『トムは真夜中の庭で』

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))


一条真也です。
今日、長女が東京から帰ってきます。
もう夏休みも後半に突入したというのに・・・・・。
夏休みといえば、わたしの思い出は常に読書の記憶と結びついています。
小学校から大学まで、長い夏休みの間にさまざまな本を読みあさりました。



旅行にも出かけましたが、必ず何冊かの本を持ってゆきました。
旅先で本を読む楽しみは、また格別です。わたしにとって夏の訪れは「さあ、面白い本がたくさん読めるぞ!」というワクワク感につながっています。そんな夏に読んだ多くの本の中で、とくに忘れられないのが、今回ご紹介する『トムは真夜中の庭で』 フィリパ・ピアス高杉一郎訳(岩波少年文庫)。もう数え切れないくらい読み返した本です。
最初に読んだのは小学5年生の時でした。



物語の主人公は、知り合いの家にあずけられた孤独な少年トムです。彼は、真夜中に古時計が13回時を打つのを聞きます。そして、昼間はなかったはずの庭園に誘い出され、ハティという名前のヴィクトリア時代の少女と知り合います。
いわゆるタイムファンタジーの古典ですが、「時間とは何か」あるいは「思い出とは何か」といった大事なテーマが自然に心に浮かんできます。


思い出ノート ([バラエティ])


かつて、わたしは高齢者の方が自らの人生を振り返るための『思い出ノート』(現代書林)というものを刊行したのですが、人間にとって本当の宝物とは「思い出」に他なりません。『トムは真夜中の庭で』を読めば、「思い出」についての考え方が良い意味で少し変わるのではないでしょうか。
また、アルツハイマー症候群の方を介護されているような方にも一読をおすすめします。本書は児童文学の傑作ですが、大人が読むべき本でもあるのです。



とても興味深いストーリーですが、おそらく結末は容易に想像がつくと思います。この物語に似た本や映画もたくさん存在します。おそらくは、本書が同タイプのあらゆるファンタジーの原型になっているのでしょう。
秘密の花園』みたいに庭園の魅力を描き、『モモ』みたいに時間の不思議を描いている。そして、あらゆる世代の少年・少女が抱く「憧れ」や「希望」を美しく描いた物語でもあります。大人が読めば、たまらなくなつかしい気持ちになるはずです。夏休みが終わる前に、ぜひ親子でお読み下さい。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年8月20日 一条真也