「遺体」とグリーフケア

一条真也です。

先日、ブログ「遺体 明日への十日間」の記事を書きました。
高野山大学准教授でスピリチュアルケア学の第一人者である井上ウィマラさんにメールでお知らせしたところ、井上さんから返信のメールが届きました。


鎌田氏(中央)・井上氏(右端)と関門海峡を望む(和布刈神社にて)



井上さんは、京都大学こころの未来研究センター教授で宗教哲学者である鎌田東二さんとともに、世界平和パゴダを運営する「日緬仏教交流協会」の理事を務められています。じつは、わたしも理事の一員なのですが、井上さんは実際にミャンマーで僧侶としての修行を務められています。さらには、世界平和パゴダで修行された経験もお持ちです。先日は、鎌田さんと井上さんとわたしの3人で門司港にある和布刈神社を訪れました。神社の真上が世界平和パゴダです。



さて、井上さんからわたし宛のメールです。
御本人の了承を得ましたので、以下に紹介いたします。
「『遺体』のブログ、ありがとうございました。
遺体を大切に扱うことで、死者だけではなく、遺族も心が癒されるということは被災地でよく耳にすることです。特に、自衛隊の皆さんが丁寧に遺体を探し取り扱ってくれたことへの感謝の言葉がすくなくありません。清拭やエンジェルメイクに参加することが、よきグリーフワークの第一歩となりますが一般の方は、その時どうしたらよいのか、どう心を向けたらよいのかわかりません。



映画では、そうした点についてさりげなくモデルが示されていたように思います。
こうしたご遺体との接し方、心の込め方の中にその後の供養や、シャーマニックなご先祖とのやり取りのプロトタイプが埋め込まれるような気がいたします。
映画の中では、ご住職は地元の方で、自我偈の冒頭で、唱えられず、何度も途絶えとだえになります。それが現場の実感でしょう。それでも唱えようとそこに居続けてくれる住職さん在り方に、地元のスタッフたちも、それでいいんだと、勇気をもらったのではないかと思いました。



娘を亡くして安置所を離れられない母親を一晩中見守った相葉さんとスタッフの姿は、お不動さんのようでした。お母さんは、キサー・ゴータミーやパター・チャーラーのようです。最初は圧倒されて働けなかった市役所の青年も相葉さんの励ましとスタッフからの見守りをうけ次第に遺体や遺族に関われるように成長してゆきます。PTG(トラウマ体験後の成長)を垣間見るような気がいたしました。



最後の場面も素晴らしかったですね。目の前のことに心を込めて淡々とこなしてゆくなかに日本的な精神性の原点があるのだということを象徴していたように思います。葬式仏教に心を込め押してゆく作業が大切になります。
力を合わせて取り組んでゆきましょう」(井上ウィマラさんのメールより)


わたしは、井上さんが指摘されることのすべてが胸に沁みました。
阪神淡路大震災の年は「ボランティア元年」だとされました。
そして、東日本大震災の年は「グリーフケア元年」であると言われます。
もうすぐ東日本大震災から2周年になりますが、わたしは日本におけるグリーフケアの普及に少しでもお役に立ちたいと願っています。
井上さん、貴重な感想をどうもありがとうございました。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年3月9日 一条真也