月面墓地

一条真也です。
ブログ「宇宙葬」に書いたように、元NASAの技術者で宇宙葬のパイオニアである、エリジウム・スペース社のトーマスCEOが、『ロマンティック・デス』を読まれ、それがきっかけで宇宙葬ビジネスを始められたそうです。感無量の思いです。


月面聖塔の模型の前で



わたしは、21世紀の「葬」としての「ムーン・ハートピア・プロジェクト」について一冊の本にまとめ、『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』と題して、国書刊行会から1991年の秋に上梓しました。
夜空に浮かぶ月に「万教同根」「万類同根」のモニュメントとしての「月面聖塔」を建立し、「月への送魂」によって地球から故人の魂を送るというロマンティックな計画が、「ムーン・ハートピア・プロジェクト」です。


『イメージ・シンボル事典』アト・ド・フリース著(大修館書店)より



月面聖塔のデザインについても考え抜きました。
じつは、高名な建築家などにも設計を依頼したこともあります。しかし結局は、世界最古のメソポタミア神話に出てくる「月の神」の造形に由来を求めました。
わたしは、最も古いものには普遍性があると考えているからです。また、輪廻転生の基地として新しい生命が宿るという「宇宙卵」の意味も含めています。


ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』(国書刊行会)より



いま、月面聖塔のデザイン図を見直すと、やはり唐突な印象は否めません。
いつか、造形美術家の近藤高弘さんにデザインしていただきたいです。
月は日本中どこからでも、また韓国や中国からでも、アメリカからでも見上げることができます。その月を死者の霊が帰る場所とすればいいのではないかと思います。これは決して突拍子もない話でも無理な提案でもなく、古代より世界各地で月があの世に見立てられてきたという人類の普遍的な見方を、そのまま受け継ぐものです。世界中の古代人たちは、人間が自然の一部であり、かつ宇宙の一部であるという感覚とともに生きていました。そして、死後への幸福なロマンを持っていました。その象徴が月です。
人類は、月を死後の魂のおもむくところと考えたのです。



月に人類共通の墓があれば、地球上での墓地不足も解消できますし、世界中どこの夜空にも月は浮かびますから、それに向かって合掌すれば、あらゆる場所で死者の供養をすることができます。また、遺体や遺骨を地中に埋めること、つまり埋葬によって死後の世界にネガティブな「地下へのまなざし」を持ち、はからずも地獄を連想してしまった生者に、ポジティブな「天上へのまなざし」を与えることができます。そして、人々は月を霊界に見立てることによって、死者の霊魂が天上界に還ってゆくと自然に思い、理想的な死のイメージ・トレーニングを無理なく行うことでしょう。 




ムーン・ハートピア・プロジェクト」には大きな反響がありました



ロマンティック・デス』は、予想をはるかに超えて多くの読者を得ました。
ムーン・ハートピア・プロジェクト」にも大きな反響があり、多くのテレビ・新聞・雑誌で取り上げられ、海外のメディアからも取材が相次ぎました。
早いもので、あれからもう22年が経ちました。
昨日、トーマスCEOのインタビュー記事を読んで、今まさに「ムーン・ハートピア・プロジェクト」が新たな動きを見せようとしている予感がしました。
できるだけ早い時期に、アメリカに行ってきます。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年10月29日 一条真也