山本リンダ最強説

一条真也です。
九州は記録的な大雪となっています。
小倉の自宅に命からがら帰ってきましたが、ブログ「どうにもとまらない!」ブログ「記録的大雪!」で紹介した小倉出身の女性歌手・山本リンダの動画が大きな反響を呼んでいるようです。



草刈正雄が小倉が生んだ芸能界のヒーローなら、山本リンダは小倉が生んだ芸能界のヒロインです。1951年3月4日、福岡県小倉市(現:北九州市)に生まれました。父親はアメリカ人、母親は日本人のハーフでした。父親はアメリカ軍の軍人でしたが、リンダが1歳の頃に朝鮮戦争で戦死。そのため女手一つで育てられました。リンダは母に楽をさせたいと思い、モデルのオーディションに応募。1962年に雑誌「装苑」のモデルオーディションを受検したことをきっかけに、人気モデルとして活動します。1966年、高校在学中の15歳の時に、シングル「こまっちゃうナ」で歌手デビュー。同曲が大ヒットとなり、国民的アイドルとして全国に知られるようになりました。翌年、「第18回NHK紅白歌合戦」で紅白初出場を果たします。当時は舌っ足らずな口調を売りにした、いわゆる「可愛い子ちゃん歌手」でした。

 

しかし、デビュー曲「こまっちゃうナ」が大ヒットした後はヒットに恵まれず、人気は低迷。1971年7月から同年12月まで「仮面ライダー」(毎日放送)に出演。1972年、キャニオンレコード移籍第2弾目のシングルレコードとして、当時の売れっ子作詞家・作曲家であった阿久悠・都倉俊一のコンビによる「どうにもとまらない」を発表。セクシーな大人の歌手にイメージチェンジして発表した同曲は大ヒットとなり、第14回日本レコード大賞作曲賞、第3回日本歌謡大賞放送音楽賞、有線放送大賞夜の有線大賞を受賞。また第23回NHK紅白歌合戦にも5年ぶりにカムバックしました。



1973年には「狙いうち」が大ヒット。この年、第10回ゴールデン・アロー賞グラフ賞、キャニオンレコードヒット賞を受賞。第24回NHK紅白歌合戦にも出場。セクシーな激しい歌と踊りで人気を獲得し、後のピンク・レディーに先駆けて「アクション歌謡」を全国に定着させました。「狙いうち」というタイトルが「ボールをヒットさせる」ことを想起されることから、東京六大学野球明治大学応援団は、作詞者の阿久悠明治大学OBであったこともあり、同曲を「チャンステーマ」として導入しました。それが甲子園にも伝播し、以後は高校野球の応援歌の定番となり、また中日ドラゴンズの応援(得点のチャンスを迎えた時)でも使われていました。



じつは、わたしは山本リンダこそは日本の芸能界が生んだ最強の女性アイドルではないかと考えているのです。彼女は現在の日本の芸能界を席巻しているハーフ・タレントの先駆け的存在ですが、とにかくスタイルが良い。顔もバービー人形みたいに可愛いし、リズム感があってダンスはキレキレだし、さらに加えて歌が抜群に上手い。こんな完璧なアイドルはなかなかいません。山本リンダ最強説を証明するのが、1974年の第25回紅白歌合戦の紅組ラインダンス(ロケットダンス)です。ザ・ピーナッツ梓みちよ、石田あゆみ、チェリッシュの松崎悦子、小柳ルミ子桜田淳子山口百恵といった日本芸能史を彩る錚々たるメンバーの中で山本リンダはラインダンスのセンターを務めているのですが、そのスタイルおよびルックスは群を抜いています。まるで、日本版ワンダーウーマンみたいです。これは非常に貴重な動画ですね。

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新型コロナウイルスですが、1都3県に緊急事態宣言が再出されるも、9日の東京都の新規感染者は2268人で3日連続で2000人を超え、埼玉、千葉、神奈川の3県をはじめ、岐阜、静岡、三重、滋賀、兵庫、長崎の9県で過去最多を更新。全国で新たに7775人という過去2番目の多さの感染が確認され、重症者は827人と最多を更新、国内のコロナ死者はついに4000人を超えました。感染は拡大し続けるし、雪はまったく降りやまないし、日本は大変な事態になっていますが、名曲「どうにもとまらない」を口ずさめば、少しは気が軽くなるかもしれません。沖縄の「なんくるないさー」にも似て、「どうにもとまらない」はシャレにならない深刻な現状をいったん客観視して、不安から逃れる呪文のような気がします。



2021年1月9日 一条真也

帰宅できました!

一条真也です。
九州は記録的な大雪です。ブログ「記録的大雪」にも書いたように、昨夜、最強寒波の影響で築90年のボロ家の水道管が凍結し、どうしても復旧できなかったため、松柏園ホテルに宿泊しました。



今日の午後から自宅の水道管の工事が行われ、無事に水道が復旧しました。本当に良かった! やはり水道はライフラインであることを再確認しました。水が出ないと、台所も風呂もトイレも使えないのです!

f:id:shins2m:20210109121908j:plain今朝の松柏園ホテルの庭園で 

 

このたび、松柏園ホテルの井口総支配人、中尾支配人、それにわが社の設備関係を扱うクリーン30の増野支配人には大変お世話になりました。3人とも、グッド・ホスピタリティというより、素晴らしい人間性をもって、家に帰れず不安な思いをしているわたしの心を癒してくれました。朝食べた松柏園のまかない料理も美味しかったし、今回は本当に良い経験になりました。正直、サンレーグループを見直しました。

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どうか、成人式だけは無事に! 

 

帰宅すると、また雪が降り始めました。明日は成人式の日です。松柏園は早朝の4時から多くのお客様がお越しになられます。どうか、今日中に雪が止みますように。一生に一度の「晴れの日」を、どうか、雪にも新型コロナウイルスにも邪魔してほしくありません!

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今日の自宅の庭のようす

f:id:shins2m:20210109165553j:plain夜になって、また雪が・・・・・・

 

2021年1月9日 一条真也

九州は記録的大雪!

一条真也です。
おはようございます。
昨夜は、最強寒波の影響で築90年のボロ家の水道管が凍結して復旧できなかっため、松柏園ホテルに宿泊しました。松柏園もほぼ満室でしたが、1室だけ空いていました。今朝、目を覚ますと、松柏園の前は一面の銀世界でした。

f:id:shins2m:20210109090309j:plain松柏園ホテルから見た雪景色

f:id:shins2m:20210109094416j:plain松柏園ホテルの新館と神殿

f:id:shins2m:20210109090409j:plain松柏園ホテルから見た雪景色

f:id:shins2m:20210109090433j:plain松柏園ホテルから見た雪景色 

 

日本列島は9日も強い冬型の気圧配置が続いています。JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)に伴う活発な雪雲が断続的にかかっている北陸や、平年に比べて10℃前後も低い強い寒気の影響を受けている九州で記録的な大雪になっている所があります。小倉もそうです。こんな大雪、これまで見たことがありません。



1都3県には緊急事態宣言が出ましたが、福岡県も感染者は多くなっています。8日、新たに369人の新型コロナウイルス感染が確認されました。3日連続で新規感染者が300人を超えました。福岡市が225人で、北九州市が55人でした。これを受けて、福岡県でも緊急事態宣言の要請が検討されています。


雪はまだ止まないし、新型コロナウイルスの感染も収まらないし、小倉が生んだスーパー歌姫・山本リンダの名曲「どうにもとまらない」が頭の中で流れています。そう、歌姫といえば、沖縄は安室奈美恵で、小倉は山本リンダに決まっているではないですか! 
ということで、今日はずっと松柏園にいます。早く水道が復旧しますように。各地でのわが社の冠婚葬祭が無事に行われますように。そして、なんとか成人式が行われる明日までには雪が止みますように。

 

2021年1月9日 一条真也

『鬼滅の刃』全23巻

一条真也です。
諸般の事情で、松柏園ホテルに泊まっています。
レスリング五輪金メダリストの吉田沙保里さんが新型コロナに感染しました。「霊長類最強女子」の吉田さんも、「史上最多優勝」の横綱白鵬も感染するのですから、もう誰が感染してもおかしくありません。
9日、125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第152回分が掲載されています。取り上げた本は、『鬼滅の刃』全23巻、吾峠呼世晴作(集英社)です。

f:id:shins2m:20210105183919j:plainサンデー新聞」2021年1月9日号

 

新しい年が訪れました。
昨年は新型コロナウィルスと『鬼滅の刃』の話題で持ちきりでした。『鬼滅の刃』は「週刊少年ジャンプ」で2016年11号から2020年24号まで連載され、単行本全23巻を刊行。アニメ化・映画化され大ヒットし、社会現象になりました。第1巻のカバー裏表紙には、「時は大正時代。炭を売る心優しき少年・炭治郎の日常は、家族を鬼に皆殺しにされたことで一変する。唯一生き残ったものの、鬼に変貌した妹・禰豆子を元に戻すため、また家族を殺した鬼を討つため、炭治郎と禰豆子は旅立つ!! 血風剣戟冒険譚、開幕!!」と書かれています。

 

実際に読んでみると、この物語のテーマは、わたしが研究・実践している「グリーフケア」ではないですか! 鬼というのは人を殺す存在であり、悲嘆(グリーフ)の源です。そもそも冒頭から、主人公の竈門炭治郎が家族を鬼に惨殺されるという巨大なグリーフから物語が始まります。また、大切な人を鬼によって亡き者にされる「愛する人を亡くした人」が次から次に登場します。ごく一部の鬼殺隊に入って鬼狩りをする人々は、自ら復讐という(負の)グリーフケアを行います。しかし、鬼狩りなどできない人々がほとんどであり、彼らに対して炭治郎は「失っても、失っても、生きていくしかない」と言います。これこそグリーフケアの言葉です。

 

炭治郎は、心根の優しい青年です。鬼狩りになったのも、鬼にされた妹の禰豆子を人間に戻す方法を鬼から聞き出すためであり、もともと「利他」の精神に溢れています。その優しさゆえに、炭治郎は鬼の犠牲者たちを埋葬し続けます。無教育ゆえに字も知らず、埋葬も知らない伊之助が「生き物の死骸なんか埋めて、なにが楽しいんだ?」と質問しますが、炭治郎は「供養」という行為の大切さを説くのでした。これは教育上にも良い漫画だと思いました。

 

さらに、炭治郎は人間だけでなく、自らが倒した鬼に対しても「成仏してください」と祈ります。まるで、「敵も味方も、死ねば等しく供養すべき」という怨親平等の思想のようです。『鬼滅の刃』には、「日本一慈しい鬼退治」とのキャッチコピーがついており、さまざまなケアの姿も見られます。以前は人間であった過去を持つ鬼もまた、哀しい存在なのです。わたしは、『鬼滅の刃』がここまでの大ヒット作となったのは、この物語には日本人の「こころ」に響く要素が満ちているからだと考えています。日本人の「こころ」の三本柱である神道・仏教・儒教のメッセージがすべて込められています。詳しくは、『「鬼滅の刃」に学ぶ』(現代書林)という著書を上梓しましたので、ご一読下されば幸いです。

 

 

なお、今回の「サンデー新聞」最新号(1・9号)の東版(小倉エリア)にはわが社の衣裳店である「アフロディーテ小倉店」、西版(八幡エリア)には同じく「アフロディーテ八幡店」の振袖フェア広告が掲載されていました。新型コロナウイルスに揺れる今年の新成人ではなく、「2022年に成人式のあなたへ」向けた広告です。よろしくお願いいたします!

f:id:shins2m:20210108104709j:plain「サンデー新聞」1・9号の東版(小倉エリア)

f:id:shins2m:20210108104805j:plain「サンデー新聞」1・9号の西版(八幡エリア)


2021年1月9日 一条真也

沖縄から大雪の北九州へ!

一条真也です。
8日、那覇空港から福岡空港へANA1208便で帰るはずでしたが、福岡空港周辺が積雪で凍結しているため、ANAが欠航になりました。ANAは昨日も那覇ー福岡便が欠航になっています。代わりにJAL(JTA54便)で帰りました。

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JAL機で福岡空港に到着! 

 

サンレー沖縄の総務課の横木課長によれば、ANAは欠航の決断が早く、JALはギリギリまで決断を延ばし、なるべく飛ぶ可能性を模索するそうです。その理由は、JALの機長には自衛隊パイロット出身者が多いからだとか。わたしはそれを聞いて、「お客様をなんとか目的地に届けようとするJALは立派だな。さすがは、稲盛和夫氏のもとで再生しただけのことはある!」と思いました。ANAも、すぐに欠航を決めるような機長ではなく、自衛隊出身者を採用すべきですね。ということでJTA54便に搭乗しましたが、これも条件付きのフライトで、福岡空港に降りられない場合は那覇空港に逆戻りするそうです。わたしは、「おいおい、それだけは勘弁してくれ!」と思いました。結果、無事に福岡空港に着陸して安心しました。

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福岡空港にて 

 

福岡空港には、サンレー本社の秘書課の鳥丸課長が迎えに来てくれました。いつもは社用車で来てくれるのですが、この日は車を置いてきていました。というのも、搭乗前に「お疲れ様でございます。本日のお迎えですが、こちらは雪が降り続いており、高速道路等が通止めになっております。また、一般道も滑りやすく危ない状況になっておりますので、新幹線を使ってお迎えに伺いたいと思います。よろしくお願いいたします」とのLINEが届いていました。わたしは沖縄へ行くため、コートもマフラーも鳥丸課長に預けたままだったのですが、福岡空港に着いたとたん寒くて震えあがりました。気温はマイナス1度でした。

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福岡空港から地下鉄で博多駅

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博多駅から新幹線で小倉駅

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JR小倉駅に到着しました

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小倉城前のようす

 

空港から地下鉄に乗って(福岡の地下鉄なんて10年以上乗っていません!)博多駅まで。博多駅からは新幹線のぞみに乗って、小倉まで無事に帰りました。小倉も雪が積もっていましたが、わが家に帰宅すると、庭が一面銀世界になっていて驚きました。これでは、猪も来ないでしょう。何はともあれ、無事に帰宅できて良かったです。と思ったら、自宅の水道管が凍結して、まったく水が出ないので、今夜は松柏園ホテルに宿泊することにしました。松柏園に泊まるのは31年前の結婚式の夜以来です。まあ、何事も陽にとらえて、松柏園の改善点などを見つけます! それにしても、今日は、ちかれたびー!

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わが家の庭が銀世界に! 

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松柏園ホテルの日本庭園で

 

2021年1月8日 一条真也

『幸福論 「しくじり」の哲学』

幸福論 「しくじり」の哲学

 

一条真也です。
吉本興業がお笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の中田敦彦(38)、藤森慎吾(37)とのマネジメント契約を昨年12月31日をもって終了しました。今年から2人は独立して活動します。
その中田敦彦の著書『幸福論』(徳間書店)を読みました。「『しくじり』の哲学」というサブタイトルがついています。著者は1982年生まれ。2003年、慶應義塾大学在学中に藤森慎吾とオリエンタルラジオを結成。04年にリズムネタ「武勇伝」でM-1グランプリ準決勝に進出して話題をさらい、ブレイク。またお笑い界屈指の知性派としてバラエティ番組のみならず、情報番組のコメンテーターとしても活躍。14年には音楽ユニット「RADIO FISH」を結成し、16年には楽曲「PERFECT HUMAN」が爆発的ヒット、NHK紅白歌合戦にも出場した。 マルチな活動はとどまるところをしらず、18年にはオンラインサロン「PROGRESS」を開設。さらに19年からはYouTubeチャンネル「中田敦彦のYouTube大学」の配信をスタートし、わずか1年あまりでチャンネル登録者数が250万人を突破。現在の登録者は、330万人以上。いま、最も注目されるトップ・ユーチューバーです。 

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本書の帯

 

本書の帯には著者の上半身の写真とともに、「成功≠幸福」「後悔しない生き方」「芸人として挫折して、YouTuberになってわかったこと。はじめて語る、家族のこと」と書かれています。帯の裏には、「オリエンタルラジオ中田敦彦」「栄光と挫折の目まぐるしい浮き沈みのなかで目にしたものとは。赤裸々な哲学的自叙伝」と書かれています。

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本書の帯の裏

 

カバー前そでには、「夢がかなおうが、かなわなかろうが、本当のところはどっちでもいいのである。それよりも、プロセスを味わい尽くした者の勝ち。ぼくはそう信じている」と書かれています。

 

本書の「目次」は、以下の構成になっています。
「はじめに」
 1 ひと口のジュース
 2 時間は嘘をつかない
 3 二番目に手を挙げる
 4 「知」は最高のエンターテインメント
 5 アイデアは準備された心に降り立つ
 6 「前言撤回」精神
 7 「光」の魔力
 8 「自分」とは現象の蓄積である
 9 ひとりでは生きられない
10 なぜ「武勇伝」はウケたのか
11 最強にして万能の武器は、言葉
12 ぼくは「駄菓子」でありたい
13 ドラクエはレベル0から15までが楽しい
14 インプットとアウトプット
15 良書には「知識」「思想」「感情」
           のすべてがある

16 絶対勝者なんて存在しない
17 座右の書
18 普通ということ
「おわりに」



4「『知』は最高のエンターテインメント」では、著者がYouTubeをはじめたころ、講談師の神田松之丞(現・神田伯山)が広く人気を博すようになりました。著者は、「落語から学ぶ」として、「歴史を切り分けて、いわゆる庶民の暮らしのおもしろ話をするのが落語家で、軍記物などをやるのが講談師だということのよう。ということはぼくも、文学や偉人伝などを取り上げるときは落語っぽく、歴史を扱うときは講談っぽく演じたらいいのではないかと考えて、良きお手本としている」と述べています。


 

 

また、ユーチューバーというと、やっていることがすごく新しそうですが、著者のようなタイプの場合、内容自体はトラディショナルなものだとして、「落語や講談、もっと遡れば琵琶を弾きながら物語を伝えた琵琶法師とか、『古事記』を丸ごと口承していた稗田阿礼みたいな存在と、やっていることは同じかもしれない。そう、言葉だけを武器にして世界のことを広く伝えることに着目すれば、教育係ユーチューバーの元祖は稗田阿礼なのかもしれない。古代から続く伝統芸能を受け継ぐつもりで、ぼくも日々、言葉を紡いでいる」と述べています。



5「アイデアは準備された心に降り立つ」では、「読書のハードルを取っ払う」として、著者は「本を読み、内容を理解し、それを噛み砕いて伝える。そういう行為を日々反復していて強く感じるのは、本というメディアの情報密度の濃さだ。それはもうカルピスの原液みたいな状態としてそこにある。ほかのどんなメディアよりも的確で確実な情報が凝縮して詰まっている。物事の根幹になるリソースは、ここから求める以外にないと感じさせるほど、それは確固たるものだ」と述べています。



ただし、あまりに凝縮度が高いゆえ、本には柔らかさがない。食べやすくない。結局、受け取る側の消化力が問われる事態となってしまうとして、著者は「それなりの読解力や語彙がなければ、本からしっかり情報を取り出すことができないのだ。本を活用するには、多少の素養が必要である。日本語はまた、話し言葉と書き言葉でかなり違いがあるので、書き言葉を正確に理解しようとすると細かいルールまで押さえる必要が出てくる」と述べます。

 

読書のハードルをかぎりなく下げる、それが『YouTube大学』の目指すところであるとして、著者は「果物でいえば皮をむいて一口大に切ってひとつずつ楊枝にさして、あとは口に運べばおいしくいただける状態にまで、それぞれの本を加工してあげる。正直、それをするにはかなり手間はかかる。本を読み込み、要点をまとめ、わかりやすく伝わるようなアプローチのしかたを考える。情報を展開する順序や、語句のわかりやすさにも気をつける。とにかく入念に準備をこなすしか手はない。ぼくは日々、その作業にひたむきに取り組み続けているつもりだ」と述べるのでした。



11「最強にして万能の武器は、言葉」では、「世界は言葉でできている」として、著者は「ひとは言葉によって動かされる面が多分にある。最初は買うつもりもなくぼくの話だけ聞いていたひとが、話が終わるころにはTシャツを手にしているということは、ひとの言葉によってひとの行動が変化したということ。ひとは言葉によって意思を変えられてしまったり、楽しくなったり悲しくなったり、感情がどんどん突き動かされる。ひとをこんなに自在に操れるものを、ぼくは言葉以外に知らない」と述べています。



たとえば宗教というものは強大な力を持ちますが、基本的には言葉で神や天国や地獄の存在を人に知らしめているといいます。真理はこうだと、言葉によって信じさせるのだ、と。著者は、「言葉が世界を設定し、ひとを動かしているのは事実だ。だからこそぼくは言葉を武器にしたいと思ったし、その武器をもっともっと磨きたいと日々考え続けている」と述べます。



15「良書には『知識』『思想』『感情』のすべてがある」では、「『当たり』本のインパクト」として、著者は「おもしろい本の共通点も、なんとなく見えてきた気がする。それはまず、『ああ、そうなんだ』と知らない知識を教えてくれるところがあること。そして『なるほど』と新しい考え方を提示して驚かせてくれる面があること。さらには、『わかるなあ・・・・・・』と思わず共感してしまうようなエモーショナルな部分がしっかり描かれていること。それらの要素がどれも満たされている本は、きっとおもしろいとわかってきた」と述べています。



続けて、知識、思想、感情という3つを一挙にインプットできるというのは、考えてみればすごいことだと指摘し、著者は「いい本に当たるというのは、これ以上なくお得な体験だ。『当たり』の本から充実したインプットができると、自分のアウトプットにも間違いなくいい効果が期待できる。というのも、ぼくらはまさに『当たりの本』がもたらしてくれるようなアウトプットがしたいと思っているからだ」と述べます。



さらに、著者は「知識、思想、感情。この3つを綯い交ぜにして一挙に伝えられれば、相手に『そうなんだ』『なるほど』『わかる、わかるよ!』という体験をすべて届けることができる。それが実現できたら、最高のアウトプットといえるではないか。本を大量に読むことによってぼくは、最良のアウトプットとはどういうものかを実地に学ぶことができたのである」と述べるのでした。

 

「『古事記』の底知れなさ」では、『YouTube大学』で紹介した本の中で著者自身がとくに深い感銘を受けたものを挙げるとすれば、まずは『古事記』であるとして、著者は「『古事記』とはつまり、日本の神話集だ。これがもう単純にエピソードとしておもしろい。話の内容や展開は、現代を生きる私たちからすれば、かなりむちゃくちゃである。え、ここでそんなことする? そっちに話が展開するの? といった驚きの連続。大昔の話ゆえ、常識がかけ離れているのだ。物語として読むのなら、それくらい荒唐無稽なほうがおもしろい。現代には、理路整然とした話なら溢れ返っている。意味はよく通じるが、心になかなか残らない話はもうたくさん。せっかく古典を読むのだ、ここは破綻だらけの話の妙味を楽しみたい」と述べています。



アマテラス、スサノオツクヨミの三神は、ギリシア神話でいうゼウス、ポセイドン、ハデスという神々とキャラクターが酷似していると指摘する著者は、「アマテラスとゼウスは最高神で、その身内であるところのスサノオとポセイドンはともに海の神。ツクヨミは月と闇の神でハデスは死と冥界の神。太陽、海、月の三すくみ状態が日本とギリシアの神話でまったく同じというのは、ひとの考えることは地域や時代を超えて根本は変わらないことを示しているだろうか」と述べます。



続けて、「ただし日本の神話のほうでは、アマテラスが女性である。最高神が女性という特徴はどこから来たのかなどと考えていくと、お話としても歴史としてもたいへん興味深く感じられてくる。ストーリーにのせてなんらかの物事を伝え、受け継いでいくということの原点が、古典にはある。『古事記』に宿る力を借りながら、ぼくもいっそういい動画をつくっていけたらと意を新たにした。古典から学ぶべきことは本当に多い」と述べるのでした。



「『源氏物語』の現代性」では、『源氏物語』について、著者は「あの作品はもともと、紫式部が周囲のひとを楽しませるために書いていたもので、いわばラブコメである。それが評判となり、ひとの知るところとなって、姫君のために書き続けてほしいというヘッドハンティングの話が舞い込んだ。それがさらに書き継がれていったものだという。いわば平安時代の『見出された連載小説』。現代でいえばさしずめ、SNSで漫画をアップしていたら注目され、商業誌に引っ張られてそのまま大ヒット連作にまでなったようなものだ」と述べています。



また、著者は『源氏物語』について、「ラブだけじゃなくて、リアルな出世バトルの要素もたっぷり盛り込んであるから、半沢直樹のような雰囲気もあり、男ウケもいいと思う。ただし、クライマックスのバトルが『絵合わせ』で行われるところなど、さすが雅な平安貴族らしくて時代を感じさせる。当時の知識や情報、人々の考え方、そして登場人物たちの抱いた感情を、手に取るようにして味わえる。そういう要素をすべて兼ね備えていれば、千年も読み継がれるものにもなるのだと思えば、ぼくらがコンテンツをつくるうえでも『源氏物語』は大いに指針となり目標となってくれるものなのである」と述べるのでした。



16「絶対勝者なんて存在しない」では、そもそも、この世のどこにも「絶対勝者」みたいな存在などいないとして、著者は「羽振りがよさそうなひとでも、けっこう実はひどい目に遭っていたり、苦しんだりしているもの。それを知ることで、ほっと息をつけるひとも多いかもしれない。『こうすればいいよ』『これやってみたら?』と言われても、いやもう立ち上がれないんだよ・・・・・・という状況のひとだっているだろう。そういうひとには、『いや、そのままでいいんじゃない?』と言いたい。基本的には生きていさえすればだいじょうぶ、と伝えたい」と述べています。



18「普通ということ」では、自分の思うように人生が運ぶ人など、きっと一人もいないとして、著者は「ならば、自分がどうにかできる、手の届く範囲のことに対しては、できるだけのことをしたほうがいいじゃないか。自分にはどうしようもないことが多いのならば、それは受け入れたうえで、目の前のことに夢中になるのがいい。人生をひとつの祭りとみなして、それを楽しみ尽くす。自分にできることをすべてやって、家族を愛し、仲間と笑い、社会にお返しする」と述べています。



そして、「おわりに」では、著者は「光を何度も浴びたのに、本当に照らされたい部分は闇に包まれていた。もう自分を縛るものはないのに、自由である気がしなかった。いつもなにかに追われているような気がしていた。ずっと疲れていた。うすうす感づいていたことだった。この獣道の先に幸福はない。幸福なんて、そんなたいそうなもんじゃない。道の果てに燦然と輝いているもんじゃない。そこらへんに転がっているありふれたものだ。ありふれているからこそ、それは存在を主張しない。駆け抜ける者の目には映らない」と述べるのでした。



最近の子どもに「将来、何になりたいか?」と聞くと、最も人気があるのがユーチューバーだというのは笑い話でもなんでもなく事実です。そのユーチューバーの中でも頂点をきわめた著者が、「成功」と「幸福」は同じではないと喝破する姿勢には説得力があり、非常に好感が持てました。『古事記』や『源氏物語』といった古典中の古典についての見方もユニークですし、何よりも著者の座右の書が渋沢栄一の『論語と算盤』とサイモン・シンの『フェルマーの最終定理』だというのは、趣味が良すぎて嬉しくなりました。つねに学び続ける著者は、これからもさらなる高みを目指して進んでいくことでしょう。

 

幸福論 「しくじり」の哲学

幸福論 「しくじり」の哲学

 

 

2021年1月8日 一条真也

緊急事態宣言再出!

一条真也です。沖縄に来ています。
7日、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて対策本部の会合を開き、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の再発令を決定しました。東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏1都3県が対象で、期間は8日から2月7日までの1カ月間。

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NHKニュースより

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この日、1都3県の新規感染者数はすべて過去最多となりましたが、緊急事態宣言を発出するタイミングとしてはベストでした。だって、このタイミングなら「緊急事態宣言など出すべきではない」とか「まだ出すのは早すぎる」といった馬鹿なことを言い出す輩はいないでしょうから。日本国民納得の上(それでも、コロナ無視派は存在しますが)で宣言が行われたことになります。経済活動を大幅に制限した前回の宣言とは異なり、感染リスクが高いとされる飲食店を中心に午後8時までの営業時間短縮を要請するなど対象を限定しています。イベント関係は、人数の上限を1000人以下または5000人以下、かつ収容率を50%以内に引き下げます。収容率の50%を要請するのは、劇場、映画館、博物館、美術館です。わたし的には、映画館が入れられたことは残念でなりません。

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当然ながら、わが冠婚葬祭業にも影響はあります。ホテルや旅館の宴会場、結婚式場などは収容率50%以内で飲食を伴う使用については中止を要請する、他にもさまざまな怪情報が流れましたが、結局は20時まででしたら披露宴は開催できることになりました。ひと安心です。ブログ「沖縄祝賀式典」で紹介したセレモニーでも話したように、観光や外食と違って、結婚式は社会の維持のために絶対に必要です。冠婚業はけっして単なるサービス産業ではありません。日本という国を継続させていくエンジンのような存在です。

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テレビ朝日報道ステーション」より

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「GoToウエディング」は残念ながら実現しませんでしたが、政府にはぜひ冠婚葬祭業が必要不可欠な産業であることを理解していただきたいです。緊急事態宣言の間は東京出張もできませんが、個人的には読書に時間を割きたいと思います。あと、政府と東京都には一刻も早く、諸悪の根源である「東京五輪」の中止を決定していただきたい。コロナ感染拡大の収束の見通しがまったく立たない中で、当然ながら7月に迫る東京五輪開催への危機感も高まってきています。



しかし、この日、都内で取材に応じた東京五輪パラリンピック組織委員会森喜朗会長は、「不安はまったくない。(五輪を)やることは決まっている。準備はほとんど終わっている。どうして7月のことを今議論するのか」と話し、開催への自信を示しました。この自信はどこから来るのでしょうか。根拠なきポジティブ・シンキングアメリカの民主主義を殺したドナルド・トランプと何ら変わりません。違約金などを巡ってIOCとの駆け引きがあるのはわかりますが、今年の夏に五輪が開催できないのはすでに明白であり、このままでは練習を続けているアスリートが気の毒でなりません。菅首相は、どうかご英断を!

 

2021年1月7日 一条真也