「鬼滅の刃」の大ヒットの理由

一条真也です。
30日、「ふくおか経済」5月号が発売されました。「編集部のお薦め」のコーナーに、拙著『「鬼滅の刃」に学ぶ』(現代書林)の書評記事が掲載されています。

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「ふくおか経済」2021年5月号 

 

記事は、「冠婚葬祭経営者・宗教研究者がひも解く『鬼滅の刃』の大ヒットの理由(わけ)」の見出しで、「この一冊で『鬼滅の刃』の秘密がわかる。三途の川というと、舟を使うか歩いて渡るのが一般的なイメージだろう。ところが、炭治郎は川に架かる橋を渡る。中国で成立した『地蔵十王経』によれば、善人は橋を渡るとあるそうで、『すなわち、『鬼滅の刃』は三途の川を、仏教的な経典に則って正しく表現しているといえるのです』(本文180ページ)。大手冠婚葬祭会社を経営する傍ら、宗教研究者としても知られる著者が、『鬼滅の刃』の作品から神道儒教、仏教の要素をひも解き、大ヒットの要因を探る。見えてきた答えは、日本人の本能による渇望だった――」と書かれています。

 

 

2021年4月30日 一条真也

東京五輪を中止するのは誰か?

一条真也です。
昨日、28日の東京都の感染者は925人、大阪府は過去最多の1260人、福岡県も過去最多の440人でした。医療体制の逼迫具合は深刻さを増す中で、東京五輪を強行開催しようとする日本政府に激しい怒りを感じています。今朝UPした「シンとトニーとムーンサルトレター第193信」でも、宗教哲学者の鎌田東二先生と東京五輪について意見交換していますので、よろしければお読み下さい。



大阪府と福岡県の新規感染者数が過去最多を記録した28日、東京五輪パラリンピック組織委員会橋本聖子会長(56)、東京都の小池百合子知事(68)、丸川珠代五輪相(50)、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長(44)による5者協議が始まりました。新型コロナウイルスの変異株が日本中で猛威を奮っている中、五輪開催中止の可能性でも協議してくれればいいのですが、このメンバーですので開催前提での協議となりました。従来の感染防止策を強化する方針で合意し、当初は今月中に方向性を示すとされていた国内観客の上限については、6月までの決定として先延ばしされる見込みというから笑わせます。

f:id:shins2m:20210429214728j:plain5者協議のようす

 

5者協議の冒頭あいさつで、リモート参加したIOCのバッハ会長は「われわれは日本国政府の決定、都が要請された緊急事態宣言を尊重している。日本の国を守ろうという勤勉な精神を非常に称賛している。五輪コミュニティーは日本とともに歩んでいる。日本国民とともに歩み、思いを寄せている」と述べ、さらに「日本の社会は連帯感をもってしなやかに対応している。大きな称賛をもっている。精神的な粘り強さ。へこたれない精神をもっている。それは歴史が証明している。逆境を乗り越えてきている。五輪も乗り越えることが可能だ。献身的な努力で未曽有のチャレンジをしている」と呼びかけました。

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IOCのバッハ会長

 

さらにバッハ会長は、「リスクを最小化し、日本国民に安心してもらえる五輪になる」と強調しました。わたしは、これほど白々しいお世辞を聞いたことがありません。ヨーロッパ貴族の集まりであるIOCの利権のために日本国民の命を危険にさらすというのに何という言い草。「へこたれない精神を持っているのはお前だろう!」と言いたくなりますね。先日の3度目の緊急事態宣言発出の会見で、菅義偉首相は困惑した表情というか、怯えたような表情で「五輪開催の決定権はIOCにある」と発言していましたが、日本国で開催するのに日本に決定権がないというのは非常に違和感があります。IOCというのは、GHQのように日本を支配する組織なのでしょうか?


GHQといえば、現在の東京五輪を開催するのは絶対に無理なのに強行開催の方向に進んでいる日本を見ていると、太平洋戦争の末期を連想をするのはわたしだけではありますまい。もっと早く降伏していれば、広島と長崎に原爆も落とされず、神風特攻隊で若い命も散らず、戦艦大和も沈まず、沖縄の惨劇も避けられたと思うと、つくづくリーダーの最大の使命とは、自己犠牲の精神で重大決定をすることだと痛感します。本来は、内閣総理大臣である菅氏がその任にありますが、期待できません。こうなったら、天皇陛下の御英断を仰ぐしかないと思いますが、現実では難しいです。でも、東日本大震災後の上皇陛下(平成天皇)のメッセージのように、今上陛下がコロナ禍に苦しむ日本国民へのメッセージとして、「国民の健康を阻害する一切の行事を控えることを希望します」と一言でも口にして下されば、一気に流れは変わるのではないでしょうか。

 

自民党は五輪で国民をお祭りムードにして、そのまま秋の衆院選に臨もうと甘く考えているのでしょうが、そうは問屋が卸しません。五輪を強行開催すれば、その後の変異株による感染大爆発は必至で、衆院選では自民党は歴史的大敗を喫すのは火を見るより明らかです。自民党も本音を言えば、五輪などより選挙で勝つ方が大事でしょうから、一刻も早く五輪中止の方向にシフトするべきです。最近、ポロリと本音を口にする傾向のある二階俊博幹事長あたりが「五輪中止宣言」を菅首相に進言し、菅首相がそれを実行すれば、自民党衆院選大勝も夢ではありません。誰であれ、東京五輪中止を宣言すれば国民的英雄になれます。


菅首相以外に「東京五輪中止」を決定できる人物といえば、これはもう東京都の小池百合子都知事しかいないでしょう。実際、「横槍・百合子」の異名を持つ小池都知事は何をしでかすかわからないデンジャラスなキャラクターであり、巷でも「小池都知事が五輪中止を宣言するのではないか?」という声が聞こえてきます。元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏も、「小池都知事は民意の風に乗ることに関しては天才的。彼女が中止宣言する可能性はある」と発言していました。丸川珠代オリンピック・パラリンピック担当大臣が、大会期間中の医療体制について、「具体的な提示がない」と東京都に苦言を呈しました。小池百合子知事は「事務的には詰めている」と反論しましたが、オリンピック開幕まで3カ月を切る中で、国と都の対立が表面化した形になります。これは、小池の乱を事前に察知した政府の不安が表面化したようにも思えますね。


4月16日配信の「日経ビジネス」電子版では、コラムニストの小田嶋隆氏が「彼女が中止のホイッスルを吹く日」という興味深いコラムを書かれています。それによれば、小田嶋氏の知人が以下の見立てを語ってくれたそうです。

1.いくつかの国や競技団体が五輪への不参加を言い出す

2.小池百合子都知事が突然五輪の中止を宣言

3.ついでにIOCとの契約の詳細
      (どうせ守銭奴契約)を暴露

4.右も左も小池百合子バンザイ状態

5.責任を取って都知事を辞任とか言い出す

6.でもって衆院選に打って出る

7.もちろん小池新党を結成。しかも維新あたりと握手

8. 当然、菅さんの選挙区から出馬する

9.どうせ大勝利

10. 日本初の女性宰相へ……とか

11. ありそうだよね。
      とにかく度胸だけは日本一なわけだから

12. いやだなあ。ほんとにいやだなあ。ありそうで。


小田嶋氏は「五輪中止をいきなり持ち出す権限と度胸と政治的センスと悪辣さと野心を全部持ってる人間は、小池百合子以外に考えられない。うまいタイミングで五輪中止をブチ上げて、同時にIOCの腐敗を告発しつつ被害者面をキメて見せれば、右も左も保守もリベラルも両手を挙げて支持するよね。いやだなあ」と書かれていますが、わたしは諸悪の根源であり、日本にとって暗黒の未来製造機である東京五輪というブルシット・イベントをぶっ壊してくれるなら、小池都知事が日本初の女性宰相となってもいいと考えます。いや、それだけの行動力があれば、その栄誉にじゅうぶん価するでしょう。「東京五輪ジャンヌ・ダルク」は電通社員の妹である池江璃花子選手ではなく、小池都知事となる可能性は大いにあると思います。


28日に行われた衆院厚生労働委員会で、政府のコロナ分科会の尾身茂会長は、東京五輪パラリンピックの開催について「組織委員会など関係者が感染のレベルや医療のひっ迫状況を踏まえて、議論をしっかりやるべき時期に来ている」と発言しました。東京五輪の開催について政府から非公式に意見を求められた尾身会長は、「発展途上国も含めて感染が非常に広がっていることは事実ですよと。このことをよく分かって頂いた方が良いと、リスクは当然あるということ。したがって感染の状況とか医療の逼迫というような状況を考えてくれない、そのことをもうそろそろ考えて国民に知らせてもらうのが組織委員会、あるいは関係者の責任じゃないかということは申し上げました」と述べました。検査体制、ワクチン接種が発展途上国以下、劣等生以下の惨状になった責任の一端は間違いなく尾身会長にあるとの声も強いですが、この日の発言には土壇場で日本国民を真剣に心配する真心のようなものが感じられ、わたしは尾身会長のことを少し見直しました。



また、尾身会長は開催の判断をする立場にないとした上で、「外国からの人流を減らすことが今、求められている」と述べ、水際対策をさらに強化し、感染を抑え込んでおく必要があるという認識を示しました。これは明らかに「五輪開催中止」を示唆しています。29日の民放各局のワイドショーなどを観ましたが、紀州ドンファン事件の報道とともに、これまではタブーだった「五輪中止すべき」発言がバンバンされていました。昨日から潮目が変わった気がします・・・・・・と、ここまで書いたところで、29日の東京都の新規感染者が1027人との発表がありました。先週の木曜日(861人)と比べて166人増加しており、1日あたりの感染発表が1000人を超えるのは1月28日以来3か月ぶりです。はてさて、こんな都市で3カ月後に本当に五輪ができますか?

 

2021年4月29日 一条真也

『のこされた あなたへ』  

一条真也です。
56冊目の「一条真也による一条本」は、『のこされた あなたへ』(佼成出版社)。2011年12月15日に刊行されました。「3・11 その悲しみを乗り越えるために」というサブタイトルがついています。そう、東日本大震災愛する人を亡くした方々に向けて書かれた本です。


のこされた あなたへ
(2011年11月15日刊行)

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本書の帯

 

本書の帯には、「死別はとてもつらく悲しい。けれど、決して不幸な『出来事』ではありません。」と大きく書かれています。また、「グリーフケアの入門書にして決定版」というコピーが赤く囲まれています。そして、「大切な人を突然失ったとき、どうやって立ち直ればよいのか。」とも書かれています。帯の裏には、「東日本大震災――すべてが日常と異なる死別の体験」とあります。

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本書の帯の裏

 

本書の「目次」は、以下のようになっています。
まえがき「遺族からすべてを奪った3・11」
序 章
グリーフケアとは?
人間の一番の苦悩
遠回りにも、意味があった
時空が歪んでしまったかのような被災地
「死」は「不幸」なこと?
「となりびと」は「いやしびと」
「ヒト」は他者から送られて「人間」になる
死は最大の平等である
第1章 葬儀ができなかったあなたへ
なぜ葬儀をあげるのか
葬儀という物語によるグリーフケア
日本人の葬儀のルーツ
愛する人を亡くした人の心の動き
震災でわかった、本当に必要なもの
葬儀は霊魂のコントロール技術
四十九日という時間の意味
お盆は日本人の「こころ」の時間
立派な葬儀をあげるより大切なこと
土葬で死者の尊厳は損なわれるのか
第2章 遺体がみつからないあなたへ
「史上最悪の埋葬環境」のなかで・・・・・・
日航機墜落事故でわかったこと
遺体を前にした遺族は
極限の状況下で人は何を見るのか
遺骨への想い
グリーフケアとトラウマ
近代文明が引き起こした大惨事
天災が日本人の心にもたらした「無常観」
死が発展させた文化
大切な人の遺体が見つからなかったら
あなたが「死ななくなる」方法
第3章 お墓がないあなたへ
3・11後の墓とのつきあい方
墓の前で宴会を開く沖縄人
自分らしい葬儀って?
墓を選ぶ前に考えるべきこと
変化する墓事情
日本人の発明した不思議な函
仏壇はマルチメディア
北野武に学ぶご先祖さまとのつきあい方
死者を平等に祀るには?
絶対に無縁化しない墓
第4章 遺品がないあなたへ
故人を身近に感じる「手元供養」
故人とつながる思い出の品
もしも遺品がなかったら・・・・・・
知られざる「家系図」の癒し効果
誰にでもできる簡単な供養の方法
忘れ去られた時、死者はもう一度死ぬ
死者は本当に「存在」しない?
シュタイナーが考えた死者とつながる方法
「モノ」に頼って悲しみをやわらげる
第5章 それでも気持ちのやり場がないあなたへ
ブッダと子を亡くした女のエピソード
死にゆく人の苦しみとは
あの世を垣間見た人々の記録
死者は歳をとらない?
時間は悲しみを癒す最高の妙薬
「死」から目をそらすことは「生」から目をそらすこと
悲しみを癒すためにするべきこと
読書が与えてくれる気づき
童話やファンタジーの癒しの力
メルヘンに秘められた真実
涙を流すという心の革命
大人のためのファンタジー
「死」という永遠の謎と向き合う
『青い鳥』と死者の世界
「最高の叡智」とは何か
宮沢賢治のひみつ
銀河鉄道の夜』と臨死体験
タイタニック号から銀河鉄道
宗教、哲学、科学、そして物語
あとがきにかえて「別れの言葉は再開の約束」


陸上に漂着した船の前で(気仙沼

 

わたしにとって、本書は『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)に次ぐグリーフケアの著書でした。わたしの持てるすべてを総動員して、本書を書き上げました。2011年3月11日は、日本人にとって決して忘れることのできない日になりました。三陸沖の海底で起こった巨大な地震は、信じられないほどの高さの大津波を引き起こし、東北から関東にかけての太平洋岸の海沿いの街や村々に壊滅的な被害をもたらしました。その被害は、福島の第1原子力発電所の事故を引き起こし、いまだ現在進行形の大災害は続いています。


三陸の海をながめて

 

大量死の光景は、『古事記』に描かれた「黄泉の国」がこの世に現出したようでもあり、また仏教でいう「末法」やキリスト教でいう「終末」のイメージそのものでした。大津波の発生後、しばらくは大量の遺体は発見されませんでした。いま現在も、多くの行方不明者がおられます。火葬場も壊れて通常の葬儀をあげることができず、現地では土葬が行われましたさらには、海の近くにあった墓も津波の濁流に流されました。葬儀ができない、遺体がない、墓がない、遺品がない、そして、気持のやり場がない・・・・・まさに「ない、ない」尽くしの状況は、今回の災害のダメージがいかに甚大であり、辛うじて助かった被災者の方々の心にも大きなダメージが残されたことを示していました。


巨大なクジラ缶の前で(石巻

 

現地では毎日、「人間の尊厳」というものが問われました。亡くなられた犠牲者の尊厳と、生き残った被災者の尊厳がともに問われ続けていたのです。この国に残る記録の上では、これまでマグニチュード9を超す地震は存在していませんでした。地震津波にそなえて作られていたさまざまな設備施設のための想定をはるかに上回り、日本に未曾有の損害をもたらしました。じつに、日本列島そのものが歪んで2メートル半も東に押しやられたそうです。それほど巨大な力が、いったい何のためにふるわれ、多くの人命を奪い、町を壊滅させたのでしょうか。あの地震津波原発事故にはどのような意味があったのでしょうか。そして、愛する人を亡くし、生き残った人は、これからどう生きるべきなのか。そんなことを考えながら、残された方々へのメッセージを書き綴ってみました。


防災対策庁舎の前で祈る

 

もちろん、どのような言葉をおかけしたとしても、亡くなった方が生き返ることはありませんし、その悲しみが完全に癒えることもありません。しかし、少しでもその悲しみが軽くなるお手伝いができないかと、わたしは一生懸命に心を込めて本書を書きました。時には、涙を流しながら書きました。本書の内容をベースとして、京都大学で「東日本大震災グリーフケア」について講演したのも忘れ得ぬ思い出です。その会場には、後に上智大学グリーフケア研究所で御一緒する島薗進氏、鎌田東二氏、さらには僧侶で作家の玄侑宗久氏がおられた、わたしの話を聴いて下さったのです。御縁を感じました。大震災の犠牲になった方の遺族・関係者のみならず、すべての“愛する人を亡くした人”に本書を読んでいただきたいと思います。


京大での講演のようす

 

のこされたあなたへ  3.11 その悲しみを乗り越えるために
 

 

 

2021年4月29日 一条真也

『ホスピタリティ・カンパニー』 

 一条真也です。
55冊目の「一条真也による一条本」は、『ホスピタリティ・カンパニー』(三五館)です。サブタイトルは「サンレーグループの人間尊重経営」。2011年11月18日に刊行されましたが、この日は、株式会社サンレーの創立45周年の記念すべき日でした。


ホスピタリティ・カンパニー
(2011年11月18日刊行)

わたしは、「 一条真也」のペンネームでは多くの著書を上梓してきましたが、本名の「佐久間庸和」、そして、サンレーの社長としては、『ハートフル・カンパニー』(三五館)に続く2冊目の出版となります。

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本書の帯

 

本書の帯には、「互助会から互助社会へ」「ホスピタリティのある会社しか生き残れない」「日本一『隣人祭り』を開催する会社の、力の源泉とは?」「株式会社サンレー創立45周年記念出版」と書かれています。

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本書の帯の裏

 

帯の裏には、「シリーズ第1弾、絶賛発売中!」として、『ハートフル・カンパニー』が紹介され、「サンレーグループの志と挑戦」「心ゆたかな社会は、心ゆたかな会社から!」「脅威のビジョンと大胆なアクション。『知行合一』をめざす数々の挑戦。サービス業界に贈る究極のバイブル」と書かれています。同書は上下2段組で440ページという大部の本にもかかわらず、幸いにして多くの方に読んでいただけました。また、同書はわが社の創立40周年の記念出版でした。本書『ホスピタリティ・カンパニー』は、45周年記念出版になります。本書に収録されている文章は、わたしが社員のみなさんの前で話したメッセージです。いわゆる「社長訓示」と呼ばれているものです。すべてのメッセージは毎月の社内報に掲載してきました。また、わたしのホームページ上にも「マンスリーメッセージ」としてアップされています。社内向けのメッセージを外に向けてもオープンにしているわけです。いわば、「公開社長訓示」と言えるでしょう。もちろん同業者にも読まれるわけで、ある意味ではリスクの高い行為であることは重々承知しています。

 

しかし、これには、理由があります。多くの方々に「サンレーの社長はこんなことを言っているが、現場では本当に実践できているのか」とチェックしていただきたいのです。いくら社長が口でうまいことを言ったとしても、お客さまと接する現場で生かされていなければ何にもなりません。それを、ぜひ見ていただきたいのです。実際、「ちゃんと実行できているね」とお褒めの言葉をいただくこともあれば、「あそこの施設では、社長の考えと反対のことをやっているよ」とお叱りの言葉をいただくこともあります。どちらも、ありがたいアドバイスであり、本当に感謝しています。また、最近ではホームページでの「公開社長訓示」を同業他社の経営者や社員の方々もよく読んでくださっているようです。自社での朝礼やスピーチなどで使わせてもらったという声もよく頂戴します。わたしの言葉が、またわが社の取り組みが何かのヒントになれば、こんな嬉しいことはありません。そういった方々の「ぜひ、1冊の本にまとめてほしい」という声をたくさん頂戴しました。そこで、45周年の記念ということもあり、本書の上梓を決めた次第です。

 

本書の「目次」は、次のようになっています。
「まえがき」
第1章 不惑からの出発
    ――2006年12月

助け合いは、人類の本能だ! 互助会から互助社会をつくろう!
第2章 「こころ」を「かたち」に
    ――2007年1月〜12月

使命と志のM&A戦略 サンレーのお家芸で必勝宣言!
愛する人を亡くした人へ 悲しみを癒すグリーフケアを
すべてのセレモニーは卒業式 冠婚葬祭業は、さようなら産業だ!
会社は社会のものである そして、仕事ほど面白いものはない!
教養こそ真の富である 大いに心を太らせよう!
江戸しぐさに学び  サンレーしぐさをつくろう!
挨拶が心の窓を開く 愛語で相手を元気にしよう!
自助・扶助・互助の三位一体で 弱気を助ける社会をつくろう!
掃除を続ければ商売繁盛 そして、自分の心も磨かれる!
本を読めば時間ができる 読書で大いに自分を高めよう!
苦情は最高の贈り物 されど、クレーマーには要注意!
信条のある企業だけが繁栄する サービス業ほど素敵な商売はない!
第3章 天下布礼への道
    ――2008年1月〜12月

天下布礼の旗を掲げ 人間関係を大いに良くしよう!
“おめでとう”と“ありがとう”で ハートフル社会を呼び込もう!
真心で接し、誠を尽くそう! そこからサンレー・ブランドが生まれる
大切なものほど目には見えない 役に立つ本当に素敵な仕事とは?
目に見えないものを形にする サービスマンとは魔法使いだ!
人の道から人類の道へ 八大聖人のメッセージとは?
義を見てせざるは勇なきなり 絶対に人の道を忘れるな!
法則さえ知れば何も怖くない これが、サンレーの法則だ!
どうなる?ネクスト・ソサエティ こころの未来を創造せよ!
すばらしきビューティフル・ネーム すべての人を名前で呼ぼう!
良い人間関係こそ最高の贅沢である 隣人祭りを大いに広めよう!
イソップ、グリム、アンデルセン… 童話が大切なことを教えてくれる
第4章 人を幸せにする仕事
    ――2009年1月〜12月

人間関係を良くする魔法とは? サンレーは、魔法の総合商社だ!
強欲資本主義の時代が終わる 輝け、ハートフル・カンパニー!
送ること、悼むこと… 「死」は平等で「葬」は芸術だ!
すべてがチェンジを求められている 君たちも変わらなければならない
この苦難の時代をどう生きるか? 禍転じて福と為す発想を!
何が本当の貧困だろうか? こころの大富豪になろう!
血みどろの競争から脱け出し ブルー・オーシャンをめざそう!
世界が日本にあこがれている 冠婚葬祭はクール・ジャパンだ!
あらゆる仕事には意味がある 本当の成果とは何だろうか?
感情労働のプロとして 怒りをどう扱うべきか?
人間の幸福とは何だろうか? 先祖と隣人を大切にするお手伝いを!
本当の情報時代がやって来る 日本人のこころをお世話しよう!
第5章 サンレー12力とは何か
    ――2010年1月〜12月

法律力を身につけ、コンプライアンス時代を生き抜こう!
数学力を身につけ、人間をもっと幸せにしよう!
結縁力を身につけ、無縁社会を有縁社会にしよう!
儀式力を身につけ、葬式は必要と言われよう!
情報力を身につけ、こころの時代を創造しよう!
思考力を身につけ、情報の洪水を泳ぎきろう!
創造力を身につけ、お客様に満足していただこう!
実行力を身につけ、現場の問題に対応しよう!
伝統力を身につけ、冠婚葬祭の文化を守ろう!
革新力を身につけ、コミュニティを再生しよう!
観光力を身につけ、他人が発する光を見つけよう!
礼能力を身につけ、思いやりのある人になろう!
第6章 ホスピタリティを極める
    ――2011年1月〜11月

いよいよ45周年の年 有縁社会づくりはサンレーの使命
思いやりの時代がはじまる 人情あふれる人間集団をめざそう!
自分だけの喜びを求めず、人にも喜びを分け与えよう!
東日本大震災発生! 今こそ、隣人の時代へ
中部紫雲閣オープン 沖縄力で日本復興を!
危機はつねに近くにある ピンチをチャンスに変えよう!
高まる結婚願望… 大いに家族の絆を強めよう!
8月は死者を思い出す季節 先祖供養は素晴らしき日本文化だ!
長生きを意味ある寿に 隣人祭りで「おくりびと」を増やそう!
前代未聞の社会福祉都市へ 北九州市はハートフル・シティだ!
おかげさまで45周年…  これからもホスピタリティを大切に!
「社長のおススメ本リスト」
一条真也著書一覧」
S2M MAP」

 

本書のタイトルですが、『ホスピタリティ・カンパニー』としました。「ホスピタリティ」は今後の会社のみならず、社会全体の最大のキーワードであると思います。キリスト教の「愛」、仏教の「慈悲」、また儒教の「仁」まで含めて、すべての人類を幸福にするための思想における最大公約数とは、おそらく「思いやり」の一語に集約されるでしょう。そして、その「思いやり」を形にしたものが「礼」や「ホスピタリティ」です。

 

「礼」と「ホスピタリティ」は、わが社のキーワードになっています。洋の東西の違いはあれど、「礼」も「ホスピタリティ」もともに、「思いやり」という人間の心の働きで最も価値のあるものを形にすることに他なりません。「ホスピタリティ」こそは、人類が21世紀において平和で幸福な社会をつくるための最大のキーワードであると言えるでしょう。わが社は、その「ホスピタリティ」を実践すべく、本業である冠婚葬祭業はもちろん、有縁社会をつくる「隣人祭り」の開催、そして高齢者介護事業としての「隣人館」をオープンしました。あらゆる面から多くの方々が助け合い、支えあい、つながりあい、幸せになれるお手伝いをしていきたいと願いました。

 

なお、それぞれのメッセージの最後には、内容の要約となる短歌を掲載しています。「庸軒」は、恥ずかしながら、わたしの歌詠みの雅号です。江戸時代に石田梅岩が開き、商人を中心とした庶民のあいだで盛んになった「心学」では、人の道を説くメッセージ・ポエムとしての「道歌」が多く詠まれました。5・7・5・7・7のリズムは日本人の心の奥にまでメッセージを届ける力を持っています。本書に登場する短歌も、けっして芸術性の追求ではなく、社員すなわち読者のみなさんの理解を深めていただくための道歌をめざして詠んだものです。

 

また、巻末には「社長のおススメ本」というブックリストが掲載されています。これは、毎月の社内報で、わたしがサンレーグループの社員向けに紹介した本の一覧です。こちらは、2003年1月から2011年12月までのおススメ本110冊を一覧にして掲載してあります。これらの本を読んだ社員のみなさんと本の感想について語り合ったことが思い起こされます。本書の「まえがき」の最後には次のような道歌を詠みました。

 

思いやり形にせんと励みつつ 
  さらに進むはわれらが社(庸軒)


「ホスピタリティ」は、佐久間進会長がずいぶん以前から使っていた言葉です。最近でこそ流行語になっていますが、佐久間会長は50年以上も前から日常的に使い、わが社の経営理念にも取り入れていました。佐久間会長が生まれた昭和10年に日本にYMCAホテル学校が誕生し、「ホスピタリティ」という言葉も日本に入ってきたようです。大学を卒業してからYMCAホテル学校に通った佐久間会長は、その語になじみました。そして、後に社団法人・全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の初代会長としてアメリカのフューネラル大会において講演した際に、「冠婚葬祭業はホスピタリティ産業である」と述べました。これは、「冠婚葬祭」と「ホスピタリティ」が初めて結びついた記念すべき瞬間でありました。一般には、ホテル業やレストラン業などをホスピタリティ産業と呼んでいました。佐久間会長が、日本における「ホスピタリティ」の概念を拡大したわけです。


佐久間会長は、社団法人・北九州市観光協会の会長を永く務めました。そのとき、「百万にこにこホスピタリティ運動」をスタートさせ、観光ボランティアなど、市民参加のさまざまな企画を実施し、ホスピタリティが北九州市の大きな魅力として定着するよう、運動を通して全市的にアピールしました。今年も、「百万にこにこホスピタリティ運動」のポスターが届きました。わが社は「ホスピタリティ・カンパニー」をめざしています。そして、北九州市が「ホスピタリティ・シティ」となることを願っています。

 

ホスピタリティ・カンパニー

ホスピタリティ・カンパニー

  • 作者:佐久間 庸和
  • 発売日: 2011/10/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

2021年4月28日 一条真也

肖像写真撮影

一条真也です。
ピンクムーンの27日、 松柏園ホテル内のハートスタジオ小倉で肖像写真の撮影をしました。当年70歳になるベテランの尾形カメラマンがたくさん写真を撮ってくれましたが、こんなに本格的な撮影はブログ「『和を求めて』撮影」で紹介した2015年4月7日以来かもしれません。

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この続編の帯写真の撮影がメインです

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最初はブルーのネクタイから

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次は、イメージカラーのパープル

 

6年前は拙著『和を求めて』(三五館)用の写真撮影でしたが、今回は今秋刊行予定の『アンビショナリー・カンパニー』(仮題、現代書林)用です。同書は『ハートフル・カンパニー』『ホスピタリティ・カンパニー』『ミッショナリー・カンパニー』(いずれも三五館)の続編で、サンレー創立55周年記念出版となります。せっかくですから、書籍用の写真だけでなく、社内報、会社HP、一条真也オフィシャルサイト、その他、対外用の広報資料などに使う写真も一緒に撮影しました。この日の靴はジョン・ロブ、スーツはドーメル、そして、お気に入りのステファノ・リッチのネクタイとポケットチーフのセットを5種類持参して着替えました。以前はエルメスやブルガリの明るい色のネクタイも好きでしたが、最近はもっぱらステファノ・リッチが多いです。

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イエローもお気に入り

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最後は、新作のブラウンで

 

「ステファノ・リッチ」は、イタリア人デザイナーのステファノ・リッチ氏によって、1972年にフィレンツェで創業したプレステージブランドです。ステファノ・リッチ氏はクラシコイタリア協会の初代会長を務め、イタリアファッション界の発展に貢献し、それらの活躍によりアメリカ・ヨーロッパを中心に世界中でトップ・ブランドとしての地位を確立しました。わたしは、いつも、東京紀尾井町のホテル・ニューオータニにテナントで入っている「アイ・ディンプス」というブティックで購入しています。わたしは、講演の参加者やブログの読者の方から「いつも綺麗な色のネクタイをされていますね」などと言われることが多いのですが、たいていはステファノ・リッチを身につけているときですね。これからも勝負ネクタイとしてのステファノ・リッチを締めて、各種の式典、会議、講演会、取材などに臨み、「天下布礼」に励みたいです!

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うまくいったかな?

 

2021年4月27日 一条真也

「Mank/マンク」

一条真也です。
26日、第93回アカデミー賞2021の受賞式が行われました。ブログ「ノマドランド」で紹介した映画が作品賞・主演女優賞・監督賞を、ブログ「ミナリ」で紹介した映画が助演女優賞ブログ「ソウルフル・ワールド」で紹介した映画が長編アニメ映画賞を受賞しました。そして、撮影賞と美術賞をNetflix作品の「Mank/マンク」が受賞。早速その夜、ネトフリで観ましたが、映画好きにはたまらない内容で、最高に面白かったです。主人公マンクの「人は映画館の暗闇の中で見たものを信じてしまう」というセリフが非常に印象的で、心に残りました。


ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「[Netflix作品]『市民ケーン』の脚本家、ハーマン・J・マンキウィッツを主人公にした人間ドラマ。黄金期のハリウッドを背景に、『マンク』と呼ばれた脚本家がアルコール依存症に苦しみながらも、後に名作となる脚本を仕上げる。『ソーシャル・ネットワーク』などのデヴィッド・フィンチャーが監督を手掛け、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』などのゲイリー・オールドマンが主人公を演じ、『マンマ・ミーア!』シリーズなどのアマンダ・セイフライドや、『あと1センチの恋』などのリリー・コリンズらが共演している」

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ヤフー映画の「あらすじ」は、「社会を鋭く風刺するのが持ち味の脚本家・マンク(ゲイリー・オールドマン)は、アルコール依存症に苦しみながらも新たな脚本と格闘していた。それはオーソン・ウェルズが監督と主演などを務める新作映画『市民ケーン』の脚本だった。しかし彼の筆は思うように進まず、マンクは苦悩する」となっています。


「Mank/マンク」は、映画史上に燦然と輝く不朽の名作「市民ケーン」(1941年)が作られた裏話的な作品です。「市民ケーン」は、オーソン・ウェルズの監督デビュー作で、世界映画史上のベストワンとして高く評価されています。ウェルズは監督のほかにプロデュース・主演・共同脚本も務めました。“バラのつぼみ”という謎の言葉を残して死んだ新聞王ケーンの生涯を、それを追う新聞記者を狂言回しに、彼が取材した関係者の証言を元に描き出していきます。主人公のケーンがウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしていたことから、ハーストによって上映妨害運動が展開され、第14回アカデミー賞では作品賞など9部門にノミネートされながら、脚本賞のみの受賞にとどまりました。


しかし、パン・フォーカス、長回し、ローアングルなどの多彩な映像表現などにより、「市民ケーン」の評価は年々高まりました。英国映画協会が10年ごとに選出するオールタイム・ベストテンでは5回連続で第1位に選ばれましたし、AFI選出の「アメリカ映画ベスト100」でも第1位にランキングされています。1989年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録されました。「市民ケーン」が公開された2年前の1939年にはブログ「風と共に去りぬ」で紹介した映画および「オズの魔法使」というMGMの二大名作が公開されていますが、この30年代後半から40年代初めがハリウッドの黄金時代であったように思います。その意味で、当時の映画人たちを活写した「Mank/マンク」は、ブログ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で紹介した映画とは別の時代のハリウッドを描いていると言えるでしょう。



ハリウッドで活躍した脚本家の実話なら、ブログ「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」で紹介した映画があります。「ローマの休日」「ジョニーは戦場へ行った」などの名作を手掛けた脚本家ダルトン・トランボの半生を描く伝記映画です。東西冷戦下のアメリカで起きた赤狩りにより映画界から追放されながらも偽名で執筆を続けたトランボを、テレビドラマ「ブレイキング・バッド」シリーズなどのブライアン・クランストンが演じました。共演は「運命の女」などのダイアン・レイン、「SOMEWHERE」などのエル・ファニング、オスカー女優ヘレン・ミレンら。監督を、「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズなどのジェイ・ローチが務めました。


トランボは1905年生まれで、アメリカで1940年代に起こった赤狩りに反対したいわゆるハリウッド・テンの1人ですが、「Mank/マンク」の主人公であるハーマン・J・マンキウィッツはもう少し上の世代で、1897年生まれです。1941年の「市民ケーン」の脚本家として有名な彼ですが、翌1942年の「打撃王」でもアカデミー脚色賞を受賞しています。ちなみに、弟のジョーゼフ・L・マンキーウィッツは映画監督で、アカデミー監督賞および脚色賞を受賞した「三人の妻への手紙」(1949年)、同じく両賞を受賞した「イヴの総て」(1950年)、「ジュリアス・シーザー」(1953年)、「クレオパトラ」(1963年)なども監督しています。


「Mank/マンク」では兄のハーマンが才能豊かで、弟のジョーゼフはそうでもない印象でしたが、実際は大違い。凄い兄弟ですね! ジョーゼフの代表作の1つである超大作「クレオパトラ」の製作費は4400万ドル(現貨換算で3億ドル以上)という空前の巨額にまで膨れ上がり、製作会社の20世紀フォックスの経営を危機的状況にまで陥れました。クレオパトラ役のエリザベス・テイラーは100万ドルという破格の報酬で契約するなど、とにかく桁外れの映画でした。わたしが生まれた1963年に公開されていますが、「クレオパトラ」こそはハリウッドの黄金時代の終わりを象徴する作品だったような気がします。同作品でアントニー役を演じ、クレオパトラ役のエリザベス・テイラーと結婚したリチャード・バートンは58歳で亡くなっていますが、わたしは来月10日に58歳になります。58歳といえば、「Mank/マンク」の監督であるデヴィッド・フィンチャーが現在58歳です。


コロラド州デンバー市出身のデヴィッド・フィンチャーは、SFXアニメーター、ミュージックビデオの監督を経て1992年に映画監督としてデビュー。父親は「ライフ」誌の記者で、「Mank/マンク」の脚本はもともとこの父親の遺稿だったそうです。長いこと映画化が塩漬けにされてきた脚本を息子のデヴィッド・フィンチャーが映画化したわけで、この映画はある意味で肉親への葬送儀礼的な意味もあるのかもしれません。「エイリアン3」(1992年)、「セブン」(1995年)、「ゲーム」(1997年)、「ファイト・クラブ」(1999年9、「パニック・ルーム」(2002年)、「ゾディアック」(2007年)、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(2008年)、「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)、「ドラゴン・タトゥーの女」(2011年)、そしてブログ「ゴーン・ガール」で紹介した2014年公開の映画など、フィンチャーの監督作品はすべて観ていますが、名作ばかりでハズレがありません。

 

その「ゴーン・ガール」以来6年ぶりとなるデヴィッド・フィンチャーの新作が「Mank/マンク」です。フィンチャー自身のフィルモグラフィ初のオンライン動画サービスを主発信とする長編であり、初のモノクロなど特色づくしとなっています。題材となった「市民ケーン」は、パン・フォーカス、長回し、ローアングルなどの多彩な映像表現が話題となりました。約80年後に誕生した「Mank/マンク」も負けていません。映画評論家の尾崎一男氏は、「なによりフィンチャーらしいのは、この映画の話法ならびに視覚への執拗なこだわりだ。それは過去と現在を行き来する非クロノジカルな構成や、名撮影監督グレッグ・トーランドの手法を模したディープフォーカスや主光源の射し込むライティングなど、『市民ケーン』に目配せしたアプローチに顕著だろう。ハリウッド黄金期のスタジオ集権体質をも冷笑する作品が、新時代のメディア覇王Netflixから配信されるというのもシャレが効き過ぎていて可笑しい」と、「映画.com」で述べます。


市民ケーン」は、第14回アカデミー賞では作品賞など9部門にノミネートされながら、脚本賞のみの受賞にとどまりました。「Mank/マンク」は、第93回アカデミー賞で作品、監督、主演男優、助演女優など同年度最多の計10部門でノミネートされ、撮影、美術の2部門で受賞。「市民ケーン」を題材とした「Mank/マンク」は、マンキウィッツと表題キャラのモデルとなったメディア王ウィリアム・R・ハーストとの接触や、彼を取り巻く30年~40年代のハリウッド黄金時代のスタジオ勢力を見事に描いています。


「Mank/マンク」には、政治的な描写も多かったです。特に、著書『ジャングル』(1906年)によって、アメリカ精肉産業での実態を告発し、食肉検査法の可決に至らしめた社会主義の作家アプトン・シンクレアが出馬したカリフォルニア州知事選挙の様子が延々と描かれます。マンクが支持したシンクレアは選挙に敗れますが、わたしは最近の選挙で自民党が大敗したことを思い出しました。

 

4月25日に開票された北海道、長野、広島での国政選挙3連敗に、政令指定都市名古屋市長選挙でも敗北。4連敗となったのです。やはり、どの選挙を見ても、日本人の生命よりも東京五輪開催を優先する政党に国民がNOを突き付けたことは明白です。このまま強行開催すれば、東京五輪後に行われると噂される衆院総選挙での自民党の歴史的大敗は避けられないと思うのは、わたしだけではありますまい。東京五輪についてのわたしの考えは、ブログ「コロナ国内死者1万人超す!」をお読み下さい。

 

2021年4月27日 一条真也

コロナ国内死者1万人超す!

一条真也です。
4都府県に3回目の緊急事態宣言が発出された翌日となる26日、新型コロナウイルスによる国内の死者が、ついに1万人を超えました。コロナで亡くなられたすべての方の御冥福をお祈りいたします。

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「ヤフーニュース」より 

 

新型コロナウイルス対応の改正特別措置法に基づく3度目の緊急事態宣言が発令された東京、京都、大阪、兵庫の4都府県は26日、期間中初めての平日を迎えました。政府は、テレワークやオンライン授業を企業や大学に要請していますが、大阪市内の朝の主要駅周辺では普段とあまり変わらない通勤ラッシュが見られたということです。

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「ヤフーニュース」より

 

それにしても、東京都の小池知事の口から出た禁酒と灯火統制のお願いはアナクロそのものであり、あきれてものが言えません。そこまでして、東京五輪を開催したいのでしょうか? 国民のほとんどは、五輪の開催に反対しています。また、落語家の立川志らく氏も言っていましたが、子どもたちが運動会もできずに悲しい思いをしているのに、どうして大人の運動会を無理して開催しなければならないのか? まったく理解に苦しみます。


「五輪は平和の祭典」などと馬鹿なことを言う輩もいますが、現在の利権・金権・政権に汚された「三密」ならぬ「三権」五輪など、平和の祭典でも何でもありません。それを言うなら、一件一件の結婚式の方がずっと平和の祭典です。わたしは、つねづね「結婚は最高の平和である」と訴えています。詳しくは、ブログ「最高の平和」をお読み下さい。4都府県での結婚披露宴はアルコール抜きで行わなければいけないというのに、何が五輪ですか!


さらには、インドやブラジルなど世界各地で感染力の強い変異株が生まれているのに、どうして世界中の人々を日本に集めるのか? 命より大事な運動会などありません! このままでは、東京五輪は「ウイルス五輪」「ウイルス博覧会」「ウイルス見本市」となる可能性があり、世界最強のスーパー・ハイブリッド「東京五輪株」が誕生するかもしれません。とにかく、わたしは東京五輪の強硬開催には絶対反対です!

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「ヤフーニュース」より
 

何よりも腹立たしいのは、東京五輪パラリンピック組織委員会日本看護協会に対し、大会の医療スタッフとして看護師500人の確保を依頼したことです。新型コロナウイルスの感染拡大で、国内の医療体制は厳しさを増しており、すでに大阪などでは医療崩壊を起こしています。このままでは、五輪のおかげで、一般の病人の治療ができず、多くの命が失われてしまいます。今回の東京五輪の強硬開催は、太平洋戦争史における最悪の作戦として知られる「インパール作戦」に例えて「TOKYOインパール2020」などと揶揄するネット民もいるようですが、まったく集団自殺行為そのもの!

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週刊文春」2021年4月29日号

 

マスコミもだらしない。朝日や毎日といったリベラル系の新聞はこぞって五輪反対の記事を書くべきなのに、自社が五輪のスポンサーになっているものだから批判できない体たらく。五輪報道を狙う民放TVが新聞社の紐付きなのも良くない。堂々と五輪批判ができるマスコミといえば「週刊文春」ぐらいではないですか! そう思って「週刊文春」の最新号を買ったところ、特集記事のタイトルは「菅『夏に絶対やる』五輪強行で血税1300億円消失」でありました。嗚呼、無情!(怒)

 

2021年4月26日 一条真也