその日から」と替え歌にしてくれたのも嬉しかったですね。それから、新曲の「ひとりの女に」(75歳で新曲を発表するのもすごい!)を披露した後、阿久悠が遺していった「素晴らしき哉人生」という歌を歌いました。わたしは初めて聴きましたが、文字通りに素晴らしい歌でした。自分の人生を肯定的に回顧する内容で、葬儀の場などで流すのに最高だと思いました。



そして、最後は名曲「熱き心に」が歌い上げられました。
小林旭の声の若さには驚かされましたね。艶も張りもあり、会場中に響き渡っていました。特に、「熱き心に」は声量豊かに高音で歌い上げられ、聴いていて大きな感動をおぼえました。
小林旭のスケールの大きな生き方をイメージして阿久悠は「熱き心に」を作ったそうですが、本当に素晴らしい曲です。この歌を歌っているときにアキラは最高にカッコ良かったです。かつては「マイトガイ」と呼ばれましたが、「男の中の男」というか、とにかく言葉では言い表せない魅力があります。さすがは、天下の美空ひばりが惚れただけのことはあります。
ということで、ハードスケジュールの毎日ですが、お芝居と歌謡ショーで束の間の休息を楽しむことができました。14日は朝一番で東京へ飛びます。北九州空港でアキラに会えないかなあ?


夢コンサート(公演パンフレットより)



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2014年4月14日 一条真也