法師

一条真也です。
北陸に来ています。ブログ「七尾視察」に書いたように、七尾の紫雲閣用地を視察した後、白山連邦の麓にある粟津温泉へ・・・・・。5日の夜は、訳あって粟津温泉を代表する「法師」という旅館に宿泊しました。
ここは日本最古の旅館としてよく知られています。
なんと創業718年で、1300年以上も続いているのです!


粟津温泉の入口で

法師の入口で



日本最古の企業は、大阪に本社のある寺社建築大手の金剛組(創業578年)です。そして、日本最古の旅館は法師です。
46代におよぶ法師の経営者は、代々「法師善五郎」を名乗っています。
718年、越前国生まれの生まれの僧であり、白山を開いたとされる僧・泰澄が温泉を掘り当てました。その白山開祖泰澄大師に仕えたのが、法師の初代善五郎です。彼は雅亮法師として、泰澄大師による粟津開湯に際し、大師の命に従って万人の難病治癒のため湯治宿法師を開いたのが始まりだそうです。


法師の玄関

玄関内部のようす



法師のパンフレットには次のように書かれています。
「養老2年粟津開湯から伝承1300年――46代にわたる歴史は、私ども法師にとりましてささやかな誇りでございます。
けれどもいたずらに日本最古ののれんを誇るよりは、むしろ初心をこそ、大切にと、法師一同、それぞれの立場で日々、決意を新たにしております」


ロビー脇の美術コーナー

一度、訪れてみたいと思っていました

夜の庭が見える談話室

エノキアン協会」の加盟証



現在、法師を経営する企業の名も善五郎といいます。この善五郎は、世界の老舗による国際組織「エノキアン協会」に加盟しています。この協会の本部はフランスのパリにあり、ヨーロッパを中心に40社が加盟しているそうです。日本の企業は、善五郎(718年創業)、虎屋(1526年創業)、月桂冠(1637年創業)、岡谷銅機(1669年創業)、赤福(1707年創業)の5社が加盟しています。
その40社の中でも、一番歴史が古いのが善五郎なのです。
なお法師は、「世界最古の旅館」としてギネスブックにも登録されています。


1300年の歴史を感じます

廊下に飾られた額。近衛文麿の書?



七尾から粟津までは車で約2時間を要したため、法師に到着したのは日が暮れた後でしたが、雨に煙って人の気配もあまりない粟津温泉の中でも格別の存在感を漂わせていました。立派な玄関の構えに圧倒されながら中に入ると、意外と中は広かったです。門番の男性、迎えてくれた仲居さんと2人しか姿が見えませんでしたが、聞くと、当日は60名ほどの宿泊客があったそうです。
ただ、わたしは一度も他のお客さんの姿を見かけることはありませんでした。
ちなみに、全館で300人収容可能だそうです。夜更けに大浴場に行くと、そこには受付の男性と売店の男性が1人づついました。


客室へ向かう

客室内のようす

ほっと一息。ああ、腹減った!
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夕食のメニュー



困ったのは、ネットがまったく使えないことでした。
何度トライしてもWi−Fiがうまく接続できません。
最古の宿は、ネットなどという無粋なものを嫌っているのでしょうか。
それとも、白山の霊威がWi−Fiを封じ込めたのでしょうか。見ると、部屋の隅に「Wi−Fiつかえます」と書かれたSoftBankの機械が置かれていました。説明書によれば、どうもスマートフォンとiPadのWi−Fi.ルータ端末器とのこと。
こいつが邪魔をして、持参のWi−Fiを妨害していたのかもしれません。


部屋の隅にあったWi−Fi.ルータ端末器

このような説明書がありました・・・



真相はわかりませんが、どうしても接続できないので、わたしはiPad−Miniを使って、苦戦しながらブログをアップしました。こんな経験は初めてです。
まあ、普段がネットに依存し過ぎている感があるので、たまには良いかもしれません。それにしても人の気配のしない旅館はあまりにも静かで、まるで異次元の世界に迷い込んだかのようでした。こんな旅館にしばらく逗留して幻想小説など書いたりすれば、さぞ素敵でしょうね。


朝の法師は明るかったです

翌朝、庭を散策しました



翌朝は早起きして温泉に入り、庭を散策しました。
朝は何人かのお客さんと擦れ違い、従業員の数も増えていました。
日本旅館は、日本文化の集大成と言われます。
建築、庭園、内装、調度品、温泉、そして、もてなし・・・・・。
日本旅館には、日本人の「こころ」があります。
4日に行われた全互協の事業継承委員会では、次回のセミナーを北陸・和倉温泉加賀屋で開催することに決定しました。28年連続人気日本一の名旅館ですが、セミナーでは加賀屋の小田会長のお話をお聴きしたいと考えています。


日本庭園を望む

法師のロビーにて



現在、日本旅館は非常に厳しい時代を迎えており、日本中の多くの旅館が倒産の危機に直面しています。そんな中で、1300年も続いている「法師」の存在は奇跡としか言いようがありません。
なぜ、この旅館は日本で最も長く続いているのか。その秘密を少しでも探りたいと思いましたが、正直、よくわかりませんでした。すみません。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年9月6日 一条真也