笑っていいとも!グランドフィナーレ

一条真也です。
わたしは基本的にテレビを観ない人間で、特にバラエティ番組はまったく観ないのですが、2014年3月31日の夜は「笑っていいとも! グランドフィナーレ」を観ました。その日の昼に32年間にわたって放映された長寿番組が最終回を迎えました。そして、その夜に記念の特番が組まれたのです。


「スポーツ報知」4月1日号

笑っていいとも!グランドフィナーレ」を観ました


これまで同番組に出演した芸能人が大量に出演していました。さながら、日本の「お笑い界」のサミットのような豪華メンバーでした。
日本のお笑い界では、「笑っていいとも!」の司会を務めたタモリビートたけし明石家さんまの3人を“BIG3”と呼びますが、昼の最終回の「テレフォン・ショッキング」にはビートたけしが出演し、さんまに電話をかけました。最後の最後で、“BIG3”の揃い踏みが実現したわけです。さんまは、夜の特番にも出演し、ロングトークを繰り広げました。これがもう、涙が出るほど面白かった!
そして、ダウンタウンウッチャンナンチャンとんねるず爆笑問題ナインティナインがやって来た。まさに奇跡の顔ぶれです!


「スポーツ報知」4月1日号


じつは、これだけの長寿番組が終わるにあたって、わたしは「なにか人生の卒業式としての葬儀演出のヒントがあるかもしれない」という思いがあり、最後は番組を観るつもりでした。わが社の社長室には一応テレビも置かれているのです(もっとも、そのスイッチを入れるのは年に1回あるかないかですが)。
でも、安倍晋三首相、黒柳徹子さんが「テレフォン・ショッキング」に出演する日は視聴予定だったのにもかかわらず、見逃してしまいました。31日のビートたけし出演の最終回も同様でした。13時を少し回った頃に気づいて、わたしは「ああっ、しまった!」と地団駄を踏んだ次第です。というのも、わたしは生まれてこのかた昼間にテレビを観る習慣というのがまったくないので、どうしても忘れてしまうのです。習慣というのは怖いもので、NHKの朝ドラで「ごちそうさん」が高視聴率を取れたのは、直前の「あまちゃん」人気で国民の間に朝ドラを観る習慣が根づいたのが最大の原因とされているとか。


32年間、お疲れ様でした!


それでも、31日夜の「笑っていいとも! グランドフィナーレ 感謝の超特大号」だけはしっかり観ました。タモリが長年の大ファンだという吉永小百合さんはスタジオで生出演するかと思っていたのですが、結果は千葉で映画の撮影中とのことで、中継での出演となりました。わたしは、「吉永さんも、最後ぐらいはお台場のスタジオに行ってあげればいいのに」とも思いましたが、それが映画人としての吉永さんのプライドなのかもしれませんね。番組の後半では、ゲストからタモリへ感謝の言葉が述べられました。みんな素晴らしいスピーチで、わたしは「やっぱり、芸能人はすげえ!」と感心しました。録画もしましたが、これは冠婚葬祭のスピーチなどにも役立つ一大データベースになると思います。お笑い界の大物が多かったので、みんな、ある意味ですごい緊張感があったと思いますが、「とんねるず」も「ぴーす」も「タカアンドトシ」も「さまぁ〜ず」も「爆笑問題」も、みんなオチがあって素晴らしいスピーチでした。


爆笑問題田中裕二のスピーチ

爆笑問題太田光のスピーチ


特に「爆笑問題」の2人のスピーチが秀逸で、田中裕二は「32年間もやってて、タモリさんは毎回テレてましたね。これだけやってて、慣れないところがすごい」と言い、太田光は「安倍首相が来たとき、タモリさんが『SPがアルタの客を睨みつけた』『政府はお笑いを評価していない』と言ってくれて痛快だった」と言いました。これを聴いて、わたしは「うーん」と唸りました。「とんねるず」の2人も良いスピーチでしたが、今回は「爆笑問題」のセンスが上回りましたね。普段はお笑い番組をまったく観ないわたしですが、お笑い芸人を本気で見直しました。SMAP草なぎ剛が「日本には、こんなに面白い人たちがたくさんいるのか」とコメントしていましたが、同感です。


どのスピーチも素晴らしかった!


その草なぎ剛香取慎吾、そして中居正広SMAPの3人のスピーチも心に響く内容でした。特に、中居クンが「バラエティーって残酷なものだと思います。歌の世界にはツアーで最終日があり、ドラマもオールアップ、映画もクランクアップがある。ゴールを仮定して進んでる。でもバラエティーは終わらないところを目指してやるジャンルなのかな」というコメントには感銘を受けました。


関根勤のスピーチ

笑福亭鶴瓶のスピーチ


最も長くレギュラーを務めた関根勤笑福亭鶴瓶の感謝のスピーチも感動的でした。関根勤は珍しくアガッていましたね。それだけ、想いが強かったのでしょう。また、鶴瓶の「タモリさんは港や。港を失ったら、フジテレビもやばいで」と言い放ったことは立派。テレビ局あっての芸人さんとしては非常に勇気が必要とされる発言でしょうが、わたしは「鶴瓶、よくぞ言った!」と思いましたね。
きっと、タモリも嬉しかったのではないでしょうか。


最後はタモリ本人が挨拶


それにしても、32年間もアルタに通って番組を続けたことは偉大だと思います。明日から4月1日で、わたしも怒涛のスケジュールの流れに呑み込まれます。
正直、「今年も、またか」と思うこともありますが、毎年同じことを続けられる幸せというのを今夜は痛感しました。タモリ本人のスピーチも非常に洒脱で、「さすが!」という感じでしたが、みんな神妙な顔で聴いていましたね。タモリは「視聴者の皆様から色んな思いで見て頂き、出演者の皆様方からたくさんの価値をつけていただきまして・・・・・・32年間本当にありがとうございました」と述べました。途中で何度か、タモリのサングラスの奥には光るものが見えました。しかし、最後まで涙はこぼさず、笑ったままで番組は終了しました。


みんな神妙な顔で聴いていました


わたしは、感謝のスピーチを述べた人たちが「タモリさんに怒られたことはない」「タモリさんに褒められて自信を持った」「タモリさんはいつも笑わせてくれた」と口々に言うのが非常に印象的でした。3、4年ぐらい前からようやくタモリとご飯を食べられるようになったという中居クンはお酒を飲んだ時に、「タモさんが酔っ払ってたのか、ぼくのこと、優しく抱きしめて、頭なでてくれて、『中居、オレ、お前に感謝してるからな』って言ってくれたのが、すっごくうれしかったです」と涙を目にいっぱい浮かべていました。ここも、グッときましたね。



非常に家族主義的な現場だったようですが、そこには家長としてのタモリの気配りがあったのでしょう。人の上に立つ者にはユーモアが必要です。なぜなら、ユーモアは組織の雰囲気を和ませるからです。「笑い」とは「和来」であり、笑いと笑顔こそが職場の「和」を生むのです。わたしは、32年間も笑いの絶えない職場を守り抜いたタモリは偉大なリーダーであると思いました。タモリの笑い=和来によって、不仲説が囁かれていたダウンタウンとんねるずを始め、ウッチャンナンチャン爆笑問題なども同じステージに立って大いなる「和」が実現しました。できれば、全員で「ともだちの輪」をやってほしかったですね。長い間、本当にお疲れ様でした。
最後になりますが、笑っていいとも!」という言葉は、深刻な状況も含めて、何事も陽にとらえる1つの思想ではないかと、わたしは思います。


2014年4月1日 一条真也